鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

確かな技術に裏付けされた職人が作り出す鯖江のメガネは、その質の高さで常に世界をリードしてきた。そんな鯖江のメガネに憧れ、メガネ職人を志した2人の若者がいる。彼らは、この「鯖江メガネファクトリー」を見たことがきっかけとなり、「マコト眼鏡」に入社し、メガネ職人としてのスタートラインに立つことになった。一心不乱に職人道を歩む彼らの熱い想いと、現実の厳しさと戦いながらも、これからの産地を担う後継者としての夢を追い続ける2人の姿に迫った。

やるならやるしかない。(水田)

ただ「かっこいい」を表現したい。(朝比奈)



セル枠職人(修行中)水田氏(上)、朝比奈氏(下)

--お2人とも鯖江メガネファクトリー(以下SMF)がきっかけでメガネ職人を志したとお聞きしていますが、もともとメガネに興味があったのですか?

水田)もともと、モノをつくるってこと自体に興味がありました。メガネに限らず、色んな工芸品や家具とか。大学で建築を学び、卒業後は、地元大阪の建築関係の会社に入社しました。あるとき、会社の同僚と「メガネと顔立ち」について話が盛り上がり、その時に「メガネって面白い!」「メガネを作りたい」という強い想いが芽生えました。ネットでいろいろなメガネ会社のことを調べていくうちに、メガネファクトリーでここ(マコト眼鏡)に辿り着きました。

朝比奈)僕は、高校の時、おしゃれなメガネのショップに行ったことがきっかけでメガネ好きになりました。そこは、地元静岡のショップで、海外のブランドも置かれていて「かっこいい!」と感じました。もともと中学からメガネをかけるようになって、それからメガネは自分のトレードマークであり、体の一部になっていました。自分に似合う、ただ「かっこいい」メガネを作りたいと思いました。

--実際に入社されるまでどのようなアプローチをされたのですか?

水田)まずは、現場を見たいと思い、工場見学をお願いしました。見て触れて感じて、正式に入社依頼をしましたが、断られました。それでもメガネ職人になりたい気持ちは変わらず、勤めていた建築会社を辞めてしまいました。やるしかない状況、後戻りできない状況に自分を置き、両親も説得し、改めてもう一度、社長に入社をお願いしました。そしてようやく「本気」であることを認めてもらえ、今ここにいます。

朝比奈)僕も2度断られています。(笑)僕は、とにかくメガネが好きだということを伝えました。実は自己表現がすごく苦手で、メガネによって「かっこいい自分になれる」、そんな感じがするんです。メガネをしていないと自分は自分じゃない気がする。それほどメガネに対する想いが大きいです。就職活動の時「好きなことを仕事にしたい」と、メガネ作りの職人を目指し、ここの見学をさせてもらいました。もうここだけの勝負。他の会社は見学にも行かず。だから、社長から考え直すように言われても、僕の気持ちに変わりはなかったですね。

 

 

中間でいなくちゃいけない。(水田)

やっぱりあまくない。(朝比奈)

--お二人の熱意は相当なものですね。お二人とも入社して1年ですが、今は、どんな仕事をされていますか?

水田)「磨き」や「ヤスリがけ」をしています。まだまだ、完璧にはできません。工場長や、先輩、会長に教わりながら修行しています。

朝比奈)「磨き」と「削り出し」をしています。思った以上に難しく、工程のほんの一部分にもかかわらず、ものすごく時間がかかります。

--実際に入社して、仕事を始めてから考え方は変わりましたか?

水田)仕事に関しては、本当にちょっとずつ、全体像が見えてきたという感じです。芸大で、作りたいものを作っていた時とは全然違って、作り手と買い手の中間でいなくちゃいけない。作り手が自己満足するものをただつくるのではなくて、買う側、つまり掛ける人が喜ぶ顔が見えるようなメガネを作らないといけないと思うようになりました。

朝比奈)僕がここ(マコト眼鏡)に惹かれた一番の理由は、自社ブランドの「歩(AYUMI)」です。「歩」の眼鏡フレームを見たとき、これを「作りたい!」と思いました。そして今、「歩」のフレームづくりに実際に携わってます。他のメガネに比べて、作業工程が多く、細かいところまで手間ひまかけて作る「歩」は改めて素晴らしいと感じています。そんなすごい製品が完成するのに、一部分ではあるけど、自分が関われるのが嬉しいです。常に緊張感を持ち、一つひとつ同じに仕上げていく作業なので集中力もついたような気がしますね。

人をちゃんと見れるものづくりがしたい。(水田)

目の前のことを丁寧にする。(朝比奈)

--今後、この道でどういった自分になりたいですか??


水田)買い手の喜ぶモノを作れる、作る側のプロになりたいです。でも、まだ目先の仕事で手一杯で、買い手の人が何を本当に望むのか、求めているのか読みきれないです。人に対して見えている範囲が狭いんです。出来れば、仕事を通じて、人をちゃんと見れる、つまり、ちゃんと理解してあげられる人間になりたい。きっとそういうことがモノをつくる時の細かな部分にでてくると思ってます。


朝比奈)まだ先のことは全然考えられないです。とにかく、目の前のことを丁寧にきちんとやることが目標です。今は、まだまだ未熟者で、時間もかかるし、仕上げの精度についてよく叱られます。なので、まずは一つひとつ技術を身につけていきたい。それから先に挑戦したいことは、デザインですね。「かっこいい」メガネを自分でデザインして、つくることができたら嬉しいです。

--では、このメガネ業界に対して何か思うことは?

水田)メガネをかけることによって、表情が変わり、自信を持てるようになる人がいます。メガネには人の内面を変えられる可能性があると思います。鯖江は確かにすごい職人さんがたくさんいて技術力はすごい。でも、これからは小売屋さんの売り手の視点、お客様の買い手の視点も持ち合わせることが大切だと思います。それらを総合させたメガネ作りをして、メガネの持つ可能性を発信していけば、もっと鯖江産の製品が注目されるようになると思います。


朝比奈)僕たちのような県外出身者は、メガネが本当に好きで鯖江に来ています。でも、地元の人はそこにメガネがあるからやっているっていう感じ。この温度差が少し残念な気がします。

--最後にメガネと自分の関係を一言。

 

水田)「育てるもの」

朝比奈)「自分をかっこよくみせる武器」

--ありがとうございました。

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  • 水田晴 Mizuta Haru
  • 業   種:セル枠作り職人(修行中)
  • 生年月日:1983年9月6日
  • 社   名: 株式会社マコト眼鏡
  •        1970年創業/従業員数 15 人
  • ホームページ: http://ayumi-brand.co.jp/
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  • 朝比奈武志 Asahina Takeshi
  • 業   種:セル枠作り職人(修行中)
  • 生年月日:1986年1月29日
  • 社   名: 株式会社マコト眼鏡
  •        1970年創業/従業員数 15 人
  • ホームページ: http://ayumi-brand.co.jp/

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