今回のメガネザンマイは、鯖江市に会社を構えるジョイントオプチカルをレポートします。ジョイントオプチカルでは、メガネ小売店向けだけでなくデパートを市場に、メガネのデザイン企画・販売をしています。その中でも一際目を引くのがべっ甲で作られたメガネ。艶やかなイメージのべっ甲メガネですが、ただ素材の良さをアピールするだけではなく、そこには掛けやすいデザイン・機能性と、地場産業の盛んな鯖江への想いが込められていました。ジョイントオプチカル社長の石黒憲氏(以下:社)、企画部長の石黒達也氏(以下:達)にお話を伺いました。
技術力の集合体!べっ甲メガネ。

一見べっ甲とは思えない、ツヤッとした黒いテンプルとカジュアルなデザイン。今では、べっ甲にコーティングをする加工が出来るため、長年使い続けても劣化しにくいとのこと。
-- こちらではどのようなメガネのデザインをされているんですか?
社)高級デパートから一般向けのメガネ小売店まで、国内の様々な市場に向けたオリジナルメガネフレームのデザインをしています。
-- なるほど。デパートに向けて販売しているのがこの「Grail Works」というブランドですね。
達)これはべっ甲で作られたメガネなんです。テンプルと鼻パッドの部分がべっ甲で出来ているんです。
-- これ、べっ甲なんですね!べっ甲らしくないというか、カジュアルなデザインですね。
社)皆さんがイメージするべっ甲は、もっと薄い飴色のものだと思います。確かにその方がべっ甲らしい印象なんですが、ちょっと古臭い感じがするんですよね。
達)濃い色のべっ甲と、アクセントになる鮮やかなメタルフレームを組み合わせることで、カジュアルで掛けやすいメガネになっています。
-- 鼻パッドにもべっ甲が使われているんですね。
達)べっ甲はタンパク質で出来ているので、肌に近い性質なんですね。だからとても肌にやさしいんですよ。掛けてみてください。

こちらはべっ甲で作られたオペラグラス。所々に金やダイヤ、蒔絵が施され、なんとお値段150万円!年に1回は売り上げがあるというから驚きです。
-- 確かに肌になじむ感じがします。しかも軽い!
社)そう。軽いから他の高級な素材に比べて、メガネに向いているんですね。今はべっ甲の加工の幅も拡がって、いかにもという感じのしない、「べっ甲らしくないべっ甲メガネ」を作ることが出来ます。だから今べっ甲のメガネは追い風なんですよ。
-- なるほど。べっ甲メガネはデパートのみでの販売ということですが、どのような層をターゲットにされているんですか?
達)やはり高級で質のいいものを求める50代、60代の方ですね。「Grail Works」はカジュアルでカラーリングも明るいので特に女性に人気がありますね。
-- べっ甲の加工は難しいんですか?
「Grail Works」のメガネケースは、鯖江河和田の漆と京都の西陣織が施されています。まさに鯖江そして日本の技術力の集合体!
達)まず、べっ甲を加工できるようにシート状にするまでに、実は1か月かかるんです。
社)加工は愛媛県の専門の職人さんにお願いしています。平均30歳の若手職人さんたちですが、べっ甲加工に関しては日本一の腕を持っていますよ。フロントのフレームはもちろん鯖江です。
-- それぞれの技術が集結しているという感じですね。
社)「Grail Works」は究極の技という意味なんです。やはり日本のメガネは、質のいいものを作ることが一番大切なことだと思います。うちのメガネは「Grail Works」も「Rim rock」も10年以上の定番商品なんです。それは、掛けやすいシンプルなデザインと質・機能の良さ=職人の技術力のおかげですね。鯖江には技術力のもととなる地場産業が盛んですよね。「Grail Works」を通して鯖江の技術をコラボレーションして発信していきたいですね。
-- では、「Rim rock」はどういうメガネなんでしょうか?
達)こちらは一般のユーザーの方に向けたメガネブランドです。「Grail Works」よりカラー展開の幅も広くて(10色展開)、なにより掛け心地にこだわっているんです。一度掛けてみてください。
-- 掛けやすい!メガネがずれないですね。
「Rim rock」は、シンプルで使いやすいデザインと抜群の掛け心地がポイント。
社)もともとはメガネがずり落ちている姿を見るのが嫌で作り始めたブランドなんです。日本人が感じる掛けやすさを追求したメガネになっています。
--デザインに関しては息子さんの達也さんがなさっているんですか?
