眼鏡フレームの表面処理には様々な方法があるが、今回は「塗る」のではなく「彫る」、レーザー加工にスポットを当てた。眼鏡の内側に品番が刻まれているのは一度は見たことがあるかもしれない。最近ではそれだけに留まらず、レーザーならではの、細かい模様を彫り出したり、素材を溶かしての表現も可能となっている。今回は、(有)エルテックでレーザー加工に携わる木下和成氏(以下 木)にお話を伺った。
メガネ業界の中の”レーザー加工”という仕事。
--お仕事は具体的にどのようなことをされているのですか?
木)もともと当社は時計へのレーザー加工から始まりまして、ここ何年かはメガネへのレーザー加工が主流になってきています。今までは、受託加工だったのですが、昨今は当社から技術を発信していくなど、時代のニーズにあわせた仕事をしています。
--レーザー加工ということは、彫るってことですよね?色は後から付けるのですか?
木)レーザーで彫ったところに塗料を詰めたり、素材を溶かすことで材料を変化させて色を見せる表現もあります。
時計の文字盤にもレーザーの技術が使われているのはご存知でしたか?
--そういった表現も、いろいろと実験されて、実際に提供していくんですよね?
木)そうですね。でも、当社だけでは未知数な部分が沢山あるので、メーカーさんにも協力して頂いて研究しています。そういった繋がりで、色々な業界が成り立っているんだと思います。
--素材によっては、機械を数種類使うこともあるのですか?
木)例えば、金属には金属対応のものという具合に、YAG,YVO4、CO2、内部レーザー加工、印刷機 等、素材と用途に合わせて使い分けて加工しています。これだけの(レーザー加工機械の)台数を持っているのは当社だけだと思います。(全42台)
どこにも負けない、質の高いものを。
--レーザー加工で苦労されていることはありますか?
木)とにかく、モノの扱いですね。傷には気を使います。それと、レーザーを打つ位置や仕上がりの綺麗さに注意しています。表示内容の小さい文字や細かい柄等は、つぶれ易いんですね。そこを表現させるっていうのが、当社の技術力ですね。そういった細かい部分をも表現させる事で「どこにも負けない、質の高いものを」というのが社長の理念です。
--そこがこだわりでもあるんですね。
木)受注元によっては、単価の関係である程度妥協しても良いですよと言われることもあるのですが、それが出来ないんです(笑)。
--…プロですね。
--お仕事をされていて困ったことはありますか?
木)うーん・・・、あまりないですね。これも社長の考えなのですが、お客様の多様化するニーズに対して、より高度な顧客満足実現に応えていかないと駄目だと。一品ものでも納期がギリギリのものでも、社員みんなで力を合わせて取り組んでいます。大変ですけど、困ったことはあまり無いですね。
自信、責任→おもしろさ。
--そもそも、このレーザ加工というお仕事を選んだきっかけは何だったのでしょう?
木)前に勤めていた会社の上司の紹介で、この会社を知りました。当時はまだ、一分野でしか、レーザー加工というものが表立ってはいなかったんですが、初めて目にして、衝撃を受けましたね。面白そうだなと思いました。
--私たちも先程見せて頂いて、衝撃を受けました(笑)。
木)当時は時計のレーザー加工が主だったのですが、自分の内では時計っていうのは高級なイメージがあったんです。だから、凄いことをやっているんだなと思いました(笑)。そこで、自分も一緒に働けたらなっていうのがきっかけですね。
--では、このお仕事をこれからやろうとする方々にメッセージをお願いします。
木)一番はやっぱり「忍耐」かもしれないですね。もともとその仕事が好きで始める方はある程度ついていけると思うんですけど、そうでない人も、仕事をしていく中で自信とかプライドだったり責任を持っていってほしいと思いますね。当社にも若い者がいますが、受けた仕事をどんどん彼等にもさせています。そうすることで、彼等に自信、責任を持たせられる。その中で面白さを見いだせると思うんです。
--かつてはご自身もそうやって教わって来られたんですよね。
木)そうですね。今は教える立場になってしまいました(笑)。
--最後に、あなたにとってメガネとは?
木)自分も度付きのメガネは掛けます。ファッションの一部でもあり、自分の一部でもあります。