株式会社レインコートは、昨年6月に立ち上げられ、同年10月には初の自社ブランド「59HYSTERIC」を発表するなど、現在急成長中の会社です。社長のハクイ・ゲン氏はデザインから営業はもちろん、地元韓国ではメガネについてのライターもこなすなど、幅広い活動をされています。今回はそんな社長にブランド「59HYSTERIC」について、また世界から見た鯖江メガネの印象など、楽しくお話を伺いました。
物語のあるメガネ
「59 HYSTERIC」のメガネ。メガネケースもおしゃれ!
--本日はよろしくお願いいたします。御社は昨年2010年の6月に立ち上げられた会社と言うことですが。
その前から韓国で13年間メガネの貿易業をしていました。私はね、メガネ業界が天職だと思っているんですよ。
--天職ですか!
初めて勤めた会社からずっとメガネ会社なんです。メガネっていいじゃないですか。掛けると人の表情が変わるという点でファッション性もあるし、ビジネスの可能性もあるし。
--日本にはいつ頃いらっしゃったんですか?
3年前に来日して、それから2年間鯖江のメガネ会社に勤めました。
-- どうして、日本でメガネ会社を立ち上げようと思われたんですか?
元々日本が好きだったし、日本の技術力は世界的に見ても凄いですからね。韓国でも日本製のメガネは人気があります。でも、残念ながら今は円高や中国製の安いメガネも出回ってきて、昔ほど日本のメガネが売れなくなってきています。私は鯖江のメガネを世界にアピールするには、技術を売りにするだけではダメだと思います。今までのメガネに、哲学や物語をプラスしたメガネを作りたいと思って出来たのが、この「59HYSTERIC」です。
--「59HYSTERIC」のブランド名の由来は?
“60”という数字は1分=60秒や1時間=60分で「完全」というイメージがあるのですが、時間のように正確でも完全でもない人間の弱い部分を、60から1足りない“59”という数字で表現しました。そんな弱さを認めた上で、個性を出していきたいというメッセージが込められています。
--マークに使われているドクロにも何かメッセージが込められているんですか?
カッコいいイメージを出していきたかったんです。あと、ドクロは日本ではあまり良いイメージじゃないかもしれませんが、世界的には「元をたどればみんな一緒」という意味があって、良いイメージなんですよ。
--それはおもしろいですね!現在、セルフレームとメタルフレーム両方売り出されているんですね。
はい。ここ数年セルフレームが世界的にも流行っていましたが、そろそろメタルフレームブームも来るんじゃないかと思っています。営業をしていても、メタルの方に興味を持って下さる方が多いですね。韓国の女優さんもプライベートで掛けて下さっていて、人気がありますよ。
--やはり日本製という点にもこだわりがあるのでしょうか?
そうですね。世界で通用するには日本製じゃないと話にならないですね。ただ、デザインの面では鯖江はまだまだ保守的な部分があるので、先程言ったようなメタルフレームを売り出したり、派手な色を使ったりという思い切ったことが出来ない印象があります。日本の技術にファッション性をプラスした眼鏡を作って、鯖江を世界に売りたいですね。
眼鏡ライターとしての顔
ゲン社長が記事を掲載しているのはいずれも、韓国のメガネ専門雑誌やメガネ専門の新聞。しかもなんとフリーペーパー(無料)なのです!
--ゲン社長は、眼鏡にまつわる記事を書かれている眼鏡ライターの顔もお持ちですが、いつからライターとして活動されているのですか?
2006年から日本のメガネ会社について記事を書くようになりました。それ以前も、韓国に日本のメガネ会社の方がいらっしゃったときはインタビューをしていました。
--現在何誌くらいの記事を書かれているんですか?
雑誌が毎月1誌と新聞が月に2回1紙、全部で月に3本の記事を書いています。
--インタビューされる時に必ず聞く質問はありますか?
自社ブランドを持っている会社にインタビューすることが多いので、「御社の眼鏡ブランドの中で、あなたが一番好きなデザインはどの眼鏡ですか?」という質問は必ずします。あとは、好きな音楽とか何でも聞きますね。その人の人となりを知るのが好きなので。
--なるほど。参考にします!
WHO DO YOU THINK YOU ARE?
メガネには「OZAKI(オザキ)」や「GOGH(ゴッホ)」など、ゲン社長が敬愛する各界の著名人の名前が付けられています。よく見ると才能がありながら自ら死を選んだ人や精神的な病に冒されていた人の名前が多く、社長が語る「人間の弱さ」にリンクしているようです。
--話は「59HYSTERIC」に戻りまして、デザインのこだわりはどこにありますか?
テンプルの裏側に、「WHO DO YOU THINK YOU ARE?」というメッセージと、メガネの型ひとつひとつに付けられた名前が刻印されています。これは印刷ではなく、金型を作ってプレスして印字しているんです。面倒な作業なので、メーカーの方には嫌がられるんですが(笑)、伝えたいメッセージが集約されているので大事なポイントです。
--メガネに刻まれたメッセージ「WHO DO YOU THINK YOU ARE?」とは?
「あなたは自分のことを何者だと思いますか?」というメッセージで、このメガネを通して私が一番押し出したいメッセージです。
雨が好きというゲン社長。会社の名前もそこから来ているそうです。
--なんだか、メガネという枠を超えて、メッセージを伝える媒体のような印象が「59HYSTERIC」にはありますね。
メガネは私の想いを表現するツールですね。でも、どんなにメッセージ性があっても、品質のいいメガネじゃないと伝わらないと思います。鯖江のメガネにはメッセージや物語を語れる可能性が十分にあるんです。
--最後になりましたが、今後の展望をお願いします!
まだまだ今は勉強中です。デザインのことも製造のことも。自ら眼鏡を作ったことが無いので、勉強して、試作は自分で作れるようになりたいですね。セカンドブランドも検討中です。眼鏡のデザインは制約が多いけど少しの違いで大きく変わる可能性も持っています。どこかで見たことのある眼鏡じゃなくて、オリジナリティがあって、且つみんなに認められるデザインの眼鏡を作っていきたいです。
--本日はありがとうございました!
59HYSTERICオリジナルTシャツ。よく見るとドクロの頭にも59の文字が。カッコイイ!