鯖江メガネファクトリー

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HOME > ゲンバシュギ > 002 漆崎博(ロウ付け職人)

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眼鏡製造にまつわる様々な工程を経験し、現在は、ロウ付け職人として活躍する漆崎博氏(以下 漆)。37歳と職人としては若手に入る漆崎さんに今回はロウ付けの技術やこだわりについてお聞きしました。

自ら試行錯誤することで、独自のロウ付け技術を確立。

まず、メガネ業界に入ったきっかけを教えてください。

漆)福井を出るつもりはなかったので福井で働くなら仮に就職した会社が無くなっても容易に再就職可能な地場産業のメガネか繊維かなと思っていました。それで、高校卒業と同時に眼鏡企業に就職したというわけです。

-- 初めからロウ付けをされていたのですか?

漆)いえ、最初は眼鏡の仕上げ加工、その後、七宝加工(樹脂による装飾加工)にプレス加工(プレスによる部品加工)と一通りの工程を経験しました。その後、ロウ付け作業に携わり、現在に至っています。

img01.jpg-- 色んな工程を経験された中でロウ付けの職人に行き着いたのは?

漆)部品と部品をくっつける作業が面白かったからですね。自分の性に合ったんでしょうねー。

-- それから何年になるのですか?

漆)12年です。初めは、先輩の職人から一通りのやり方を教えてもらいました。「こうやってやりね(やりなさい)。ここはこうしね(こうしなさい)。」と。だけど、半年でその人がその会社を退社していなくなってしまったんです。通常であれば、一から十まで教えてもらえるはずが。

-- 半年ですか?

漆)そう、あとはお前らに任すって言われて、何をどうしていいかすら分からず、やりながら、経験の浅い同僚と相談しながら手探り状態でやってました。作業に行き詰まって、他のロウ付け屋さんに教えてもらいに行ったこともありました。その場では、なるほどと分かって帰ってきたものの、実際に自分でやってみると上手くいかなくて。結局自分達で試行錯誤しながらやることになりました(笑)。今となっては笑い話ですけどね。 ロウ付けって、なかなか思った通りにならないんですよ。こういう風に付けたいと思っても思うようにならない。頭で考えてイメージしてから作ってみてアカンかったらまた作ってみて。試行錯誤の連続です。 そのお陰で我流ながらもロウ付けの技術を身に付けることができました。他の人に「そのやり方違うざ(違うよ)。」と言われても、出来た物を見せれば「ほら、出来てるぞ」と言えますから。
tool05.jpg蝶盤を付ける前(下)と付けた後。本当に小さい部品も傷一つ付けずにくっ付けてしまう。-- お仕事をしている際にこだわられていることや意識している事はありますか?

漆)そうですね、他の職人には絶対に負けたくないという気持ちを持っています。人が出来ないと言った物を付けられた時に満足感があります。「他の職人では出来なかった」とお客さんから聞いた時には、喜びもひとしおです。

-- 人が付けられないと言うのは?

漆)単に付けるだけなら簡単です。いかに製品に傷を付けずに、ロウ材をはみ出さないで、見た目に綺麗にロウ付けできるかといったところに職人の腕が問われるのです。

-- では、これだけは負けないというものはありますか?
漆)ツメ(治具)をつくる早さと技術ですかね。ツメは、ロウ付け職人自らが部品の形状に合わせ銅板を削って作ります。このツメが上手く作れると部品に傷をつけずに綺麗なロウ付けが出来るんです。

tool01.jpgメガネのモデル毎に、銅板(写真左)を削り、ツメ(ロウ付けをする部品を固定する冶具:写真右)を手作りする。「このツメをいかに高い精度で作れるかが職人の一番の腕の見せ所」と漆崎さんは言う。
-- 次世代に向けてメッセージをお願いします。

漆)人の思うようになったらアカン。人の言うことばかりを聞いているのではなく、自分の思ったようにやればいい。途中経過よりも出来上がったモノがよければそれそれで良い。結果が全てなんです。

-- 最後に、あなたにとってメガネとは?
漆)難しいねえ。メガネとは・・・何やろ、自己満足と生きていくための手段。 出来たものがいいと満足するし、それが仕事に繋がっていくでね。そらアカンと思った事は何回もありましたよ。現実逃避するときも。でもやっぱりロウ付けが好きやし、好きじゃなくなっときが終わりやろうな。妥協しないで何とかやってきたから、今こうやって言えるんやね。

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男と女以外はすべて付けていきたい

昭和60年に創業し、約25年間ロウ付けにこだわってきたこの会社「㈲鑞付屋」2代目となる加藤順一社長(以下 加)はこう語る。

加)メガネ業界っていうのは、一般的に技術は会社が身に付けているものと考える経営者が多いんだけれども、正確には、、その会社には技術がなく、そこで働く職人さん個人が技術を持っている。だから「ここの部品はこうするんだよ」というマニュアルのようなものを、会社は持っていなくて、それらのノウハウは、全て職人さんが持っている。結局職人さんが自分でやってみて理屈がわからないとうまくいかないということなんですね。

-- ということは、会社の指標は職人の技術の指標とイコールになるということですか?


加)そうですね、限りなくイコールに近いです。

-- そうすると会社には職人さんを育てるという役割があると思うんですけど。
加)そうです、だから会社は、職人さんが働きやすい環境やシステムをつくることが大事です。それにはいろんな弊害が出てきます。ただ良い道具や場所を用意するだけではダメです。職人さん個々の特性を知り、その人の能力を伸ばす事はもちろんのこと、難しい製品が上手くロウ付けできた時や得意先の要望にこたえられたときに、会社全体として純粋に心から喜べるような風土作りをすることが大切なんです。我々の仕事は、どんに(どんなに)立派なロウ付けをしても、商品ではなく製品の一部としての評価しかもらえない。メガネにはならない。本当に光の当たらない仕事なんです。ただこれからはメガネ以外でも何でもくっ付けていきたいと思っています。男と女以外すべて付けて行きたい(笑)。ロウ付けというものを広く世に広めて行きたいですね。そういう思いは彼(漆崎氏)が一番熱いんじゃないかな。

漆)私もそういうこと(眼鏡以外のものへのロウ付け)は、ずっと前からやっていきたいと思っていたんですよ。これからは、メガネはもとよりメガネとは全く違うものでもどんどん付けて行きたいです。


職人漆崎氏の「付ける」ことへのこだわりと加藤社長の職人への愛情が良い製品づくりへと繋がる。私たちが何気なく掛けているメガネにも多くのドラマが潜んでいるのである。 <了>

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漆崎 博 Hiroshi Urushizaki
業   種:ロウ付け職人(チタン)
生年月日: 1970年 2月27日
社   名:有限会社 鑞付屋
H    P: http://rouzukeya.jp/
1985年創業/従業員数 9人