鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 043 増永幸三郎(仕上げ職人)

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増幸光学はナイロールタイプのフレーム(レンズの縁に溝を掘り、ナイロン糸などで固定する形式のフレーム)にレンズを入れる仕上げ作業を行っています。社長であり、職人である増永幸三郎さんは、なんと前回ゲンバシュギで取材をさせて頂いた早川善徳さんのお師匠様として公私ともに繋がりがあるそう。今回は増永さんに職人としてのお話だけでなく、生きていくうえでの様々な心構えを伺いました。私自身、背筋がピッと正されるような取材となりました。

仕事を続けるためにはモノの考え方を正しくすること。

img1.jpg増永幸三郎氏--本日はよろしくお願いします!
今日とにかく言いたいのはね、この村(福井市・生野町)が鯖江メガネ発祥の地だってことなんですよ。

--そうなんですか?初めて知りました。
増永眼鏡株式会社ってあるでしょ?その創業者の増永五左エ門さんが、この村でメガネ作りの仕事を始めたんです。福井は農業が中心だったから、冬は収入源がなかったんだよね。そこで、増永五左エ門さんが自分の私財を投げ売って、東京や大阪のメガネ職人さんをここに呼んでメガネの作り方を教わったのが始まりなんですよ。

--なるほど。そんな歴史があったんですね。
今のメガネに携わる人の中にも、このことを知らない人は多いですよ。仕事ができるって言う感謝の気持ちを持って欲しいですね。

--増永眼鏡さんは、五左エ門さんの意志を受け継いで、育った職人はのれん分けして独立させていますよね。
そうなんです。そのやり方のおかげでどんどん職人が独立して自分の会社を興しここまでの集積地になったんです。実は今の増永眼鏡の社長とは幼なじみなんだけど、あんなに5代6代と続く会社はそうないですよ。やっぱり、モノの考え方が正しくないとあんなに続きません。自分のことだけ考えていてはいけないんですね。

--頭では分かっていてもなかなか出来ないですよね。
出来るかどうかではなく実行するかどうかですよ。それで、私も人のために働きたいといつも考えるようにしています。ちょっと前置きが長くなったけど、メガネに携わる人には、こういう歴史があり、一人の熱い思いの人のお陰で今があるということに感謝の心を忘れないでほしいと常に思っていたので、ちょうど良い機会なのでこの場を借りて話させてもらいました。

感謝の気持ち。

--増永さんはメガネ業界歴はどのくらいになるんですか?
40年近くになるね。

--メガネ業界に入ったきっかけを教えてください。
父親が増永眼鏡の工場長だったんです。それで独立して、私はそれを継ぎました。

--ではメガネについてはお父様から教わったんですか?
いや、父は高校に行かせてくれなくてね、家を飛び出してメガネ屋に丁稚奉公(でっちぼうこう)に行ったんです。静岡から東京までの間を眼鏡を売って回る仕事だったんだけど、売れなくて苦労したね。

--中学を卒業して、丁稚奉公ですか!すごい…。
この丁稚奉公でいろんな人にお世話になって、感謝する心を教わりました。メガネの勉強だけでなく人生の勉強ができたんですね。辛かったけどその後の人生を決める大切なことをたくさん教わりました。丁稚奉公のあと、福井へ帰ってきてメーカーで修行して、最終的に親父の会社を継ぐことになりました。

all.jpgレンズ入れの際に使う道具は増永社長の手作り。

img6.jpgパソコンで作業中なのは、工場長の井上治さんです。--増永さんは普段どんなお仕事をしていますか?
レンズを入れる仕上げの工程をしています。フレームの溝にナイロン糸を通し、レンズを固定をするんです。このやり方をナイロールと言います。うちはナイロールが日本で出始めた頃から、ずっとこの仕事をしています。

--細かい作業ですね。1日にどのくらいのメガネを仕上げるんですか?
500枚のときもあれば、難しいメガネだと50枚のときもあるね。

img8.jpg--難しいメガネとはどういうメガネなんでしょう?
実は2種類の糸を使って仕上げているのですが、リムの部分にはダルマ型の糸を使って、リムの溝とレンズの溝にはめ込みます。最近のメガネは素材がチタンだから、熱をかけると溝がほんの少し変形したりするんだけど、それで糸が入らなくなるんです。繊細な作業ですよ。レンズを保持する糸は丸い糸を使っています。丁番と鼻パッドの近くに小さい穴が2つ開いているでしょう?片方の穴から通してもう一方から出して固定します。だけどメガネの形が変わっていて、穴が丁番の後ろなど難しい位置にあって糸が入りづらいものがありますね。

img10.jpg--なるほど。糸を通してからレンズをはめるんですね?
そうです。レンズは最後です。レンズがきっちり収まる大きさで糸を固定して、そこにレンズをはめ込んでいきます。最初は糸をレンズにピッタリ合う長さにするのが難しかった。今はどんな大きさのレンズにでも一瞬で糸の長さがピタリと合う簡単な方法を見つけました。

img5.jpg釣り糸メーカーと一緒に考えたナイロール。--なるほど。糸を通してからレンズをはめるんですね?
そうです。レンズは最後です。レンズがきっちり収まる大きさで糸を固定して、そこにレンズをはめ込んでいきます。最初は糸をレンズにピッタリ合う長さにするのが難しかった。今はどんな大きさのレンズにでも一瞬で糸の長さがピタリと合う簡単な方法を見つけました。

--増幸光学オリジナルですか。すごいですね。
実は私の趣味が釣りで、その釣り糸メーカーとは繋がりがあったんです。そんなご縁があって、お願いしてみたら引き受けてくれました。今のところ、糸が切れたり、緩みやすいなんて言うクレームは一切ないですね。むしろ「どこの糸を使ってる?」ってよく聞かれので、そのときは教えます。

--教えちゃうんですか?
いいメガネが沢山世に出て欲しいからね。それにお世話になっているその釣り糸メーカーさんに貢献出来ればいいなと思って。

--増永さんのお人柄が表れていますね。
儲からなくても、人様の為になったり喜んでもらえればいいと思います。メガネで今まで生活させて頂いてきたから、その恩返しがしたいんです。実は息子は眼鏡会社に勤めているんだけど、メガネの廃材で何か作れないかと、シャンデリアや耳かきを家に帰ってから作っています。廃材を捨てるのは勿体無いからね。フレームやテンプルの型を抜いた後のシートは模様がすごくきれいなんですよ。材質もチタンだから軽くて錆びないしね。お陰さまで、シャンデリアは小売店さんや洋服屋さんなどからお店の照明にしたいと注文が入ってくるようになりました。
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s-img11.jpg s-img12.jpg息子さんの作るスタイリッシュなシャンデリアは人気商品です。
--メガネの材料って半分以上捨ててしまうものもありますよね。
お世話になっているメガネだからクズも簡単に捨てるわけにはいかないと思って息子に相談したら、いろいろアイデアを練ってくれてね。もともとものづくりが好きだから、楽しみながらコツコツ作ってるようです。自分が息子くらいの歳にはやりたいことが出来る環境でなかったので、やりたいと思うことはなんでもやってみろと後押ししています。今の若い人にはいろいろなことにチャレンジして、楽しみながらメガネ業界を盛り上げていって欲しいね

--今日はどうもありがとうございました!

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増永幸三郎 Kouzaburo MASUNAGA
増幸光学 社長/仕上げ職人
生年月日: 1946年10月25日

社名: 増幸光学
1940年創業/従業員数4人
福井市生野町20-9