鯖江といえばメガネの産地。これまで鯖江メガネファクトリーでは、鯖江や福井県内のメガネフレームについて取材を重ねてきました。しかしレンズについてはあまり触れてこなかったように思います。株式会社アサヒオプティカルは、鯖江市に工場(本社は宝永)を構えるレンズメーカーで、世界で最初に高屈折率レンズを開発・発売してきました。鯖江のフレームメーカーと同じく、「MADE IN SABAE」の精神を大切にしています。レンズってどうやって作るの?どうして見えるようになるの? 様々なレンズの謎を酒井常務取締役、鈴木総務課長、後藤営業課長代理に伺いました。
レンズの知られざるバリエーション!
後藤営業課長代理
-- レンズの製造現場にはほとんど伺ったことがないのですが、レンズはどのように作られているんですか?
レンズを作るには、ガラス製の型(モールド)に特殊なプラスチック樹脂を流し込んで成型します。
-- プラスチックで出来ているんですね。どうしてプラスチックのレンズを通すとよく見えるようになるのでしょう?
レンズのカーブによって光の屈折を起こし、像を見えやすくしているからです。度数を変えるときはカーブの度合いを変えたりプラスチック素材を変えて作ります。
-- レンズの素材であるプラスチック樹脂にもいろいろな種類があるんですね。
混合のバリエーションでいろいろなレンズができます。またレンズができた後に、ハードコート(傷を防ぐ役割)やマルチコート(光の反射を軽減する)を施すこともあります。
-- 昔のメガネはガラスのレンズでしたよね。どうして今はプラスチックレンズに変わったのですか?
一番の理由は軽さですね。プラスチックレンズはガラスに比べて非常に軽いんですよ。それとレンズに色を付けたり、薄さを追求したりなどメガネにファッション性が求められる時代です。プラスチックの方がそういうことがしやすいですね。結果、市場のレンズの97〜98%がプラスチック製になりました。
完成したレンズ。今は分厚いですが、メガネ屋さんでそれぞれの度数に合わせて削り、皆さまのお手元に。-- 確かにお話を伺っていると、レンズにもいろいろなバリエーションがあるようですよね。貴社ではどのようなレンズがあるんですか?
鉄球を落としても割れないレンズ(セーフティ加工)、度数が高くてもとても薄いレンズ(1.74高屈折レンズ)、遠近両用のレンズで遠くを見る部分と近くを見る部分の境目が無いようなものなど様々です。またUVカットというとサングラスと思われがちですが、無色のレンズでもUVカットをしています。特に当社では世界でNo1のUVカット率(400nmにおいて)のレンズを製作しています。
-- 一押しのレンズを教えてください。
「バイクリヤー」というレンズです。パソコンや携帯電話・読書で目を酷使すると、焦点を合わせる機能が低下し、調節異常(視疲れ)を起こしてしまいます。それをレンズが調整することで、筋肉の伸縮を軽減して視疲れをとるというレンズなんです。裸眼で生活するよりも疲れないので視力の良い人も使用できるんですよ。
-- 視力の良い人も掛けられるメガネなんて斬新ですね。
目に負担がかからないように補正されたメガネなので、近視抑制になることもありますそれに、きちんとした処方のもとでメガネを掛ければ目が悪くなることはないんですよ。
-- メガネを掛けて目がよくなるなんて一石二鳥ですね。
弊社ではこのように「こういう人に使ってほしい!」という具体的なターゲットのある「コンセプトレンズ」を多く開発しています。

メガネレンズができるまで
--製造工程をお見せいただけますか?
どうぞ!工場に入る前に、この作業服と帽子を着用してください。精密なレンズの工場なので、埃などを出来るだけ防ぐためです。
-- 違う空間に突入という感じでワクワクします。さすが精密製品を生産する場、社内もとてもきれいでゴミや埃が落ちていませんね。
数年前に福井市から工場を移転したのでまだ新しい建物なんです。また、社内で5S活動(美化活動)などを行って、いい製造環境を整えています。こちらが製造工場です。工程によっては窓がないんですよ。これも塵や埃を遮断するためです。
--徹底していますね!こちらの部屋では何をされているんですか?
ここでは型を洗浄した後、プラスチックが流し込めるように、型を組み立てています。型を組み立てる際、型の中に塵やゴミが入るのを防ぐため、クリーンルーム(無塵室)での作業になります。ここに入るには特別な服を着て、エアーカーテンを通らなくてはいけません。だからここから先は一般の方の立ち入りはできないんですよ。
-- なるほど、厳しく管理されているのですね。そして組み立てた型の中にレンズの材料であるプラスチックを流し込むんですね。
はい。流し込んでしばらくすると硬化し始めるので、1日の材料はその日のうちに使い切ります。また流し込む際に使うチューブなどは毎日使い捨てなんです。
型から出されたレンズたち。レンズの周りをカットして洗浄します。
-- レンズの材料って変わった匂いがするんですね。玉ねぎのような匂いです。
レンズって実は臭いんですよ(笑)。一般の方はわかりませんが、お店でレンズをカットすると臭いにおいが発生します。それを抑える為に工夫をしています。ちなみに作業中はガスマスクのようなものを着用して作業します。そして熱を加えて中の樹脂が硬化すると型から外して周囲をきれいにカットして洗浄します。
-- 洗浄機に使われている水はどのような水ですか?
何段階かに分けて洗浄をしています。水道水も使用していますが、最後は超純水を使用します。洗浄が終わると検査をします。
-- え?検査は人の目でしているんですか?

きれいなお水で洗浄されたレンズたち。一見ピカピカですが、ごく稀にゴミや小さな傷があることも。それを肉眼で検査するとは驚きです。
検査はすべて人の目で人の手で行います。ここはとても大事な工程で、現在機械では不可能だとされています。肉眼で見えるか見えないかという傷やゴミの混入をチェックしているんですよ。
-- すごい…。私には全く見えません。こんなに目を凝らして見ていると疲れそうですね。ところで、レンズを作るのに使用した型はどこで作っているんですか?
実はこの工場の1階にレンズの型を作る場所があるんです。責任重大なこの工程をこの道22年の窪田さんという方に担当してもらっています。型はある程度までは機械で作れるのですが、最終的には人の手で微妙なカーブなどを削り込まないといけません。窪田さんは長年培った技術と勘で削っていきます。この型から何万個ものレンズができていくのですから、微妙な誤差もゆるされない本当に大事な部分です。
-- そんな大切な型づくりを一人で!?是非改めて職人として取材をさせていただきたいです!それでは最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
最終的にお客様と接して、フレーム合わせてレンズを削るのは小売店さんの仕事なので、小売店さんに向けたセミナーをやっていきたいですね。弊社では様々なレンズを作ってきましたが、レンズのハウスブランド(自社ブランド)を立ち上げ、プレミアムなレンズを売り出したいと思っています。レンズもフレームと同様、アジアメーカーに押されていますが、だからこそメガネ産地鯖江でレンズを作る意味を押し出していきたいと思っています。MADE IN SABAEはやはり海外で人気があります。弊社のレンズは製造場所が日本であるだけでなく、使用する材料やコート液も日本で開発され日本で作られたものにこだわっています。日本には大きなレンズメーカーがありますが、そんな中で高品質な材料と開発能力を活かして、「アサヒオプティカルって何を出してくるかわからない」という脅威であり続けたいですね。
--本日はありがとうございました!

