貴金属フレームメーカーとして高級なメガネフレームやサングラス、時計などを製造している水島眼鏡㈱。同社では、消費者の自社に対する信頼性を高めるために、製品を安心して永く使用してもらえるよう、 自社製品に限り修理対応している。修理には、製造工程とは、また違った難しさがあるという。今回は、水島眼鏡㈱の社長・水嶌基博氏（以下 水）と、修理職人である寺崎晃人氏（以下 寺）にお話を伺った。
デザイナーであり職人であり
水嶌社長（上）と寺崎氏。
-- まず、眼鏡業界へ入ったきっかけを教えてください。
寺）私は、福井市出身で福井の「産業デザイン専修学校」を卒業しています。学校ではデザインの勉強をしていたんですが、もともと、ものづくりが好きだったんですね。
水）ちょうど、うちの会社で、自分で作ることのできるデザイナーが欲しいと知人に話したところ、彼を紹介してもらったんです。
デザイナーといっても絵を描くだけの人材は、うちの会社には必要なく、デザインも製作も両方できる人材を探していました。
寺）入社してからは、製造に係る全ての工程を一通り経験しましたね。
水）彼には最初から全ての工程を知っていてほしいと思ってました。なぜなら、全ての工程ができるようになると試作品が作れるようになり、修理にも対応できるんですね。
寺）修理は、全ての工程を知っていないとできない仕事ですね。また、入社後は働きながらSSID（鯖江市立インテリジェントデザイン講座）に通ってデザインの勉強も続けていました。
SSIDの９期生になるのですが、川崎和男先生をはじめ、講師の方々には、かなり厳しく鍛えられましたね。
-- 寺崎さんは修理以外の仕事もされているのですか？
寺）試作品の製作もしています。
-- どのようなものを修理するんですか？
水）基本的には、テンプルやリムの、「折れ」「切れ」「傷付」を直す作業です。これらの原因は様々です。「お尻で踏んでしまった」とか「子供が踏んだ」というのはよくあるのですが、 ひどいものになると「交通事故に遭って、壊れてしまったメガネ」や、中でもすごかったのが「焼却炉で燃やした」というのもありましたね（笑）。（焼けて）真っ黒なのを持って来て 「直してください」と言われた時は、ほんとどうしようかと思いましたよ。何とか直しましたけどね。
修理前（上）と修理後（下）のブリッジ
-- お客さんは、そこまでしてでもメガネを直したいと思うんですね。
水）そうですね。やっぱり、それだけ愛着があるんでしょうね。また、「
形見」や「思い出の品」は新品に替えるという訳にはいきませんからね。修理したいと思われるんでしょうね。修理は、時間も手間も
コストも掛かりますから、本当に大変な仕事なんですけどね。
寺）作る側としては、それだけ大事に使ってもらっているということが分かるのはとっても嬉しいですね。新品を作る時は、なるべく壊れないメガネ作りを心掛けています。それでも壊れてしまうんですが、
修理の仕事を受けることによって、どういった部分が壊れ易いかが分かるんですね。なので、次はそこの部分が壊れないように作るようにできます。そうして、丈夫なメガネが出来上がっていくんですね。
お客様の大事なメガネですから、きちんと修理するよう心掛けています。
-- 修理ができることを知らないお客さんも多いと思いますが。
水）そうですね。小売店さんによっては修理ができると言っている所もあるのですが、実際知らない人は多いと思います。修理もできるということを知ってもらいたいですね。
-- 寺崎さんの「ものづくり」に対するこだわりを教えてください。
寺）きれいに仕上げるのがあたりまえだと思っています。それと、使われる方達が扱い易いものを意識しています。また、修理の場合には、可能な限り新品に近づくように努めています。
-- 社長から見た寺崎さんの良さはどういったところですか？
水）良さと言っていいかは分かりませんが、意外と頑固なところがありますね。まだまだ修行中ですが、これまでよく育ってくれましたね。 従業員全員にいえることですが、これで「良い」ということは、一生涯ありませんからね。
取れた部品をロウ付けによって補修している。本当に細かい作業だ。
-- 最後に、あなたにとってメガネとは？
寺）こだわってこだわって、こだわり続ける物ですね。
壊れたら買い替えるという時代。修理して長く使い続けたい物もある。メガネも修理はできるのだが、極力修理が無くていいよう大切に扱ってあげたい。 もし、壊れて使えないメガネが家に眠っているなら、修理をしてみてはどうだろうか。
