鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 009 大西昌二(試作職人)

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メガネづくりのほとんどの工程を一人で行う「試作職人」。様々な会社から多岐にわたる種類の試作品の注文が入り、それぞれに対応していかなければならない。今回は、眼鏡枠の試作・組立を専門にしている大西技工の大西昌二氏(以下 大)に、お話を伺った

初めて見た時の感動

img01.jpg眼鏡業界へ入ったきっかけ、「試作品」を始めた理由を教えてください。

大)実家の近所にメガネ会社があり、18歳の時に偶然に誘われて入社したのが、眼鏡業界に入ったきっかけですね。その会社では、一通りの工程を経験しました。そこの会社で、ある日「試作品」というものを生まれて初めて目にしたんですが、その作りの良さに感動したんですね。それまで、試作品は機械で作っているものと思っていたんですが、全て手作業で作っているということを、この時初めて知ったんです。一人の職人が全て手作りで作ったものとは思えないような、作りの良さに驚きを感じました。それを見て、自分も「試作職人」になりたいと思うようになりました。
 その後、試作を覚えるために、鯖江のメガネ会社に転職し本格的に試作を勉強し、初めて試作品製造を担当することになりました。そして、平成13年に独立し、今の作業場をつくり、以後、1人で試作にあたっています。

-- 試作品とはどういったことをするのですか?

大)試作品は、商品化を検討する際の見本として、また、営業する際のツールとして使われます。製造メーカーさんは、最初から量産品を作るとイメージが違う場合があり作り直す事があるなどコストがかかるので、まず、試作品を作ってから製品化するかどうかを判断します。
 お客さんから図面をもらい、生地の加工からロウ付け、研磨までの工程を一人で行います。プラスチック枠もメタル枠も基本的には同じ作り方で、プラスチック枠は、ほぼ最終形まで仕上げます。一方、メタル枠の場合は、メッキを施す前の状態までを全て一人で作ります。

work03.jpg研磨の作業台は、一般的な事務机。机の無数の傷が、これまでの作業の苦労と年季を感じさせる。 -- 試作品を作る上で難しい点はどういうところですか?

大)1つは、お客さんであるメーカーさんが試作品にどの程度の精度を求められているかが分かりにくいことですね。お客さんによっては、求める精度が違います。それと、図面では表現できない微妙なラインもメーカーさんによって好みが違うので、それを正確に理解するには、お客さんの要望をよく理解するように努めています。

-- 他に技術面で難しい点は?
大)私は図面を渡された時に「どういった工程で作ろうか」と、全て頭の中でシミュレーションをしてから作ります。しかし、頭の中で考えた通りに出来ない事はよくあります(笑)。各パーツをそれぞれ別々に作って、最後にパズルのように組み合わせて、ロウ付けする様な時は、それぞれのパーツが組み立ての時にきっちりと合うように作らないといけないんです。

-- 同じ物を作る事はないんですよね?
大)そうですね。全く同じ物を作る事はないので、毎回、頭を抱えながら作っています。ごく稀に「同じ物を作ってくれ。」という注文が後から入ることもありますが、全く同じ雰囲気には仕上がらないんですね。同時に同じ物を作るように注文があれば、同じ物を作ることは可能ですが、月日が経ってから「同じ物を作ってほしい。」と言われても、最初作った時の道具の環境を全て覚えているわけではないので、同様な仕上がりにはならないですね。どうしても、雰囲気は、微妙に変わってしまいます。

all01.jpg数十種類の工具を使い分ける。その多くは市販の工具をカスタマイズして、使いやすくしたものだ。

期限厳守が信頼の鍵

--日々のものづくりのなかでこだわっていることはありますか?

大)納期厳守ですね。今まで、一度も納期を破った事はありません。注文の時に、図面を見てどれくらいで出来るかを想定して、仕事を受けるかどうか考えます。何故そこまで納期にこだわるかというと、この試作品の納期が遅れてしまうと、全ての工程が狂ってしまい、お客さんに迷惑を掛けることになるからです。きっちり納期を守る事が信頼に繋がると思っていますから。昔、知人に言われた「自分が出来ると思って受けた仕事は、プロなんやで(なんだから)寝んでもやらんとあかん。」というのが頭に残っています。なので、仮に、納期を守れないと思った時は断るようにしています。
 なので、日々プレッシャーとの戦いですよ。もし、完成間近の工程で失敗してしまうとやり直す時間もありませんし、使用する材料も、メーカーさんから余分に預かっていない場合は、絶対にミスは出来ませんからね。作業の際は、一瞬足りとも気を抜けません。

all02.jpg細部の磨きやロウ付けも自ら行う。-- では、ものづくりの喜びは、どういう所にありますか?
大)やっぱり自分の作った試作品で、お客さんから「注文が入った。」と言われた時は、嬉しいですね。それと、自分の試作品が展示会などで並んでいるのを見て密かに喜んでいます(笑)。

-- 今後、やってみたいことはありますか?
大)今も少しやっているのですが、オーダーメイドのメガネを作っていきたいです。お客さんに実際、掛けてもらって、納得してもらえるまで、こだわって作るというのが夢ですね。そうやって作ると長く使ってもらえますから。そういうものを最終的には作りたいです。60歳過ぎてからですかね(笑)。今は、そこまで技術が至っていませんから

-- 次世代へのメッセージをお願いします。
大)これからは若い人の感覚が求められます。眼鏡業界に若いデザイナーさんはいますが、製造現場には若い人が少ないので、デザイナーさんが考えた微妙なニュアンスが伝わらないことが多いようです。若い感覚を持つ経営者も少ないため、若いデザイナーさんの自由な発想をうまく製品に活かしきれない部分もあるようです。ですから、試作も含め、実際に手を動かして作る製造現場にも若い人が入るべきだと思います。若い人は、変な固定観念が無く、頭が柔らかいですからね。

-- あなたにとってめがねとは?
大)教科書やね。毎回毎回、作る度に勉強させられています。試作品をやり始めた最初の2年位は、簡単やと思っていたんです。でも、やればやるほど、知れば知るほど、その難しさと奥深さが分かってきました。ずっと追いかけ続けるモノですね。

きれいに整理整頓された作業場には、たくさんの道具や機械が置いてある。それは、鯖江のメガネ工場の縮小版を見ているようでワクワクするものだった。たかが試作品されど試作品。一点ものの製造には、その難しさと醍醐味があるのだろうと思った。 <了>

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大西 昌二 Shoji Onishi
業   種:試作職人
生年月日: 1957年 4月12日
社   名:大西技工
H    P: 『Kichizaemon』
2001年創業/従業員数1人/オーダーメイドも承ります。