鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 006 児玉正(テンプル職人)

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テンプルにこだわり続けて42年、独自の開発力と人材力で、テンプルの様々な形状やデザインを提案して来た(株)長井。このテンプル製作の中で、最も核となるのが、シューティング(芯張)という技術である。このシューティングを請け負う、テンプル職人児玉正氏(以下 児)に、その技術やものづくりに対する思いについて語ってもらった。

一本ずつ、正確に

まず、この会社に入って職人という仕事を選んだきっかけを教えてください。

児)私が27歳の時に、この会社に入りました。それまでは、メガネの材料関係の仕事をしていたのですが、たまたま今の会社が取引先で、ここにはよく出入りしていたんです。営業だったんですけど、性分に合わないなあと思っていたところ、社長が声を掛かけてくれたのがきっかけですね。今思うと、元々ものづくりが好きだったんですね。中学生のときから、ラジオや無線機を回路から設計して、作っていましたから。コツコツ、物を作るのが、性分にあっているんです。

tool01.jpgノギス(写真左)で誤差が無いように寸法を測る。写真右は、差し棒。-- 今されているお仕事について教えてください。

児)私が現在、担当しているのは、シューティング(芯張)といって、プラスチックのテンプル材料に、芯を挿入する行程です。穴が開いていない所に、高周波でピンポイントで熱を当て、芯が真ん中に来るように差します。この芯を通すことで、テンプルが構造的に安定し、バネ性を持たせることができるんです。この時、外に出る部分の蝶盤の位置や高さを、毎回、誤差が出ないように、一本ずつ、正確に調整するのに技術を要します。

-- 機械を長く動かしている間に、ズレが生じたりするのですか?

児)はい。たくさん作っているうちに誤差が大きくなってきたり、突然、不良が出たりします。この時に、不良の原因を、いかに速く見極め、機械を調整し直すかということがポイントになります。

-- 失敗する事もあるのですか?

児)簡単な物を作る時に、失敗が多いですね。やっぱり気が抜けてしまうんでしょうね。逆に、難しい仕事ほど気を張りますから。失敗しないようにするには、必ず確認を怠らない事です。

-- それだけずっと集中力を保つのは大変じゃないですか?

児)集中する時と気を緩める時のメリハリは、きっちり付けるようにしないとね。気を緩める時間を1分~2分くらい作ります。お茶を飲んだり、仲間とバカ話をしたり(笑)。 5分も10分も手を止める事はないですけどね。

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ものづくりの喜びを知る

-- 一人前の職人になるには、どれくらいの期間が必要ですか?

児)テンプル作りの1から10まで全て分かっているかというと、未だに私も分かっていません(笑)。 それなりに出来るようになるのは、4ヶ月程あればできますが、毎回、違う特性の材料、違う形状を扱いますから、毎回悪戦苦闘しながら作っています。私は、「職人でありたい」と思っているけど、まだまだ、学ぶことがあるから、「自分は職人である」という意識はないんですよ。職人っていうのは、その道に精通していることやと思っています。
-- では、ものづくりへのこだわりはありますか?

児)いかに、お客さんのニーズに近づけるか。あとの工程の事も考えて仕事をするようにしています

-- 「これだけは負けない」というものはありますか?

児)人よりも、「ものづくりの喜び」を知っている事ですかね。根っから、コツコツとモノを作るのが好きなんです。PCを自分で組んだり、昔は、アンプも自分で作ったりしてましたしね。

-- これから先の展望や想いはありますか?

児)個人としてどうしたいというよりも、「長井」じゃないと出来ないという製品を作り続けたいですね。この仕事は、体が続く限り辞めませんよ(笑)。

-- では、今の若い世代に対してメッセージをお願いします。

児)若い子らには、「自ら学ぶ」という事を知ってほしい。人から学ぶことができるのは7~8割で、残りの2~3割は個人で学ばなければいけないと思うんですね。そういう意識を持って、仕事を覚えてほしいと思います。僕達の仕事は、日々変わっていくものだから、とにかく自分でやってみること。失敗してもともとです。段々と失敗が減るようになるんですから。何でも、失敗を恐れずに挑戦してみることが大切です。

-- あなたにとってメガネとは?

児)難しい。何かと言われても答えようがないねえ。もちろん、メガネは、毎日掛けて作業をしてますから、必需品ですけど。作っている者としては、与えられた仕事を正確にこなす事しか考えられないんです。

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企業は人なり

創業から42年。テンプル作りにこだわり続けてきた、(株)長井の初代・長井正雄社長(以下長)にも、お話を伺った。

img04.jpg28歳で独立し、現在までテンプルにこだわり続けてきた長井社長。声のトーンに重みがあった。-- 社長から見た児玉さんは、どういう点がすごいと思いますか?

長)彼が入社する頃、当社では、シューティングの機械を開発していて、その機械を一から覚えてくれる社員を探していたんです。それで、縁があって、彼が入社したんですけど、このシューティングの機械を導入してから、ずっと彼に任せてます。この、一つの仕事を何十年も追求し続けている事が重要であり、彼のすごい所だと思います。毎日毎日続ける事で、ノウハウが積み重ねられていきますから、信頼も厚くなっていきます。彼には、情熱があるから、続いているんだと思います。

-- 児玉さん以外にも、長く働かれている社員さんはいるのですか?

長)うちの会社は、不思議とこうやって長く働き続ける社員が多いんです。一番長い社員が、創業から42年間働いている女性社員です。しかも、彼女は、42年間で2日しか休んでないんですよ(笑)。

tool02.jpg様々なデザインのテンプルも、シューティングの技術が基礎となっている。-- 社長の今後の展望・想いを教えてください。

長)「企業は人なり」とよく言われますが、私もその通りだと思っています。中心になる、信頼できる社員を各部署に一人ずつ置くこと。仕事をきっちりこなせるか、開発力があるかどうかが基準です。私達のような零細企業は、大手が出来ない事、誰も真似できない事、人が嫌がる事をやることが大事だと思っているんです。そういった事を共感できる仲間と、今まで一緒に会社を作って来ましたし、これからも作っていきたいと思っています。私がやっている仕事も、そんなにカッコイイもんじゃないんですよ。社長という肩書きは持っていますけど、社員とは、名前で呼び合って、社員と共に一緒にやっていこうという意識を持っていますね。


全ての製品は、人によって作られている。メガネ一つを作るのに、200工程以上あるといわれているが、そこには、たくさんの人や企業が介在する。メガネは、この人達の技の結晶なのである。生涯現役で常に学び続ける、長井社長や児玉氏らの進化を、これからもメガネのテンプルに見る事ができると思うと、メガネ選びが、より一層楽しくなりそうだ。<了>

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児玉 正 Tadashi Kodama
業   種:テンプル職人・工場長
生年月日: 1949年10月 9日
社   名:株式会社 長井
H    P: http://www.syba.co.jp/nagai/
1964年創業/従業員数40人