posted:2013.03.04
掛けるのが楽しくなる老眼鏡が鯖江に誕生しました。その名も「PAPER GLASS / ペーパーグラス」。開発したのはチタン加工・精密部品加工を専門とする西村金属。ペーパーグラスは名前の通り、厚さ2mmの紙のように薄い老眼鏡です。しかし、ただ薄いだけではありません。掛けやすさやフォルムを計算し尽くし、機能性はもちろん、デザイン性も備わっています。仕方なく掛けていた老眼鏡から掛けたくなる老眼鏡へ。
今回のメガネザンマイでは、ペーパーグラスの開発ストーリーに迫りました。
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--金属加工専門メーカーである御社が、老眼鏡を開発するようになったきっかけを教えてください。
メガネデザイナーの澤田雅広さんが、老眼鏡のアイデアを弊社に持ち込まれたのがきっかけです。コンセプトは「収納しやすく、機能的で美しい老眼鏡」。折りたたむとフラットかつコンパクトになり、開くとテンプルはダイナミックな曲線を描き、 無理なく顔にフィットし、レンズ部は鼻先に収まり本を読む視線に位置するというものでした。実は今までも持ち運びしやすい老眼鏡は既にあったのですが、デザインや機能性を求めるあまり、掛け心地がよくないものも多かった。それならばデザインと機能性を保ちつつ、掛け心地も両立する老眼鏡を開発しようということで、一緒に商品開発をすることになりました。
--構造上の制約がある中、理想の老眼鏡を開発するのは、大変だったのではないですか?
デザインもさることながら、技術的な課題を解決するのが難しかったですね。眼鏡を上から見るとわかりやすいんですが、 ブリッジ、鼻パッド、丁番、テンプルやモダンなど、メガネには意外と突起物が多いんですよね。 そこで取り掛かったのが、突起物を減らすことでした。まず鼻パッドをなくし、リムとリムの間に「いち山タイプ」というブリッジを採用し、直接鼻にのせるデザインにしました。メガネであれば鼻パッドは必要ですが、老眼鏡は鼻にかける位置がメガネに比べて、少し下あたりなので、薄さと掛け心地が両立できるのです。
--なるほど、このブリッジは老眼鏡だからこそ実現できたのですね。確かに掛けやすい。では、一番出っ張っているテンプルはどう収められたのですか?
テンプルもそうですが、最大の難関は、リム(レンズの周りを囲む縁)とテンプルをつなぐ役割である「ヨロイと丁番」の収め方でした。従来の折り畳める老眼鏡は、真っ直ぐなラインのテンプルなのでコンパクトに折り畳めますが、その反面、開いたときに顔にフィットせず、掛け心地がよくないという問題点がありました。ペーパーグラスは「デザインと機能のために掛け心地を犠牲にしない」という強い信念があったので、開発メンバーは試行錯誤を繰り返しました。そうした中、一つのアイデアが浮上しました。それはリムに対してヨロイと丁番を斜めにつけるというもの。そうすることでテンプルを閉じるとコンパクトに収まり、開くとフロント部に前傾斜が付いて顔にフィットするカーブを描けるというのではないかというアイデアです。これならば掛け心地も実現できますし、物理的にも計算ができたのですが、ここで問題となったのがヨロイと丁番の接着精度。少しでも接着がズレてしまうとテンプルが収まらなくなるので、1/100mmレベルの精度が必要でした。通常そこまでの精度が求められるメガネはほとんどないのですが、弊社は眼鏡用極小ネジ、丁番の金属加工からスタートした会社なので、絶対成功させてやるという気持ちで試作を重ねた結果、ヨロイと丁番の設置角度の特許を取得。ついに「デザイン・機能・掛け心地」が実現し、厚さ2mmの薄さが実現しました。
--すごい!ペーパーグラスの薄さの秘密はヨロイと丁番の角度にあったのですね。
そうですね。目立たない地味な場所ですが、小さくて多機能。ペーパーグラスの全ては「ヨロイと丁番」に隠されているのです。ある意味でこのペーパーグラスは精密部品加工のノウハウがあったからこそ生まれたのかもしれません。