オーソドックスながら存在感のあるしっかりとしたデザインが特徴の、山元眼鏡商会の「元(げん)」は、国内外で高い評価を受けるメガネブランドです。iOFTでも、よく名前を耳にするブランドながら、それを生み出す会社はなぜかブロック崩し(使用可能)が机代わりになっているアットホームな雰囲気でした。「元」のブランドコンセプトやこだわりについて上海の展示会から帰国したばかりの、企画デザイン担当・山元敏孝氏にお話を伺いました!
昔のメガネに学ぶ
--貴社ではメガネのデザインをされているんですよね?
山元敏孝氏はい。もともとはメガネの問屋だったのですが、ちょうど10年前からメガネの企画デザインを行っています。
-- それが、この「元」というブランドのメガネなんですね。「元」というブランド名はご自身のお名前から取ったものなんですか?
そうですね。元という文字は、マークのようで外国の方にも受け入れられやすいですし、この文字には"基本"という意味が込められていて、それがこのブランドの世界観にあっていたんです。
-- どのような世界観ですか?
「元」はクラシカルなデザインが特徴的なのですが、そういった昔のメガネに漂う存在感が好きで、それを再現したいという想いでデザインをしています。昔から使われているものって、新しいものには出せない雰囲気があるじゃないですか。技術面でも、昔の作り方を取り入れたり、手ぬぐいを使い、日本をイメージしたメガネも作っています。
こちらは、テンプルに押し花を埋め込んだデザインの眼鏡。
-- 手ぬぐいのメガネは、テンプル部分に手ぬぐいが使われているんですね。
アセテート樹脂の間に手ぬぐいを挟んで、形にカットし磨いて仕上げています。これがなかなか難しくて、手ぬぐいの生地を貼る時にシワになったり、気泡が入ったりするんです。貼り合わせた後も反ったり加工がしづらいのですが、接着剤などを改善して今のようなメガネを作ることに成功しています。
-- 大変な技術がいるんですね。でも出来上がったメガネは手ぬぐいの風合いがあって良いですね。
アセテートだけで作った柄では出ない風合いがありますよね。この技術を活かせば、レース生地や着物生地など、ほとんど何でも挟んでメガネに出来ます。
-- 貴社では木のメガネも作られているんですね。
はい。ただ伐採したばかりの木を使うのではなく、「実績のある木」を使ったメガネを作っています。例えば、築200年の木造家屋の梁を使ったメガネですね。家を長年支える木ですから、質の良い木ですし、完全に乾燥しているので反りや割れが無いのも特徴ですね。これと同じように、折れた野球バットや使い込んだ机など、思い出のある木を持ち込んで頂ければそれでメガネを作るオーダーメイドもしています。
-- -- それは面白いですね。
-- 「元」のメガネは全部で何型ほどあるのでしょうか?
この10年で作ったメガネは60型ほどになります。
-- メガネ作りにおいても昔の作り方を取り入れていらっしゃるということですが、どういった部分に表われていますか?
まず「カシメ」ですね。フロントとテンプルのつなぎ目の近くにある金属のアクセントがカシメです。これは単なる飾りではなく、蝶番をフロントとテンプルに打ち付ける役目をしています。最近ではコマとテンプルの芯をロー付けしてしまう作りのものが多いのですが、このカシメだとロー付けしている訳ではないので、コマが壊れても蝶番の修理が出来るんです。
-- なるほど。長く使えるんですね。
サンプラチナ合金で作られたクラシカルなメタルフレーム。
昔のメガネは壊れても直しやすいようにちゃんと工夫されているんですよ。他にも、うちではメタルのメガネも少し作っているんですが、その素材は最近のチタンなどではなく、昔のメタルに使われていた「サンプラチナ合金」というものを使っています。重さはチタンに比べて少し重いですが、とにかく壊れにくいんです。それに錆びないし、加工もしやすいので今でも十分使える素材です。
-- 昔のメガネ作りには学ぶべき所が沢山ありますね。
いいモノを作り続けてくれた先人に感謝ですね。海外では「Made in Japan」はとても付加価値のあるブランドなんです。そういうブランドを創り上げてくれたのは、先輩たちのおかげですね。
名脇役を作る
わずか約4gの軽さ--山元さんが1番お気に入りのメガネはありますか?
-- 今私が掛けているのは、男前なデザインになったな、と気に入っています。デザインで思い描いた通りにメガネが出来上がるということはなかなかないのですが、それでもたまに想像以上のものが出来上がった時は枕元において一緒に寝たいくらい嬉しいですね(笑)。ちなみにこの男前フレームは、掛けると必ず数段男が上がります!!
-- メガネを作る職人さんたちは、山元さんが探し出して注文をしている方々なんですか?
そうですね。このブランドを立ち上げた時に、色々な所にあたって、相性のいい職人さんに作って頂いています。相性っていうのは、こちらが漠然とイメージを伝えて、それも汲み取ってくれるような関係ですね。
-- 山元さんがメガネをデザインする上で心がけている事は?
流行や売れ筋には左右されないことですね。あと、メガネが主張しすぎるようなデザインはしないこと。掛けることで自分自身が引き立つような名脇役を作るのがテーマです。
-- 最後に山元さんの今後の夢を教えてください。
もっとグローバルに、世界を相手にしたいですね。
-- 本日はありがとうございました。
山元眼鏡商会
福井県福井市豊島2−7−19
TEL. 0776-22-0105
WEB. http://www.yamamotogankyou.com/