鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

まさにメガネのドクターと呼ばれるにふさわしい。「修理」の注文品であるメガネを一つひとつ検診し、どうやって治療するかを指示していく。壊れたメガネを、培った技術と知識を使い、見事に蘇らせるその技は日本一と言ってもよいだろう。今回は、眼鏡修理会社である有限会社るねっとのドクター(社長)でいらっしゃる大越彰一さんにお話を伺った。

厳しい眼鏡業界、でもなんとかしなくてはいけない。



(上)仕事場を案内していただきながら説明してくださる大越さん。 (下)修理依頼のメガネを仕分け。

--どういった経緯で「修理」を行うようになったのですか?

もともとは父親が会社をやっていて、メガネを製造していました。その当時眼鏡業界は、作れば売れる時代で、景気が非常によかった。私も父親の代から引き継いでメガネをやってきましたが、20年前に製造から修理に転換しました。ずっとメガネ一本でやってきましたが、製造には向いていないと実感したからです。とは言うものの、一通りの技術も機械もある中で、全く違う分野に進むことに抵抗もありましたので、修理ならできるかもしれないと思ったわけです。そこでそれまで取引のあったお客様に「今後は修理をやっていきます!」とお知らせしました。

--「修理」に転換されてどうですか?

現在、日本全国で売れているメガネの8割は中国で作れたものです。景気が悪くなると、お金を使う順序は、食べ物、衣類で、メガネは一番最後になりますよね。冠婚葬祭では、着るものは変えるけれども、メガネは関係ない。仕事も、遊びも、冠婚葬祭でもどんなときでも同じです。こんな状況なので、国産のメガネを買う人が減り、産地は苦戦を強いられているわけです。
そんな中、メガネを一生ものと捉える人も少なくない。直してでも使いたいと思う人も多いです。メガネは身に付けるものだから、つけ慣れているメガネは手放したくないんです。だから修理という仕事は必要なわけです。爆発的に修理品が増えることはなくても、なくなることはないと思っています。

--では新品が売れるのが厳しい中で「修理」に方向転換したことはよかったということですね?

いや、厳しいですよ。特に最近は毎月2割ずつ受注が減ってきていますから。でも、お客様がいる限りはやめるわけにはいきません。

 

 

なんでもやる、修理。

--具体的にどんな修理をするのですか?


お客様の修理依頼のメガネとカルテ。ドクターである大越さんが赤字でメガネの直し方と指示。

修理は壊れたところを直すだけが修理ではないんです。売れなくなった商品の一部分のデザインを変えることや、カタチが古くなったものを今風の流行のカタチにすることも修理の一環。「修理でここまでできる!」ということを提案しています。修理をすることで全く違うものになることも多々ありますね。フロントを変えたり、レンズの玉型を変えて新しくなったメガネを見て、お客さんはビックリしますね。

--今までで印象に残る修理はどんなメガネですか?

車に引かれてぐちゃぐちゃになったメガネや、火事で真っ黒になったメガネもありました。おもしろかったのは、100円ショップで買ったメガネを修理したこともありますよ。(笑)

--購入費より修理費の方が高いというのは面白いですね。では、実際にどういった方法で修理をするのですか?

壊れた商品を検査して、どのように修理するかを処方した後、実際の修理に取りかかります。レーザーでつけたり、ネジ抜きをしたり、とても細かい仕事が多いです。メタルフレームのメッキ剥がしも、手間がかかりますがほとんど自社でやっています。もちろん、メガネ一つひとつが違いますし、壊れ方により直し方も違ってきますので、初めての方法を試みたり、試行錯誤することも多々あります。そういったことを繰り返すことで私の技術力もかなり高まったと思います。

--基本的に依頼された仕事は断らないのですか?

そうですね。できる限り直して差しあげたいと思っています。やりながら最良の方法を考えて実行していきます。
しかし、どうしてもできないことが1千本に2〜3本はありますね。何度も同じメガネを修理して欲しいと持ってくるお客さんもいます。お客さんは前回修理した場所と同じところが壊れたと言われるのですが、修理記録を調べると、前回は右側で今回は左側が壊れているのです。修理依頼のあったメガネは、必ず壊れた箇所、修理方法を記録するので、すぐに分かるわけです。

--すごいですね。本当にメガネのカルテがあるのですね。まさにドクターですね。では、最後に、大越さんにとって「修理」とは?

綺麗に直して、困っているお客様に出来るだけ早くお届けし、喜んでいただく。またどんな困難な修理でも決して諦めず、あらゆる手立てを尽くすということですね。

--ありがとうございました!!

 

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  • 大越彰一 Syoichi Ogoshi
  • 業   種:修理職人ドクター
  • 生年月日:1946年4月24日
  • 社   名: 有限会社るねっと
  •       1980年設立/従業員数 15 人
  • ※社名の「るねっと」はフランス語のLUNETTESからつけられたそうです。社名のロゴも丸みを帯びた親しみやすい文字です。

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