鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 041 兵井伊佐男(一点もの職人)

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one off工房の「one off」とは和製英語で「一点もの」という意味があるそうです。そんなone off工房が生み出すブランドコンセプト「Y」は、ユーザー一人ひとりに合わせたメガネに簡単にカスタマイズが可能である。そんなコンセプト「Y」のデザイナーであり職人でもある兵井伊佐男氏にお話を伺った。

キーワードは「目とレンズ」

img7.jpgコンセプト「Y」のメガネ。ブリッジを何タイプも作って位置を調整するのではなく、フレームとレンズを分離することで、レンズ自体を動かして調整できる。-- コンセプト「Y」というブランドは兵井さんがお一人で作られているんですか?
はい。デザインから製造・販売まで私が行っています。
-- コンセプト「Y」はもともとYさんというお友達の方のために作られためがねだそうですね。
そうなんです。彼は強度近視のため、レンズが厚くバランスの悪い眼鏡を掛けていたので、いっそ作ってあげようと思ったんです。まずYさんの顔の大きさに合わせて頭に回りこむようにフレームをつくり、その後に目の位置に合わせてレンズをつけてフィッティングをしたら、軽くて柔軟性のあるフレームになりました。そのときの形がコンセプト「Y」の原型になっています。

-- フレームとレンズが分かれた構造になっていますが、お客様の目の位置によってレンズの位置を変えるんですか?
img11.jpgそうです。黒目と黒目の間隔のことをPD(pupil distance=瞳孔間距離)と言いますが、お客様にはPDが何ミリかということをオーダーシートに書いていただきます。それに合わせてレンズを調整してロー付けしています。他にもテンプルの長さもお客様に合わせて調整しますよ。

-- 完全手作りのオーダーメイドなんですね。目の位置とレンズの位置が合っていると、めがねにどう影響されるんですか?
昔のめがねはコンセプト「Y」のように目の中心に合わせて、レンズの間のブリッジの長さを変えることで、レンズの位置がちょうど目の前にくるように調整していたんです。今は大量生産する売り方に変わってしまって、フレームは誰でも同じ形で、レンズのカットの仕方によって目の中心に合わせているんですね。でもそれだと、レンズがとても分厚くなってしまい、バランスが悪い。

-- つまり、レンズの位置自体を調整することでレンズが薄くなるということですか?
そうです。薄くなるということは軽くなるということです。今のめがねには選べる楽しさはあるけど、本当に合うメガネにはなかなか出会えないんですね。コンセプト「Y」は簡単にお客様の顔に合わせられるような工夫がされています。

img8.jpg-- 手作りでオーダーメイドのメガネを作るのは大変ではないですか?
大きくブロー、リム、テンプルの各部に分けて作り、それらを組み立てるのですが、組み立て自体の作業は15分ほどで出来ます。会社を立ち上げたときはひとつひとつ違うオーダーメイドというやり方に不安を感じたこともありましたが、お客様の名前の書かれたオーダーシートを見るとやる気になります。出来上がったものを確実にその人が使うのですから。カラーやフレームのオーダーから年齢や趣味、職業などどんな人か想像しながら作るのが楽しいですね。

-- 今までにも刃物やアクセサリーなどいろいろなデザインをされていますが、めがねのデザインの難しさはどういうところにありますか?
img5.jpg軽さはもちろんのこと、見た目とは裏腹に作りはとても丈夫。こちらはリーディンググラスとして使える「Yプラス」シリーズ 。 私はもともと工業デザインの人間です。メガネのデザイン=ファッションデザインということを理解するまではとても苦労しました。ファッション雑誌を読んだり、ジュエリーデザインを勉強して、やっとめがねのデザインが出来るようになりました。コンセプト「Y」ができたときは、かなり自信を持っていいものができたと思いましたよ!

-- 一見コンセプト「Y」はとても繊細に見えますが、耐久性はどうですか?
普通のフレームはフロントとテンプルをつなぐ鎧があり、テンプルがしなる構造です。でもコンセプト「Y」のつくりはフロント部から掛ける人の顔の形に合わせてしなることができるのでフレームの負担が少ない。見た目とは違いかなり丈夫です。

-- 材質は?
フロント部分はステンレス製でテンプルはベータチタンでできています。

-- 作り方が普通のフレームと違うと思うのですが、工程を教えてください。
フロント部分(ブロー)はプレスで作り、リムはベンディングマシーンで曲げて作ります。テンプルはある程度の長さのものを用意しておき、お客様に合わせて長さをカットします。
その後、一度デモレンズを入れてお客様の寸法で組立てをして、形をきちんと整えます。その後レンズをはずした状態でメッキに出します。メッキから上がってきたフレームに再びデモレンズを付けて、最終調整をして出荷になります。

