
以前このメガネザンマイでインタビューさせていただいたデザイナーユニット「
sios
」の塩路智大さん(以下:智)と塩路知江子さん(以下:知)が、2008年から新たなブランド「Micedraw Tokyo」を手掛けています。このブランドは鯖江市に本社を構える五十嵐眼鏡のメガネ職人・五十嵐雅和さんとの共同ブランドです。鯖江メガネファクトリーでは、デザイナーである塩路さんご夫妻と、職人である五十嵐さんの両視点から「Micedraw Tokyo」について伺うことができました。今回のメガネザンマイでは、塩路さんご夫妻のインタビューをお伝えします。(五十嵐眼鏡さんのインタビューは5月8日更新のゲンバシュギをご覧ください!)
シンプルを追求した個性
--早速、「Micedraw Tokyo」の眼鏡をお見せいただいてよろしいですか?
智)こちらです。今は全部で10型ありますね。
知)どんどん掛けてみてください!
--(たくさん試着させていただきました。)すごく色がきれいですね。でも掛けてみると色がうるさくないというか。しっくりきます。それに軽い!
智)フレームもテンプルも限界まで薄く細く作っているのでかなり軽いと思いますよ。細いので、カラフルな色の生地でも目立ちすぎないんだと思います。
--形もすごくシンプルですよね。普段お二人が手掛けていらっしゃるメガネは、とてもデコラティブなものが多いので、「Micedraw Tokyo」のシンプルさは意外です。
智)「sios」のメガネとは対になっていて、両極端なことをやって逆にバランスをとっているんだと思います。「Micedraw Tokyo」のシンプルさ・ベーシックさがあるから、「sios」も思いきったデザインが出来るんです。

-- そんなシンプルなメガネ「Micedraw Tokyo」のコンセプトとは?
智)「Micedraw Tokyo」は、人がこのメガネを掛けた姿を前提にしたメガネです。メガネそのものを売りにするというより、メガネが似合っているということ、そのスタイルを売りにしたいと思っています。掛ける人の姿や印象をメガネによって左右されたくないというか、掛けた姿が「素顔」なメガネがコンセプトです。
--「Micedraw Tokyo」のブランド名の由来は?
智)「マイスドロートーキョー」と読むんですが、ことわざで「ネズミが塩を引く」というものがあるんです。それを英語に当てはめて「Micedraw」と名づけました。ブランドを立ち上げた2008年はネズミ年で、立ち上げ当時の気持ちを忘れないようにと、ネズミをブランド名に入れたいと考えていたら、このことわざを見つけました。塵も積もれば山となるという意味があって、ネズミを僕たちに例えて、コツコツ塩を運んでくる様子が可愛らしいファニーな印象で、それが気に入ってブランド名にしました。「Tokyo」は、響きも良いし、「Micedraw Tokyo」の質のいいシンプルなスタイルは都会っぽさが出ているかなとも思います。
--「Micedraw Tokyo」をデザインするうえでのこだわりは?
智)メガネはまず視力を補う手立てであって、自然でメガネらしいデザインを心掛けています。良いか悪いか・売れるか売れないかというより、使えるか使えないかを重視しています。その上で付加価値をつけるとしたなら、それは作る側が決めるものではなくて掛ける人が決めるものだと思います。
知)わざわざどこが良い、どこが売りだとキャッチフレーズで攻めなくても、お客さんの中には自分の感覚で良いものと判る方も多いですからね。
智)だから、「Micedraw Tokyo」をデザインするうえで、技術力やデザインを誇示するようなメガネにしないように、削ることのできる作業は削ったデザインにしています。
--メガネ自体もとてもシンプルな形ですが、デザインするうえでの考え方も、とても削ぎ落とされたシンプルな考え方でなさっているんですね。
智)シンプルも追求すればひとつの個性になると思います。「買ったはいいけどあまり使わない」というのが作り手にとっては一番つらいことなので、「何本も持っているけど、結局これを掛けちゃう。」というメガネが理想です。メガネを必要としている人がいて、そのためにメガネがあって作り手がいるというのがシンプルな考え方だと思います。
五十嵐さんのパフォーマンスを引き出せるようなデザイン
「Micedraw Tokyo」は幅広い層の方に親しまれるメガネ。「新たなコミュニケーションを図れることが嬉しい」と語るお二人。
--「Micedraw Tokyo」は五十嵐眼鏡の五十嵐雅和さんとの共同ブランドということですが、どういったきっかけで一緒にブランドを立ち上げようということになったんですか?
智)もともとsiosを仕上げる際に、五十嵐眼鏡さんの設備を使わせていただいたりしていたんです。五十嵐さんのお仕事には信頼があったので、息子さんである雅和さんが福井に帰ってきて会社を継いだのをきっかけに、一緒にメガネを作りませんか?と提案しました。
知)五十嵐さんの仕事はとても繊細で丁寧ですし、仕上げの際どの時点で完成にするかのタイミングが私たちと近いんです。これはとても大切なことで、説明したって伝わらない感覚的な部分ですからね。
智)五十嵐さんの仕事の繊細さを活かすなら、「Micedraw Tokyo」のシンプルさが良いと思いました。五十嵐さんのパフォーマンスを引き出せるようなデザインを心がけていますね。
--そんな五十嵐さんに一言お願いします。
智)「Micedraw Tokyo」は五十嵐さんがいなかったら出来ないブランド。とにかく楽しんで作って欲しいですね。疲れた時は休みながら作ってください(笑)。
--最後になりましたが、「Micedraw Tokyo」としての今後の展望は?
知)長く続いてほしいですね。
智)そうですね。セルフレームなのでカジュアルな印象が出ると思うんですけど、それを活かして、カジュアルだけど良いもの、良いものだけど普段使い出来るものを作っていきたいですね。「Micedraw Tokyo」なら冠婚葬祭も行けるし、ショッピングも行けるというような。
--本日はありがとうございました!
