メガネは繊細である。運動するときのメガネの滑り、顔にフィットしないときの微妙な掛け心地の悪さ、床に置く時に傷つくのが嫌であったり・・・。そんな悩みをまさに解決する技術をご存知だろうか!?自社オリジナルの数々の技術を生み出し続ける、滑り止め職人コスモ工芸の社長黒田正知(以下 黒 )に、お話を伺った。
樹脂加工と手作業ならではの可能性
--御社でされているお仕事について、教えてください。
黒)表面処理をしています。例えば、メガネフレームに部分的に、または、全体にカラーリングを施しています。業界では七宝と言う作業です。受注では、インターネットからお問合せいただいたカラーリングについて、そのカラーリングが可能かどうか(全てのフレームにカラーリングできるわけではないので)の確認作業を行っています。後、作業を行っています。今日は5〜6件のお問合せがありました。時には、予算、構造上の問題があっても、できる限りやってほしいとの依頼もあり、可能な限りお客様のご要望にお応えできるよう努力しています。そして、当社で最も売りとしているシリコンの加工も行っています。ゴムならどんなものでもやります!!滑り止めのためのゴムですね。これはうちのオリジナルです。
--滑り止め加工は、すべて手作業ですか?
黒)そうですね。機械では、できないんですね。機械に流すだけの数がないんです。滑り止め付き歯ブラシなんかは何万と数があるため、機械作業でも効率がよいけれど、メガネではなかなかできないですね。そこが、メガネの面白いところでもあるんですがね。また、一つ一つ手作業なので、「ここの部分だけゴムしてほしい」という注文にも対応できます。手作業ならではですよね。だから世界で一つのオリジナルのメガネができあがりますね。
--滑り止め加工は、個人のお客様ですか?
黒)今までは、全部メーカー様です。かぶれ防止にもなりますので、かぶれ防止の企画でも使っていただきました。また、床に置いた時に触れる面の傷防止にもなるんですよ!今後は、HP等により個人のお客様に広くアピールし、この良さを広げていけたらなと考えています。
--他にどんな目玉技術がありますか?
黒)ひとつは立体加工です。プラスチックフレームで、テンプルに花や龍といった模様を彫刻のように加工する技術です。レーザー堀のような単調な造形ではなく、複雑な造形をテンプルに施す技術です。ふたつめは、積層という技術です。これは、2枚のプラスチック板を張り合わせてできており、一つの基材の表面にお客様の希望の装飾模様を印刷し、もうひとつの基材を張り合わせることで、中面の模様を劣化することなく美しい光沢を保持できる技術で、しかもフレーム1枚からでも出来るということです。重なっているのできれいな模様なんですよね。中に何か入れることもできます。これは世に出ていないデザインですね。例えば、お客様が自分のメガネの柄(チェック)を「ブルーにしたい」、「ゴールドにしたい」といった場合、当社では出来るということです!当社の技術ならではです。この技術を使い、オリジナルフレームも販売しています。その他にも、フルオーダーフレームも取り扱っています。
--今回は「滑り止め職人」ということで伺いましたが、ものすごいバリエーションの技術とサービスが提供されているのですね。驚きました。
夢をもつということ。
--このような技術が生まれたきっかけを教えてください。
黒)中国が進出してきた、そんな時に、他にはない技術が必要だと思ったんです。アイディアが生まれても、完成までに、色んな方々のご協力をいただきました。途中で何度やめようと思ったか分かりません。テスト、テストの毎日でした。そして、少しずつ完成度が上がっていったんです。現在は、満足のいく積層が出来る様になりました。HPに載せる技術にも、他でやっている技術はやめようって思ったんです。だからオリジナルをお客様に提供したい!って夢ですね。
--一つの技術で世の中に出るまで時間はどれくらいかかりますか?
黒)4年ですね。色んなアイデアを同時に研究して開発していくこともあります。
--開発している最中で大変だったことや、嬉しかったことは?
黒)周りから少しづつ認められてきたことかな。失敗しても、仕方ないと寛大な心で見守ってきていただけた方達がおられたからここまでこれましたね。失敗して始めてできますから。失敗しても、いいものを作って、お客様の注文の一つ一つを確実にやっていきたいですね。やはり努力の積み重ねです。やり続けなければつぶれますから・・・。それがつらいことですかね(笑)。
--最後に、社長にとってメガネとは?
黒)喜びでもあり、苦しみでもあり、希望でもあり・・・人生そのものですね。