鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

メガネを選ぶ際、「この形で、こんな色があったら…」「もっと他には無いようなデザインが欲しい!」そう思ったことはありませんか?今回のゲンバシュギは、そんなわがままを叶えてくれる職人さんを紹介します。樹脂によるメガネの七宝加工を取り扱う、株式会社紀宝の社長・加藤憲治氏にそのお仕事についてインタビューさせて頂きました。すると、社長から数々の為になるお話が伺えました。社長、目の付け所が違います!

こだわればこだわるほど大切にしたくなる。



--ホームページを拝見したのですが、「オーダーメイド装飾」というのは?

こういうものですね(写真参照)。既にあるメガネ枠に、好きな色や模様を付けられます。一般の方も、1本から承っています。(※樹脂加工は眼鏡1枚から可。加工料 1時間 3000円)

--キレイですね!これは、どうやってこの様な模様や色を付けているのですか?

エポキシ樹脂というものを使って注射器で塗装しています。とても手間のかかる仕事なので、他社はなかなかやりたがらないんです。

--もしかして、これ全部手作業ですか?

はい。全て手作業ですよ。触ってみると分かるんですが、すこし凸凹があるでしょう。印刷だと、こうはならないんです。

--確かに!肉眼では分からないんですが、触ると僅かに凸凹していますね。どうして、こんなに手間の掛かることをわざわざするのでしょうか?

一つと同じものができないからです。アナログというか、手の跡が残ったものの方が、他とはちょっと違って、自然と目がいくでしょ?世界に一つのものですから。

--なるほど。機械じゃないということは、色やデザインも合わせると何万通りもできますね!ところで、デザインは社長自らお考えになるのですか?

そうですね。リクエストがなければ、お客様の特徴を色々お聞きして、そのイメージでデザインします。シンプルなものが好きだとか、何色が好きだとか。

--社長にお任せするお客様も多いんですね。

お客様をパッとみて、どんなものが似合うかをいろいろと提案するんです。「これは似合う、こっちは似合わない」とはっきり提案するのが大切だと思います。ただ売るだけでは、お客様はすぐに離れてしまいます。それは、小売店にも全く同じことが言えると思いますね。

--色やデザインのこだわりはどういったところにありますか?

メガネは置物ではなく、絶えず人が掛けて動いているものですよね。いろいろな方向から見られるものなので、外側のカラーリングだけでなく、裏側の色とのバランスが大切ですね。

--社長が装飾を施したメガネは、どれもなかなか他のお店では見つけられないデザインばかりですよね。

メガネって要は、レンズが落ちない為の道具なんですね。目が悪い人にとって、レンズが第一ですから。しかも、メガネがどんな色をしていてもどんな模様でも、メガネを掛けている当の本人はわからないですよね。なのに、人はデザインでメガネを選ぼうとする。それは、せっかく掛けるなら、そこに「個性」を出したいからですよね。

--なるほど。

だから、作る側にも「こだわり」だけじゃなくて、「遊び心」が大事だと思います。作り手が、自分たちの商品に「こだわり」をもって作っているのは当然ですよね。それがお客さんにも伝わるかというと話は別。お客さんも、自分のメガネにこだわりを持ちたくなるような「遊び心」のあるメガネを作っていかないといけませんね。

 

 

もっと個性を!

--どうして「オーダーメイド装飾」を始めようと思ったのでしょうか?



注射器で塗料を装飾する。手作業とは思えない仕上がりはさすが職人!

メガネの生産が好調だった時代は、とにかく下請けも作れば売れた時代でした。それが良いっていう見方もあるけど、私はすごく違和感を感じていました。ブランド会社の下請けばかりに忙しくて、どの会社も自社ブランドというところに気が回っていなかったんですね。そこで、鯖江にしかできない技術でオリジナルのものを、ということで、オーダーメイドの装飾を提案しました。

--では、このお仕事を始めたきっかけというのは?

もともとは、車部品の流通の仕事などをしていて、それからメガネ業界に入りました。だから、ものが売れる仕組みとか、流通に関しては、とても勉強を積みましたね。七宝という仕事を選んだのは、父が漆器をしていたので、子どもの頃から「色」に対する感覚が鋭かったからだと思います。

--ずばり、他社には負けないこだわりは?

最初に少し話しましたが、うちは手書き加工を得意としています。時間がかかり単価的にも合わないのですが、出来上がったものは世界にたった一つのもので、お客様に喜んでもらえます。七宝の密着の良さにも自信があります。なかなか剥がれませんよ。取引先が厳しいところだったのもあって、ずいぶん研究・開発をしました。密着の良い塗料を使うようにしているのです。その塗料は少し装飾しにくくて技術が要る塗料なので、他社ではなかなか使っているところは少ないです。

--では、お仕事をしていて、苦労されることは?

今は、このご時世ですから、どの会社も苦しいと思います。うちも、メガネの仕事は以前に比べて少なくなってきていますが、みんなが苦しいからこそ、儲けることを考えるより、自信を持って個性や持ち味を突き詰めていった方が良いと思います。人間が一人ひとり違うように、会社も一社一社同じものなんてありませんから。もっと個性的に!

--せっかくの良い技術ですから、そこをどんどん売りにして欲しいですね。

日本製をコピーした中国製品も多く出回っていますが、どんどんコピーさせれば良いと思います。コピーされるってことは良いものという証拠なんだから。コピーされればされるほど、本物の良さが分かってくるんじゃないですか。コピーを嫌がるのは、儲けたいと思っちゃうからなんですよね。

--最後に、今後のものづくり業界に一言!

自分のマイナスな部分を逆にプラスに捉えて、魅せていくということです。そうゆう捉え方ができる、柔軟な考え方、遊び心が大切だと思います。

--ありがとうございました!

 

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  • 加藤憲治 Kenji Kato
  • 業   種:七宝職人
  • 生年月日:1946年9月26日
  • 社   名: 株式会社紀宝
           1987年設立
  • http://www.colorplus.jp/

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