一つのメガネには、幾つもの細かな部品が使われている。その細かな部品一つをとっても、幾つもの複雑な工程を経ている、それらの部品の製造加工を専門とする、チタン/ステンレス精密加工部品メーカー、(株)西村金属。ゲンバで、眼鏡部品の二次加工と複雑な製造工程を構築する、坪内義久氏(以下 坪)にお話を伺った。
経験して分かること
--まず、メガネ業界に入った経緯を教えてください。
坪)高校を卒業して、紹介されてこの会社に入りました。ですから、もう20年くらいこの会社に勤めていますね。今の製造管理の仕事は10年くらいやっています。学生の頃は、眼鏡業界は意識してなかったですね。
--どんなことに苦労されましたか?
坪)お客様からの短い納期での仕事や、形状の複雑な製品、精度の高い製品など、加工が難しい仕事が来た場合などは、苦労します。お客様の要求にそえる形に仕上がる工程を考え出すのが大変ですね。
--そういう時には、どうやって乗り越えていくんですか?
坪)一人で考えるというよりは、会社のみんなに相談することで、色々な意見をもらい、その中で一番良い方法を模索していくという感じですね。「じゃあこの方法でやってみようか」と。一回やってみて、ダメだったらまた違う方向で…とか。みんなの考えをもとに、それをまとめていく役になります。
当社の社長とか周りのメンバーが良かったっていうのが一番。時間的に厳しい仕事なんかもありますが、そういう難しいことを、何とかみんなで力を合わせて実現させてます。
--今は製造管理のお仕事をされているということですが、製造過程の作業は経験されたのですか?
坪)ひととおりの工程は経験してます。それが今の仕事に結びついてきていると思います。
やっぱり、注文を頂いてお客様と具体的な話をする時に、「この加工だったらこっちの部署でできるな」とか「あそこの部署の技術を使ってできるな」とか、加工が可能かどうか判断しやすくなります。それは、私が実際に色々経験していないと分からないことですよね。
--今も現場での作業は行われているんですか?
坪)ええ、今も、人が足りない部署があればそこにまわって作業します。
それに、新しい部品の仕事をする時には、組み立てでもなんでも一度私もやってみます。前はこの方法で早くできたから、こっちの仕事にも応用してみようというように、早くできる方法を見つけだしたりできますね。工程を頭に入れておかないと指示もできないですしね。
--これだけは負けないということはなんですか?
坪)当社のチタン加工技術です。チタンに関しては、どんなものでも必ず仕上げます。ある程度の図面を頂ければ、精度の高い製品に仕上げます。
--これから挑戦したいことはなんですか?
坪)当社のチタン加工技術を、眼鏡以外にも範囲を広げて、色々なものに発展させて役立てていきたいです。以前は、チタンが使われることの少なかったアクセサリーとか、医療器具などですね。
まず、自分で動いてみる。
--ものづくりの喜びって、何でしょう?
坪)一番嬉しいのは、作業工程が順調に進んで良質の製品を納められた時ですね。私が作った製品を、小売店で見かけた時は「あー、これうちで作ったものだ」って、やっぱり嬉しいですね。
--メガネは掛けられますか?
坪)視力は良い方ではないので、一応眼鏡は持ってます。サングラスは結構持ってるんですけど。
--ご自分で作られた製品が使われているメガネを買われることはありますか?
坪)どうしてなのか、私が作った部品が使われてるメガネを買うことはないんですよね(笑)。なんか、見てると買いたいけど…買えない(笑)。苦労したことを思い出してしまうからかな(笑)。やっぱり買うというより、じーっと見てしまいますね(笑)。
--現場において、先輩ってどういう存在なんでしょうか?
坪)色々と助言などをしてくれる良きアドバイザー…のような感じでしょうか。
--先輩から教えてもらったことは大きいですか?
坪)私は、なるべく自分で試行錯誤を重ねながら覚えていきたいっていうタイプなんですよ。どうしても分からないと先輩に聞いてみて、あ、こういうことやったんかと納得します。聞いただけではやっぱり分からないんですよね。自分自身が一回動いてみないと。やってみてそれでも分からなかったら聞いて、やっと自分で覚えるってことになるんでしょうね。
--この仕事の魅力はなんでしょう?
坪)色んな経験ができるということです。作業もそうですし、色んな情報を得ることができるお客様との対話なども魅力ですね。
--最後に、あなたにとってメガネとは?
坪)社会に出る第一歩でしたね。