鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

メガネには、蝶番やネジなどの細かく精密さが求められる部品が使われる。小さな小さな部品だが、メガネにとっては、なくてはならない重要なものだ。今回は、そうした部品を製造している、精密金属部品メーカー、(株)若吉製作所の木村雅喜氏(以下 木)に、お話を伺った。

地元のあたたかさ

見失ってしまいそうな小さな部品を1円玉と比較。こんなに小さいがメガネにおいて重要な役割を果たすものだ。

--まず、メガネ業界に入ったきっかけを教えてください。

木)以前は県外でコンピューター関係の会社に勤めていたんですが、地元で働きたいという思いがあって、23才の時に知人の紹介でこの会社に入りました。前の会社では、金融のシステムなどをつくっていて、紙や図面という平面的な形でしか出来上がってこないんですよね。それに対し、このメガネ業界は、立体的なモノが出来上がってくるという、おもしろさがありましたね。もともと細かいことをするのが好きだったこともあります。

--それまでとは違う、新しい職に就かれたということですよね。どんなことに苦労されましたか?

木)設計図が読めるようになるまでが、苦労しましたね。最初の頃は、失敗も多かったんですが、お客様の大半が鯖江の方で、色々とアドバイスをしてくださるんですよ。こういう場合はこうした方がいい、とか(笑)。本当ならこっちが接待するはずが、逆に接待されたりすることもあります(笑)。地元ならではのあたたかさを感じましたね。県内で仕事をするのが自分に合っていたんだと思います。

--御社の社員の方たちは、仕事に関する資格を入社されてから色々ととられているということでしたが…。

木)うーん、資格よりもやる気、本人の努力が大事だと思います。資格はあくまで基準なのであって、実際の能力をつけられるかどうかが大事ですね。


「もうちょっと」の世界

--このお仕事をされるうえで、こだわりはありますか?

木)そうですね…、お客様からこういう部品を作ってという図面が来るんですが、その図面の内容とお客様の要望が少し違うことがあります。本当にお客様が望んでいる加工をするために、そのくい違いをどう解決し、詰めていくかというところです。同じ図面でも、例えばA社とB社では好みが違います。「ここをもうちょっと…」という要望を、反映できるようにしています。

--これだけは負けないというものは?

木)今はCADなどのソフトを使って3次元モデルも作れますが、それだけでモノを表現できるかっていうと、そうではない。図面上で表現できないこともあると思うんです。だからさっきもお話したように、ここをもう少し、手を動かしながらもう少しというように、お客様の希望に沿っていくということです。
これは製品だけではなく、製品をつくる機械にもいえることなんです。この会社では、製品を加工する機械を自社で作っているんですが、今まで勤めてきた方たちが考えてきたものを受けついで、自分たちが使いやすいように、またコストの面なども考えて、改良してきています。もうちょっとこうだったらいいのにということをどんどんしていきますね。

--ものづくりの喜びって、何でしょう?

木)皆さんのように、作る現場を知らない方が、製品を見て驚いてくれたときや「へえー、こんなのができるんや」と、興味を持ってもらえた時が本当に嬉しいですね。なかなか見せる機会がなくて…。ゴミじゃないですよって(笑)。(一番小さい製品は直径0.8mmとか…!)あとは、お客様も不可能だと思っていたことをできた時ですね。こちら側の技術でカバーできることはします。お客様の希望に応えられることが喜びですね。そのためにも、お客様の喜びとか怒りとかの声を現場に持ってくることが重要だと考えてます。

--次世代へのメッセージをお願いします。

木)好きなことをがんばってやってほしいです。好きなことだからがんばれるんですよね。例えば、自分で細かい仕事が好きだとか…。その方向に向かってやっていきたいという意思がはっきりしている人たちが、何年後かに出てくるんだと思います。

--最後に、あなたにとってメガネとは?

木)仕事をしている人にとって、細かいモノをつくるという力量を試せるもののひとつです。自分勝手ではもちろんいけませんが、チャレンジできる場ですね。

 
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  • 木村 雅喜 Masayoshi KIMURA 
  • 業   種: 精密部品加工職人
  • 生年月日:  1970年11月9日
  • 社   名: 株式会社 若吉製作所
  •        1942年創業/従業員数40人
  • ホームページ: http://www.wakayoshi.jp/

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