鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 010 高島宗行(調子取り職人)

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これまでゲンバシュギでは、メガネの様々な工程を追ってきた。そして今回は、いよいよ眼鏡製造の最終工程である「調子取り」。調子取りだけでなく、ツヤ出しや磨きも行っている高島眼鏡製作所の高島宗行氏(以下 高)にお話を伺った

時代の変化に対応する

眼鏡業界へ入ったきっかけを教えてください。

高)眼鏡業界に入るまでは、大阪で銀行員として6年間働いていました。その後、福井に帰って来て株式会社シャルマンに入社し、商品管理の仕事をしていました。そして、父親の後を継ぐために、この会社に入社しました。それから、元来のセル枠構造、磨き、ツヤ出し、ロウ付け、調子取り等、主だった工程を経験して来ました。

works01.jpg-- 調子取りとは、どういった工程なのですか?

高)調子取りの仕事は、メッキ工程が終わったメガネを、商品として店頭に並べられるようにする為に、全体のバランスを調整する仕事です。チェックする項目は、にらみ(テンプルの上下のずれ)、ひらき(テンプルの左右の間隔)、あおり(フロントのねじれ)、それからパッド、モダン、テンプルのたたみ、ヨロイなどです。それ以外にも、キズが無いか、ツヤが出ているかのチェックもしています。そして、折り畳んだときのバランスを見て完成です。

-- 調子取りの難しい部分はどういったところですか?

高)メガネの製造工程を起承転結に例えると、「結」の最終工程になりますので、簡単にいうと、ここに至るまでの工程で出た不具合を修正しないといけないんですね。製品が図面通りに上がって来なかったりすると、そのしわ寄せが来るので、私たちが調整しなければいけません。そうすると、全行程の事を把握して、全体的なことが見れる鳥瞰力が必要となります。そういう意味では、全行程を経験して来た事が活かされてるんじゃないでしょうか。それと、新しい素材のフレームなどが来ると、それに対応するのが難しいですね。長年の経験が必要になります。

img01.jpg-- これまでで苦労したことはありますか?
高)最初は知らない事、分からない事が多かったんですが、「聞くは一瞬の恥、知らぬは一生の恥」じゃないですが、とにかく業界の先輩や専門の人など、色んな人に聞くようにしています。

-- 転機などはありましたか?

高)転機ですか・・転機というより転換をしてきました。仕事の内容は毎年変わっていますね。お客さんからの要望によって、やる事を変えていってます。

--その要望に対応して変化していけるのがすごいですね。やっぱり色々な経験をしてきたからできるんですよね。

高)そうかもしれませんね。良い事言いますね(笑)。ある程度、一通りの工程を経験して来たから出来るんだと思います。この業界というのは、メタル枠・プラスチック枠の流行のように世の中の動向の変化がありますから、それによって仕事も対応せざるを得ないんですね。

all01.jpgほとんどの道具が、市販の物に自ら手を加え、使い易くしてある。よく見ると、製品にキズがつかないように絆創膏が貼られている物もある。

ゲンバシュギであれ

-- 日々のものづくりのなかでのこだわりはありますか?

高)調子取りは、最終的なチェックをする工程ですから、仕上がりが良く、見た目に美しいものを提供したいと思っています。美しいというのは、全体的なバランスが良く、キズがなく、きれいなツヤがでているものですね。

-- 仮にキズが付いているものが入荷されて来た場合はどうされるんですか?

高)メタル枠の場合は、どうしようもないのでお客さんと相談しますが、プラスチック枠の場合は、確認の上、速攻で磨き直しますね。とにかく自社で出来るものは全てやるようにしています。そうやってお客さんにも安心して頂いているんだと思います。眼鏡の製造は一つを作るのにいろんな会社が繋がっていますからね。その中で私の会社で出来ることはやっていこうと考えてます。

works02.jpg-- これだけは負けないものというのはありますか?
高)体力ですね。17時に終わる仕事ではなく、夜遅くまで掛かることもあります。仕事がたまっていると、その仕事に入り込んでしまうんでねえ。それで時間を忘れて働いている時もあります。休みの日は、散歩したり、自転車で遠くまで行く事もあります。それと、「美しいもの、きれいなものを作ること」に関しては誰にも負けたくないですね

-- では、ものづくりの喜びはどういう所にありますか?

高)これは、過去に経験した話なんですけど、雑誌で、新しい斬新なデザインのフレームが載っていて、「変わった機能性のメガネが出て来たなあ」と見ていたんですけど、それと似たような傾向の機能性のフレームの仕事をお客さんから依頼されて、試行錯誤の上、完成した時に、「うちでもこういう(難しい)商品も出来るようになったんや」と喜んだ事が何度かありましたね。

-- なるほど、常に成長しているんですね。では、今後挑戦していきたい事は、どんな事ですか?

高)今の段階では、まだ出来ないと思っているんですが、自分でデザインしたメガネを作ってみたいと思っています。自己満足かもしれませんが、自ら名付けた商品を商品化したいと思うのと、これからは小ロットで作るオリジナルブランドは可能性があると思うんですね。

-- まだ今までに無いものを作れる可能性はあるのですか?

高)あると思いますよ。素材にしても、機能にしても、デザインにしても、まだまだ可能性はあります。日々の仕事の中で、こうしたらいいのにと思う事がありますからね。全て一人では出来ないので、他の職人さん達とコラボして作れればいいですね。

img02.jpg-- 次世代へのメッセージをお願いします。

高)若い方には頭でっかちになってほしくないと思います。私は「ゲンバシュギ」という言葉が好きなんです。営業をするにしても、企画にしても、経理にしても、現場を知っている人は強いと思います。これは、眼鏡以外の業界も同じ事が言えますが、現場には、教えられることがゴロンゴロンと転がっているんですね。現場では、たくさんの発見がありますから。若い方は柔軟な頭があるので、現場でたくさん学んでいってほしいですね。

-- このインタビューもゲンバシュギという企画でやらせてもらっています(笑)。

高)良いタイトルですね(笑)。どの分野でも現場の事を知ることで、初めて成り立っていくのではないでしょうか。

-- 最後に、あなたにとってメガネとは?

高)「良きパートナー」ですかね。自分も掛けていますし、生活する上で無くてはならない物です。メガネは40枚くらい持っていて、使い分ける事でイメージも変わりますし、気分転換にもなりますよ。

たくさんの職人がメガネの製造に関わっている中で、完成品のメガネを手に取り、目で見る機会は、「調子取り職人」が一番多いのかもしれない。メガネは、こうして一本一本丹念に折り畳まれ、私たちの元に届けられているのだ。<了>

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高島 宗行 Muneyuki Takashima
業   種:調子取り職人
生年月日: 1961年 7月 8日
社   名:高島眼鏡製作所
電   話:0778-51-3411
1955年創業/従業員数 4人