今回、ゲンバシュギでは、モダン成形を専門に扱い、最近ではメガネ以外の製品も開発中の田中眼鏡パーツの田中義一氏(以下 義)と息子さんで社長でいらっしゃる博治氏(以下 博)にお話を伺った。親子だからこそ言える、それぞれの視点での”仕事”について伺った。
モダン職人の展望。
温めたセルをプレスして成形する。プレス機のある室内はサウナ状態!「博)それでもなかなか痩せんのです(笑)。」
--まず、お仕事の内容を教えてください。
義)メガネのモダン(耳当て部分)を作っています。
博)実際に見てもらった方が早いですね。こちらへどうぞ。(博治氏にモダンが出来るまでの工程を見せて頂きました。)
--プラスチック(セル)の板が熱で成形されていくんですね。見ていてとても面白かったです。
義)モダンは歴史がまだ浅くて、誕生してから25年ほどしか経っていないんです。それまでは「眉」を作っていました。
--「眉」とは?
義)最近ではあまり見なくなりましたが、フレームの上辺部分に取り付けられるパーツです。一昔前まではなくてはならないパーツでした。当時でも鯖江で眉の成形をしているのは、5〜6軒で、難しい技術でしたね。
眉のあるフレーム。
博)オヤジは自分でいろいろ試行錯誤して、その眉をつくる独自の方法を考えたんですよ。他の職人さんではできないと思います。最近はまたこの眉があるメガネがレトロぽくていいということで、注文がぼちぼちあります。
--最近ではメガネ以外の製品も開発中とお聞きしたのですが?
義)これです。モダンと同じセルの板をブレスレットに加工しています。これから力を入れていきたいことの一つですね。
--カラフルでかわいいですね。
キャンディーのような色とりどりのブレスレット。無地のほかに柄物もアリ。
義)もともと持っていたブレスレットからヒントを得て作っています。セルは色がきれいで削り方によっては色のグラデーションになります。今後は模様を入れたり、石を埋め込んだりしてアレンジしていきたいですね。付け外しが楽だし、丈夫で形状も変わらないので、このままお風呂に入っても大丈夫ですよ。今は岡山にあるメガネの小売店で販売を予定しています。
--他にはどんなものを計画中ですか?
義)ブローチかな。以前、河和田の漆器と組み合わせて、地元小学校の名札を作ったことがあるので、ブローチにアレンジできればと思っています。
親子二人三脚のモダン。
--失礼ですが、社長はおいくつですか?
義)今年で80歳かな?この仕事は55年やってます。
--大ベテランですね…!ちなみに博治さんは?
博)この仕事は30年くらいやってます。
--30年でもかなりのキャリアですよね!やはりこのお仕事が手につくまでは時間がかかりますか?
博)そうですね。慣れるまでに2〜3年、安定した仕事ができるまでには10年はかかりますね。
--今は親子3代でお仕事をなさっていますが、親子ケンカはありますか?
博)しょっちゅうです(笑)。でも、それは良いものを作りたいからこそ出来るケンカなので。
--社長から見た息子さんの存在というのは?
義)今では仕事のほとんどを任せているので、頼もしいです。私はこういうの(ブレスレット)を作っているばっかりで…(笑)。
--では、息子さんから見て社長であるお父さんの存在というのは?
博)すごい人だと思います。創業者ということもそうだし、「眉」の作り方を考えた人ですから。尊敬しています。まだまだかなわないですね。