鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 061 松原倫岳 (鼻パット職人)

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メガネの掛け心地を大きく左右する鼻パット。鼻の形に合わないとずれ落ちたり疲れを感じてしまうことがあります。そんな鼻パット製造を専門としている企業が松原蝶製作有限会社です。今回は社長の松原倫岳氏に掛け心地を追求する鼻パットづくりについてお話を伺いました。

掛け心地への責任感

--御社のお仕事について教えてください。
2.jpg掛け心地に大きく左右する鼻パット プラスチックフレーム枠の鼻パットの製造と、フレームの元となる板状の樹脂に熱を加えてプレスすることで立体的な形状にするカーブ付けという工程を担当しています。弊社の大きな特徴は鼻パットの製造をメインでしていることです。メガネ業界でプラスチックフレーム枠の鼻パットをシートから専門に作っている会社はほぼ弊社だけですね。

--会社設立当時から鼻パットを作られているんですか?
ちょうど50年前、メガネメーカーに勤めていた父親が25歳のときに独立し、プラスチックフレーム枠の鼻パット専門の下請けとしてスタートしました。当時は弊社以外にも鼻パットを専門で作っていた会社が数社あったと聞いています。

--鼻パットの種類について教えてください。
人それぞれ鼻の形が違うので、大きいものから小さいものまで様々な形状を揃えています。弊社で扱っているもので50種類は優に超えていますね。パットの色は透明が多いですが、要望によってはフレームの色に合わせたパットも作ります。10年ぐらい前からメガネの販売店からの要望でオリジナルの鼻パットを作ることも増えてきました。

--小売店さんからの要望ということは、既に鼻パットが付いているメガネに別の鼻パットを付け直すということですか?
7.jpg金型で鼻パットの形にくり抜きます。 うです。フレームと一体化して見えるプラ枠の鼻パットも付け替えができるんですよ。既存の鼻パットを切り落とし断面を平に磨き、新たな鼻パットを溶剤で取り付けます。これで日本人にも掛けやすいメガネに生まれ変わります。なぜそんな面倒くさいことをするかと言うと、海外のメガネを購入された場合、どうしても日本人の鼻の形に合わず掛け心地が悪いことがあるんですよね。

8.jpgくり抜いた鼻パットを立体的に成型します。 小売店さんはそういうユーザーの要望をキャッチし、それなら日本人の鼻に合う鼻パットに付け替えようということで弊社に相談がありました。逆に海外に輸出する際は外国人の鼻に合うように小さな鼻パットを付けます。最近はIOFT(アジア最大級のメガネの国際総合展)に弊社の鼻パットを展示する機会に恵まれたこともあり、オリジナルの鼻パットを作ってほしいという問い合わせがさらに増えました。





--確かに鼻パットが合わないとずれ落ちたり、違和感のある掛け心地になりますよね。
9.jpg右用・左用にカットして仕上げます。パットは地味なパーツですが、掛け心地を大きく左右しますから責任を持って作らないといけないと常に思っています。例えば最近ですと女性の付けまつ毛が流行っていますよね。メガネを掛けるとレンズに当たってしまうので、鼻パットの高さを変えて当たらなくするような鼻パットも作りました。


-- では鼻パットの製造過程を教えてください。
10.jpg右用・左用と仕分けして出荷します。 まずはどういう形を作るかをメーカーさんや販売店さんと打ち合わせをします。用意されたラフスケッチを基に、実際の掛け心地を考えながら、設置面の大きさや傾斜の角度について「こうしたほうがいいよ」とアドバイスをしていきます。そうしたやり取りをしながら図面を完成させ、金型を製作します。その後、金型を使って鼻パット専用の少し柔らかいアセテート生地を鼻パットの形にくり抜いていきます。くり抜くだけでは平面のままなので、熱を加えて立体的に成型していきます。それを右用左用にカットし、仕分けをして納品するのが大きな流れです。基本的にはアナログなんですよ。本当はデジタル化してもいいかもしれないですが、現時点ではアナログで一つ一つ手作業で作るほうが効率はいいですね。

-- --鼻パットの製造で難しいポイントはありますか?
鼻パットは小さい部品ですから無理なカーブはつけることができないなど技術的な制約があります。ですからデザインに対して加工が可能か、掛け心地はどうかを頭の中で立体化して考え、最大公約数を考えながら製作しています。またお客さんの要望に正確に応えるために、金型屋さんとの綿密な打ち合わせが重要です。

-- 製造過程でこだわっていることはありますか?
あくまでも鼻パットは目立ってはいけないという思いがあります。鼻パットは脇役なんですよ。強いて言うならばお客さんの要望に最大限応えることがこだわりかもしれませんね。
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絆の家族経営

-- メガネ業界に入った経緯を教えてください。
私は2代目で高校を卒業して入社しました。当時はあまり強い意志もなく、家業なのでという感覚でメガネ業界に入りましたが、修行をしていく中で鼻パットの需要の高さとお客さんからの声を直に聞くうちに、いつしか鼻パット製造に誇りを持つようになりましたね。

-- 2代目として常に心掛けていることはありますか?
IMG_2556.jpg松原蝶製作では鼻パットの他に「カーブ付け」もしています。
調子に乗らないことですね。自分が今こうして生きていけるのは親がこつこつと築いてくれた環境があったからだと思っています。だから何があっても勘違いしてはいけないと思っています。そして最近考えることは親がそうやって頑張ってきた家業をいかに次の世代に引き継ぐかですね。息子がいずれは継いでもらえたらいいなと思っています。そのためにはいい状態で世代交代をしたいと思います。

-- 偉大なご両親なんですね。
12.jpg松原 倫岳氏
こつこつと地道に働いてきた両親の背中を見て育ったので尊敬してます。心の中では両親を超えたいという気持ちはあるんですが、なかなか難しいです(笑)。一生超えられないと思うほど両親は偉大ですね。そして一緒に働いている姉にも感謝し、信頼しています。姉はいつも弟である私を立ててくれますし、私が動きやすいようにしてくれています。ホント家族には恵まれたなぁ。まあこんなこと本人たちには恥ずかしくて言えないですけどね(笑)。

-- いい環境でお仕事なさっているのが伝わってきます。
11.jpg完成した鼻パット
もう一つ感謝すべきなのは、同級生が同じメガネ業界にいることですね。鯖江はメガネの産地ですから業界内には知り合いだらけ。ちょうど世代交代の時期で僕らの年代が社長として頑張っている。彼らがいるから自分も負けたくないし、手を抜くことなんて絶対できない。切磋琢磨できる環境があるのはありがたいことですね。

-- これからの展望は?
存在感のない鼻パットづくりですね。究極で言うと鼻パットがないのが一番なんですよ。だけど物理的には厳しいわけなので、それならばいかに存在感をなくして、掛けていても疲れないパットを作れるかが大きな課題です。20年30年かけてでも追求していきたいです。

--今日はどうもありがとうございました。

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松原倫岳 Michitake MATSUBARA
鼻パット職人
生年月日: 1968年8月17日

社名:松原蝶製作有限会社
創業:1962年
従業員数:8人
住所:福井県鯖江市北野町1丁目1-20
TEL :0778-51-2752