達)そうですね。長年続く定番ブランドなので、大きなデザインの変化はありませんが、お客様の声を聞いてマイナーチェンジをすることもあります。
--高級デパート向けの「Grail Works」とメガネ小売店向けの「Rim rock」。それぞれデザインもターゲットもベクトルの違うメガネですが、2つのブランドに共通するジョイントオプチカルならではのオリジナリティはありますか?
社)やはり掛けやすさとファッション性、そしてカジュアルというキーワードですね。掛けて若く見えるかわいく見えるメガネというところでしょうか。
こちらは越前和紙にプリントされたブランドロゴ。「Grail Works」は東京を中心にしたデパート、「Rim rock」は西日本〜九州、四国のメガネ小売店で扱われています。
メーカーも小売店も変化を。
--質のいいものを作ることが大切をいうことですが、「Grail Works」は特に目利きのお客さんが多いデパートでの販売ということで、苦労することもありますか?
社)「Grail Works」のメガネをデパートに置かせてもらう時に「べっ甲らしくない」ということで反発がありました。カラーリングに関しても、初めはこのアクセントのカラーが「売れるかなぁ」と、不評の声もありました。最終的にはデパートのカラーコーディネーターの方の推薦もあって、結果的によく売れましたが、販売する側は確実に売れるモノを売りたいからあまりリスクを負いたくないということが分かったんです。そこを私たちが、こうやって結果を出して小売店の姿勢を変えていければと思いますね。時代はどんどん様変わりしているわけだから、デザイナーはもちろん、メーカーも小売店も既存のものにこだわることなく常にアンテナを高く、時代の流れを見ていかないとダメだと思いますね。
-- なるほど。メーカーもですか。
社)そうですね。どんなにこちらが頑張っても、図面にも数値にも出し切れない部分があるんですね。そういうところに、メーカーさんが長年培った手クセのようなものが出るんです。だからデザイナーが違っても同じメーカーさんにお願いしていたら、ぱっと見て「このメーカーの仕事だ」ってわかるんですよ。それがデザインのコンセプトに合っていればいいんですが、そうでないときは軌道修正してもらうようにメーカーさんと話し合いをします。「うちは今までこうやって来たから」というメーカーさんの想いも汲み取りながら、新しいデザインを生み出すために説得しますね。
-- いいものを作り続けるには変化することも大切なんですね。
社)今は中国のメガネが日本では人気があって、日本でいいものを作り続けるのが難しい時代ですよね。いいものはどうしても値が張ってしまう。いいものを作って売るよりも安いものを作って売れるなら、つい手抜きをしたくなってしまうところですが、うちは幸いにもいいものを作ってくれるメーカーさんと、いいものを作れば売ってくれる小売店の皆さんがいるので、手抜きをしなくていいんです。そんな質のいい小売店さんとメーカーさんがどんどん増えて、いつか若い人がいいものを欲しいと思った時、期待を裏切らない、いいメガネがたくさん売っていると良いですよね。
石黒 憲社長(写真左)と息子さんの石黒 達也企画部長(写真右)。ちなみに社長の奥様は会計、娘さんは名古屋からカタログやポップの制作をお手伝いしているそう。家族4人5脚ですね!
--社長が貴社を立ち上げられたんですよね。
社)もともとは別の会社でメガネの卸をしていたんですが、自分で作って自分で売るということがしたくて独立したのがジョイントオプチカルです。べっ甲メガネは、以前勤めていた会社でべっ甲加工の会社と繋がりがあって、実現したんです。
達)私はメガネメーカーで現場の仕事と営業をしながらうちを手伝っていたんですが、五年前にうちに戻ってきました。デザインは独学で、今も勉強中です。
--今後の展望をお願いします!
社)今は国内での取り扱いなので、あとは海外ですね。デパートの販売も今は東京が中心なので広がっていきたいですね。メガネのデザインもどんどん充実させていきたいですね。今度(2011年)のiOFTでは新作のべっ甲メガネを展示しますので、是非見に来てください。
-- 楽しみにしています!本日はありがとうございました。


