これまでゲンバシュギでは、メガネを作る職人さんに迫ってきた。今回、取材をさせていただいたのは、「メガネを作る機械」を作る職人さん。ご自身のお仕事について、「遊ばせてもらっているだけですよ。」と楽しそうに語る、竹内光学工業株式会社の製造部長・梅田雅夫氏(以下 梅)にお話を伺った。
難しい作業、だからこそ廻りの人に「わからない」と言いまくる。
読み込んだデータに合わせて裁断する機械。コンパクトなのでズラッと並べられる。
--まず、お仕事の内容を教えてください。
梅)製造部長として、メガネの製造管理に携わっていますが、その仕事の合間を縫って、メガネの製造に使う機械を作っています。
--製造の責任者としてお忙しいのに、なぜ市販の機械の他にご自身でも作られるのですか?
梅)市販されている機械は、場所を取ったり、値が張るものが多いんです。メガネは小さな部品がほとんどですから、それを作る機械は、改良次第で充分コンパクトにできます。それに、機械は部品から作れば、かかる費用も10分の1くらいで収まります。
--この様な複雑な機械をどのように作るんですか?
梅)まず、もう一人の社員と二人で機械を設計します。「この部品が要るんじゃないか、こうしたら使いやすいんじゃないか」と図面を描きながら話し合います。それから、部品を集めて作ります。社員が使いやすいように、ソフトウェアを組むこともありますよ。
--お聞きする限り、いとも簡単に作れそうですが、機械を一から設計して作り上げるなんてすごいですね。機械を作る際は、実際に社員さんの声を反映させることもあるんですか?
梅)もちろんです。使ってみて作業しづらかったり、動かしにくい部分を聞き出します。実際に使っている人がすぐ近くにいるので、仕事もしやすいですね。その反面、社員のみんなは「こんなのが欲しい」と言えばすぐに簡単に出来ると思っていますけど。
--作ってみて機械が動かないこともあるのですか?
「遊び場」と語る、梅田氏の作業場所。機械関係の道具や本がズラリ。
梅)よくありますね。だからと言って原因がすぐ分かるわけでもないので大変です。分からないときは廻りの人に「分からない」って言い回ります。そうすると、だんだん自分の中で分からないことが整理されてきて、解決のヒントになったりします。
--機械を作る時に気をつけていることは何ですか。
梅)電源を入れ、コードがショートしてしまうと、一から配線し直しなので、特に配線のチェックは念入りにします。機械が完成してスイッチを入れる瞬間が一番緊張します。あとは、使用する人に怪我をさせない。そして誰もが使える機械を作ることをいつも心掛けています。
運命の出会い。
--もともと機械を作るのは得意だったのですか?
(上)制作中の機械(タッピングマシン)の一部。(下)四軸加工の機械で加工されたメガネ。一つの金属の塊が、一度の加工でこんなに立体的に。
梅)子供の頃からモノをいじったり、作ったりすることが好きだったんだと思います。大学は工学部でした。当時はステレオのアンプ作りに熱中していました。
--こちらの会社に入ったきっかけは?
梅)誰かと結婚するときと一緒です。運命です。知人に紹介して頂いて、とんとんびょうしに決まりました。
--現在、機械を作ることができる従業員さんは、梅田さんを含めお二人ということですが?
梅)はい。早く後継者をつくりたいと思っていますが、なかなかこの仕事を希望される方が少ないのが現状です。こんな仕事もあることをぜひPRしてください。きっとモノづくりが好きは人にとってはワクワクする職場だと思います。
--がんばります(笑)。では、難しそうなお仕事ですが、ズバリ後継者に求めるものは何ですか?
梅)まずは、興味を持ってもらうことですね。私も今でこそソフトウェアを組んだりしていますが、パソコンは入社してから初めて使いました。頭を使ったり、数式を書いたり難しいこともありますが、要は、難しくても興味を持って、やる気と根気があれば大丈夫。最初から苦手意識を持ってしまうことが問題なのです。
--なるほど。難しそうですが、梅田さんはどんどんチャレンジしていらっしゃって楽しそうですね。
梅)メガネ作りは実際面白い仕事ですから、発想豊かな若い人たちにたくさん働いて欲しいです。
--このお仕事の喜びは、どういったところにありますか?
梅)納品した製品を見て、お客様が喜んでくださったときは、やはり嬉しいですね。特に、それが難しい注文で、苦労して作ったとか、それをつくるために機械を一から作った場合などは喜びもひとしおです。
--逆にストレスや苦労はありますか?
梅)もちろん苦労はあります。昼は製造管理をしているので、機械作りの作業はどうしても夜になってしまい、帰りが遅くなりがちです。でも、それをストレスに感じたことはありません。むしろ、機械作りはストレス発散になっています。早く夜になって続きを作りたいといつも思っています。
--今日はありがとうございました。