-- 材質は?
フロント部分はステンレス製でテンプルはベータチタンでできています。

img3.jpgテンプルが木製の「Y-WOOD」。こちらも驚きの軽量感。-- 作り方が普通のフレームと違うと思うのですが、工程を教えてください。
フロント部分(ブロー)はプレスで作り、リムはベンディングマシーンで曲げて作ります。テンプルはある程度の長さのものを用意しておき、お客様に合わせて長さをカットします。
その後、一度デモレンズを入れてお客様の寸法で組立てをして、形をきちんと整えます。その後レンズをはずした状態でメッキに出します。メッキから上がってきたフレームに再びデモレンズを付けて、最終調整をして出荷になります。

-- 標準で用意したものと特殊注文があるのですね。
そうですね。テンプルだけ付ければいい状態にしたものを用意してあります。標準のもので合うお客様もたくさんいらっしゃるので。こうしておくと注文が入れば次の日には発送ができます。オーダーメイドや細かいカスタマイズが必要なものは、注文を受けてから2週間ほどかかります。時間はかかりますが、それぞれのお客様に合わせた仕様でできあがるので、お客様が大変満足されるということで、最近はこういう注文が小売店から増えています。


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21世紀=効率の時代

img1.jpg3代目“ラビ” -- ウサギを飼っていらっしゃるんですね!
そうなんです。草食動物なのでとても性格がおとなしくて、仕事中も放し飼いにしています。ウサギを飼っているといろんな発見がありますよ。人間はほぼ肉食になっているけど、これからは草食にシフトしていかないと。大量の穀物を食べさせた牛を食べるっていうのはとても効率が悪いですよね、穀物を食べればいいという話になる。無駄なことを省いていかないと。21世紀は効率を追及する時代だと思います。

-- 効率ですか?
img9.jpgテンプルをカットした切れ端。これは色見本として使われます。これはメガネ作りにも言えることで、効率を追求するとメガネが軽くなるし、ごみが出ないし、カスタマイズやアレンジが出来る余裕が生まれるんです。コンセプト「Y」はそういうメガネを目指しています。これが21世紀の先進国のものづくりだと思います。

-- なるほど。技術を盛り込むのではなく、要素をそぎ落としていくことで差別化をしていくんですね。
めがね会社も他の製品会社も「中国には出来ないことをやる」ことで必死です。でもユーザーはそんなことは求めていません。コンセプト「Y」のような効率を追求した形が21世紀のスタンダードになればいいなと思います。

-- めがね産地として鯖江がこれからすべきことは何でしょう?
img2.jpgメガネはファッションなのか医療器具なのかという質問に対し、「かっこ悪くても道具としていいものならば手離せなくなる。いい道具は必ずファッションになる。」と語る兵井氏。大量生産型の売り方で産地として大きくなってきた鯖江ですが、今は中国におされ気味ですよね。鯖江はどこにも負けない技術をたくさん持っているので、それをすべて盛り込んで「どうだ、すごいだろう!!」という技術を誇示した作り方をしがち。そうではなく、ちゃんとお客様と向き合ってお客様のニーズを知った上で、持っている技術を利用して欲しいと思います。どんどん新型を作って売りっぱなしにするか、お客様に合わせて一つの型をカスタマイズするか、どちらが効率がいいかは考えれば分かることだと思います。
鯖江の持っているポテンシャルはすごい。システムを少し変えるだけで、お客様のニーズに合わせた眼鏡作りができるはず。たとえば同じものを量産するための治具を、少しフレームのサイズを変えられる治具になるよう考えると良い。流行を追うファッションとしての眼鏡はもう中国に任せたらいいと思います。人と正面から向き合うことから始まる、人のためのデザインをしていく時期なのではと思います。ネックになっているのは、それを儲からないと思っている人たちがいるってことかな。

img6.jpg-- それでは、コンセプト「Y」の今後の展望をお願いします!
ゆくゆくは他社のメーカーさんと共同で作っていきたいですね。私一人では作れる本数にも限りがあるし、今は製造もしているけれどデザイナーに戻りたいと考えています。コンセプト「Y」がたくさんの方にかけてもらえて、より注目されるようになって、コンセプト「Y」のようなメガネが他社からも誕生して、私が死んでしまった後もコンセプト「Y」のスタイルがメガネの世界でスタンダードなスタイルになってほしいです。

-- 今日はどうもありがとうございました!

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兵井 伊佐男 Isao HYOI
one off工房 代表取締役
一点もの職人

社名: one off工房
福井市城東2-2-1
TEL/FAX:0776-27-1820
http://www.concept-y.com