鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 060 川上康夫 (金型職人)

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メガネ製造の根幹にあたる「金型製作」はその品質の如何が出来上がった製品の良否を決定付ける重要な工程です。文殊山のお膝元にある川上金型ではメガネの製造に必要な金型を全て自社で作る、いわば金型製作のオールラウンダー。今回のゲンバシュギは社長の川上康夫氏に「金型づくり」について伺いました。

図面が正しいとは限らない

--御社ではどのようなお仕事をされているんでしょうか?
メガネ製造に必要な金型を製作しています。うちの特徴としてはメタル枠、プラスチック枠のフレーム、テンプル、各パーツなど、必要な金型は全てを自社で作れることですね。またメガネ以外にも工作機械などに使う金属部品も製造しています。眼鏡のような繊細なパーツを作る金型から大型ものまで対応できるので、難度の高いことをしています。どんな仕事がきても怖くないですよ。

--金型ができるまでの流れを教えて下さい。
img1.jpg打ち合わせの中でどの形がいいかをデザイナーと入念に打ち合わせします。 まずはデザイナーとの入念な打ち合わせから始まります。デザイナーは自分の感性をフルに使ってデザインしたスケッチを持って来るわけですが、そのまま図面通りに金型を作ってしまうと、出来上がったメガネが使いにくかったり、せっかくの美しいデザインがうまく生かされないことがよくあります。図面はあくまでも2次元の世界だから。図面では美しく見えたラインでも、立体にするとそのとおりにならず、線が歪んだり野暮ったく見えたり。立体になったときの微妙なバランスやラインの流れ、模様の出具合をきちんとデザイナーに伝えて、修正を提案します。

--なるほど。平面から立体が想像できるなんてすごい!
そうですね。金型職人として長年の経験があるので図面を見ただけで、立体になったときの商品のイメージだけでなく、ユーザーが掛ける姿まで細かく想像することができます。
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自分の指先を信じて。

-- では金型の製造について教えていただけますか?
img3.jpgCADデータを機械に入力して加工します。 デザイナーのデザインをCADできちんと数値化し、そのデータを基に金属を加工していきます。
メガネの素材により金型に使う材質が違います。例えばメタルは合金工具鋼という素材を使いますし、プラスチック枠は真鍮などの素材も使います。 加工方法はNC(数値化されたデータをもとに立体物を短時間で製作する機械)を使った放電加工、マシニングセンター、ワイヤー放電加工など素材や形状にあった方法を用い加工していきます。 説明が難しいけど、NCでの放電加工は、加工したい素材に電極を近づけて放電して熱でその素材を溶かして加工していく方法。
img4.jpgNC加工の様子 ワイヤー放電は加工したい材料にワイヤーを通し、材料とワイヤーの間で放電させながら「糸ノコ」のように材料を切り抜いていく方法。機械加工の後は手作業で、鉄を掘れる彫刻刀などを用いて細部を彫ったり、細かい傷を直します。金型によっては複雑なものもあり、その場合は道具も自分で作ります。結局最後は人の手にかかっているので、自分の指先の感覚を研ぎ澄まし丹念に丁寧に仕上げていきます。

-- 道具も自分で作るんですか?
img5.jpgワイヤーを使った放電加工の様子 具や刃物が作れないとそもそも金型職人は務まりません。昔は金型を作る機械まで自分で作りましたよ。メガネは非常に精密なものなので、市販の道具や刃物では間に合わないことが多い。その際はそれに合ったものを作ります。


-- 金型づくりで一番難しいところは?
img6.jpg最終的には手作業で仕上げます。 どの部分も本当に難しく、気が抜けません。簡単な作業は1つとしてありません。3次元のものを作るわけなので、最初に頭の中で完成形をいかに正確に想像するかがすごく重要。イメージどおりに仕上げるためには素材、つくる順番、あらゆることに気を使います。今は高度な加工ができるNCがあるので随分便利になりましたが、昔は手作業で作っていたので本当に大変でした。
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お客さんの身になる

-- メガネの金型を作られて何年目になるんですか?
かれこれ40年以上作っていますね。眼鏡産業が伸びていく時に、金型製造業を始めました。その前は機械メーカーに勤めていたから機械の扱い方は分かってたのでなんとかなるだろうと。でもやっぱり眼鏡は難しい。失敗しながら試行錯誤の連続でここまできました。

-- でもその数々の失敗こそが、今ではどんな仕事がきても怖くないという自信になっているんですね。お仕事で常に心がけていることを教えてください。
img8.jpg川上 康夫氏 とにかくお客様の身になるということ。だから要求どおりではなく、たとえ難しい工程になったとしても、良いと思うことはこちらからも提案をしていきます。また今まで作ってきたマスター金型を全て大切に保管しています。それさえあれば、お客様からの依頼があればたとえ100年後でも再度同じものが作ることができますからね。いつでもスタンバイOKですよ。(笑)

--今日はどうもありがとうございました。





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川上 康夫 Yasuo KAWAKAMI
金型職人
生年月日:1949年12月1日

社名:有限会社川上金型
創業:1972年
従業員数:5人
福井県鯖江市南井町5-15-2
TEL 0778-52-1310