鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 007 山本和夫(研磨職人)

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メガネの仕上がりで重要な「磨き」。メタルフレームのあの表層の艶と深みのある輝きの秘密は磨きにあった。 しかし、現在のようなキズが無く、艶のあるフレームを作り上げるには、様々な苦労があったという。今回は、磨き一筋40年という(有)山和工業の会長・山本和夫さん(以下 山)にお話を伺った。

人がやらないことに挑戦する

tool01.jpg作業場の様子、バフや研磨剤は、メガネの素材や形によって使い分ける。現在の「磨き」のお仕事をずっとされているのですか?

山)もともとは、眼鏡の会社に10年くらい働いてたんやね。私が20歳の頃、鯖江では、眼鏡産業自体の景気が良くて、仕事の選択肢もそれほどなかったから、眼鏡の会社に入社したんや


-- その後、独立された?

山)そうやね。当時は、磨きは、会社の中の部署の一つにあって、磨き専門という会社がなかったんやね。それで、あまり資本のかからない磨き専門の会社を創業しようと思って、兄弟3人で、今の山和工業を設立したんや。会社は創業してから、もうかれこれ40年になるね。

tool04.jpg研磨後(左)と研磨前(右)。 表層のツヤが全然違う。-- 磨きの工程は、昔と変わっていますか?

山)だいぶ変わったね。今の磨きは、機械では取れないキズや細かい部分をバフで手作業で磨いた後、「ガラ研磨」といって、「バレル研磨機」という機械で艶が出るまで磨くんや。だけど、昔は「バレル研磨機」という機械はなくって、全てバフで磨いてたんやね。多少キズが残っていても、上に施すメッキで何とかごまかせたからね。当時の品質は、その程度で十分やったんやね。

-- 今は、求められるものも高品質なものになってますもんね。

山)そうやね。今はキズ一つ許されんからね。「バレル研磨機」の導入も産地の中でうち(の会社)が一番早かったんや。導入のきっかけは、製鉄所で鉄を磨いているのを見て、「眼鏡に応用出来るんでは」と思ったんや。それで少し改良してやってみると案外うまくいった。「バレル研磨機」が出来てから業界全体の仕事も、メガネの品質もごろっと変わったね。バレルでの研磨でないとチタンフレームのあれだけの艶は出ないよね。

-- 「バレル研磨機」は夜中も回っているのですか?

山)そうそう、24時間フル稼働や(笑)。

tool05.jpg研ぎ出し七宝で装飾したテンプル。-- 七宝のお仕事もされるという事ですが、七宝とはどういうものですか?

山)七宝というのは、メガネフレームに樹脂を用いて色を付けたり、模様や絵を入れることやね。七宝には、「研ぎ出し七宝」と「あげ七宝」の2種類があって、「研ぎ出し七宝」は、装飾したい場所に溶かした樹脂を流して色を付け、その装飾した上から磨いて仕上げる。一方で、「あげ七宝」というのは、最終研磨の終わったフレームに模様を付けて、それで完成するもの。時間がかかる分、強度も強く深みのある色が出るから見た目もきれいで付加価値が高いんやね。

-- 研ぎ出し七宝の磨きをされているということですね?

山)そうやね。研ぎ出し七宝もうちが最初やったんや(笑)。 うちが始めて、かれこれ15~16年になるね。

-- 七宝も始めは大変だったのではないですか?

山)まあ、とにかく全て試行錯誤の連続やったね。七宝は、丸みを持たせた仕上がりを求められる反面、既存の機械を使うとどうしても凹んでしまう。これには、ホント悩んだね。何回やっても上手くいかない。最終的には、違う機械を新しく導入して解決したんや。

要求以上のものをつくる

img01.jpg-- 日々のものづくりの中でこだわっていることは何ですか?

山)他の会社には負けたくないという気持ちでやってるね。それは40年間意識し続けてきたわ。それと、お客さん(取引先)の要求以上のものを仕上げた時には、お客さんも喜んでくれるし、自分も気持ちがいいね。

-- お客さん(取引先)は納期に厳しいですか?

山)納期以上に品質を求められるね。それぞれ他の工程でも技術が上がっているから、我々もそれに対応していかんとあかんからね。

img02.jpg山本会長(写真左)と長男の義之さん(写真右)。親子で技術を継承している。-- 眼鏡業界は後継者不足と言われていますが、後継者の育成はされていますか?

山)うちは息子がやってるからね。もう、この業界で20年くらい働いているから、このまま後継者として継いでもらうつもりやね。

-- 教える時に気を遣っていることはありますか?

山)口で言ってもわかるものではないからね。実際にやってみて手で覚えていくもんやわ。感覚を身につける事やね。

--では、今の若い世代に対してメッセージをお願いします。

山)なかなか眼鏡は厳しいと思うね。最近、国産のメガネがあんまり売れていないからね。若い人はものづくりと違う業界に行きがちやけど、日本は、「ものづくり」が原点でないかと思うで、やっぱりこういったものづくりの仕事には携わって欲しいねえ。ものづくりの楽しさをもっと知って欲しいね。

--最後に、あなたにとってメガネとは?

山)私は、メガネを掛けてるけど、メガネがないと不便やでね。みんなに掛けて欲しいねえ。掛け心地も良くなってるし、色んなデザインが出てるで、メガネを掛けてるとカッコいいと思うんや。

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磨き専門会社の設立、「バレル研磨機」の導入、研ぎ出し七宝の開発。山本氏は、たくさんの苦労を重ねて、これらをゼロから築き上げ、日本の眼鏡業界の進歩に大きな影響を与えてきた。しかし、そのことに驕るわけでもなく、淡々と話し、目の前の仕事に黙々と打ち込む山本氏は、「過去のことはどうでも良い。私は良いメガネを作り続けるだけだ」と言っているようであった。<了>

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山本 和夫 Kazuo Yamamoto
業   種:研磨職人・会長
生年月日: 1936年 9月26日
社   名:有限社 山和工業
電   話:0778-51-5600
1979年創業/従業員数17人