鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

「まずは、かけてみてください」木で作られたメガネの本当の魅力は実際にかけたときに実感する。日本の文化に深く関わっている「木」。だからこそ説得力のある確かな感触。見た目とは裏腹に優しい肌触り、そして軽くて疲れない。日本でも数少ない木のメガネ、樹tatsukiブランドを生み出している代表の角野裁雄氏(以下 角)に、木という新しい素材の魅力についてお話を伺った。

木に出会わなければ、メガネをやめてた。



--なぜ木でメガネを作ろうと考えたのですか?

角)もともとは前の会社でメタルのフレーム試作をやっていたんです。だんだんと会社の状態もよくなくなってきて、どうするか悩んでいました。そこでたまたま、お客さんから木でメガネを作ってくれないかと言われたことがきっかけで作るようになりました。木で作ってみるまでは、その素材の良さはわからなかったですね。初めてですから。それが、作ってみると良いものができたと感じました。

--かけてみてビックリしました。本当に軽いです。

角)メガネ好きの人や、木が好きな人に本当に喜ばれます。そうでない人でも木のメガネの珍しさにまず驚いてくれます。そして掛けてみても感触がよくて「すごい!」って言ってくれますね。その一言が一番嬉しいです。だから木という素材での可能性を感じるんです。

--木の素材についてはどのように研究をされているのですか?

角)はじめは全然知識はなくて、自分で材料を集めながら勉強しました。やはり自分の手で触れてみないとメガネの素材になるかどうかわからないですからね。県外の材木屋を回り、飛び入りでいろいろな木を見せてもらいます。そこで出会う木は多種多様。蛇の柄のような木目の木「スネークウッド」を見た時は、これで作ったらどうなるんだろうとわくわくしましたね。その他には水分の調整や、表面の油も色々試してみて自分の納得いくまでやりますね。

 

 

写真では伝えられない「木」の魅力。

--一つ作るのにどれくらいの時間がかかるのですか?

角)丸2日です。材料を集めるところから、木彫りをいれたりすると実質は10日以上かかります。

--一番難しいオーダーは?

角)立体的な厚みがあるようなフレームは何度もいろいろな角度から削りだしていくので、手間も時間もかかります。セル枠を持ってきて、これを木にできないかと言われたこともあります。その複雑さからできないこともありますね。でも初めから無理とは言わずに、やってみないとわかりませんがやってみますと引き受けたこともありました。難しく苦労した作品は、お客さんに渡したくないときもありますね。(笑)

--どんな木が人気ですか?もしくはよく使う木はありますか?


角)よく使うのは黒柿、黄楊(つげ)ですね。黒い木目が思わぬ柄になって出てくる楽しみがあります。黄楊はくしにも使われますが、本当に丈夫です。

--色は着色しているのですか?

角)しないですよ。それぞれの木に色んな色があるんです。着色するなら木でなくてもいいのではということになりますから。赤っぽい色だとサティーネ。紫っぽい、パープルハートとかもあります。ゼブラ柄のようなゼブラウッドというのもあるんですよ。

--本当におもしろいですね!見ているだけで楽しくなりますね。

角)そうですね。作っている立場でも楽しいですね。もちろん掛けてくれるお客さんも楽しんでもらいたいですからね。一概に木といっても、素材によって軽さも、肌触りも違う。もちろん木目や色も違いますから、毎日が驚きと発見を与えてくれます。

一点もの、一生もの。

----木の丈夫さは建築物を見てもわかりますね。でもやっぱり割れちゃったりしないんですかね?


角)割れることもあります。しかし、木という素材はメタル枠等と違って、表面劣化が少なく、年月が経つにつれて肌に馴染んできますし、強度も増します。だから私は「一生ものとして使っていただける」と言っています。でももちろん強い衝撃がかかってしまったときは割れてしまうこともあります。そんな時は無償で直します。せっかく高いお金を出して買っていただいた世界に一つしかないメガネだから、自分が一生面倒を見るつもりでお客さんに使っていただいています。


--これからの夢は?

角)お客さんが、メガネを選ぶ際に、普通にウッドが選択肢に入ってくるようになるのがまず夢です。メタル、プラスチック、ウッド、みたいにね。その為に、少しでも安くしたいと思っているんですがね・・・。なるべく自分の足で材料を集めることでコストを下げるようにしていますが難しいですね。(笑)

--これから、木のメガネ職人を志す若い人に向けてメッセージを。

角)「中途半端なものだけはつくるな」です。自分が良いと思わないものはお客さんも良いと思わない。納得いくもの、世に出して恥ずかしくいものだけを出せということですね。

--本日はありがとうございました。最後に、社長にとって眼鏡とは?

角)私自身がものすごい近視なのでメガネは必需品だったんです。だからこそ掛ける人が、メガネを掛けて締め付けられたり、痛みがあったり、不快になってはいけない。メガネを掛けて違和感が無い、良いものを作り続けたいです。

 
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  • 角野裁雄 Tatsuo KAKUNO
  • 業   種:木枠職人
  • 生年月日:1958年2月6日
  • 社   名: 工房樹
  • http://www3.plala.or.jp/kobo-tatsuki/

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