鯖江メガネファクトリー

OPTICAL YABUUCHI 薮内義久
OPTICAL YABUUCHI 薮内義久

東日本大震災から早くも2週間以上が経ちます。福島市内でメガネの小売店を営む薮内義久さんは、3月11日に被災し、現在福井県に急きょ避難・メガネ会館にて被災地へ向けた眼鏡の支援物資を送るボランティアを行っておられます。地震発生当時の状況や、ボランティアについて、また福島県での鯖江メガネの評価など、普段の取材ではなかなか知ることのできない貴重なお話を伺うことが出来ました。

東日本大震災から2週間…老眼鏡を救援物資を福島へ!

img05 img02被災後の店内の様子。

-- この度は本当に大変な災害になってしまいましたが、お住まいの福島市の被害は大きかったのですか?

福島市は場所や建物によって被害に差がありますね。自宅の方は全く問題なかったのですが、お店は2階の壁に大きな亀裂が入ったり、什器や家具が倒れてしまいました。かれこれ2週間休業しており、早く復旧をしたいのですが、まだまだ物資や資材や燃料が足りませんし、原発の放射能も怖くて帰れない状況が続いていますね。現在、お店は、両親に任せて被害の少なかった1階のみで営業を再開しています。

-- 地震が起きた時は、お店は営業中だったんですか?

そうですね。昼の3時頃でちょうどお客さまとお話をしていた時でした。福島市内は震度5強で、今までに経験したことのないような揺れ方だったのですぐに外に出ました。すると、すでに大勢の人が外に出ていて、パニック状態でした。

-- 本当に恐ろしいですね。

家族はみんな無事だったのですが、妻が妊娠中ということもあってとにかく放射能が心配で。それで県外にしばらく移ることにしました。私の周りの友人たちも子供がいる家はみんな県外に行っています。福井には知り合いがいて、宿を紹介してもらいました。10年前にメガネ工場を見学来た以来なので2回目ですね。

 大量の老眼鏡と格闘する薮内氏!

-- 今はこちら「めがね会館」で被災地への物資を送るボランティアをされているということなのですが、どのようなボランティアなんですか?

今回の地震を受けて、様々な眼鏡会社のご厚意で老眼鏡の救援物資が多数めがね会館に集められたんです。私がお手伝いに来た時には2万本近く山積みにされていました。その選定作業をしています。

-- 2万本!ものすごい数ですね。

しかもどれも新品なんです。本当にありがたいことですね。ただ、2万本と言っても度数は様々にあるので、それぞれの度数に分けて被災地に送る際に度数に偏りがないように選定・梱包しています。昨日も福島市に1000本の眼鏡を送ることができました。

-- なるほど。この老眼鏡の救援物資はどなたかが呼びかけて始まったのでしょうか?

 被災前のお店の様子。早く元通りになることを願うばかりです。

鯖江の小売店さんやめがね会館がインターネットなどで呼びかけて集まったそうです。インターネットもそうですが、テレビやラジオでも本当に全国の温かい気持ちが伝わってきて感謝しています。いつか恩返しが出来ればと思います。それに、この選定のボランティアに携わることが出来て自分自身救われました。地震が起きてから間もなく県外に出てしまったので、地元のみんなに何も出来ていないという気持ちが心残りだったので、少しでも力になれて嬉しいですね。出来るだけ早く福島には戻りたいと思っています。被災地は本当にこれからが再スタートですね。以前のように笑って生活ができるよう次のステップに行かなきゃいけないと思います。

 

救援物資の老眼鏡

福島のメガネ屋さんが見る鯖江のメガネ。

 薮内義久氏

-- 薮内さんは、もともとお家がメガネの小売店をされていたんですか?

そうです。実は私で5代目なんですよ。

-- え!すごい!老舗のお店なんですね。

136年前に開店して、初めは時計宝飾店としてメガネも販売していたんですが、現在はメガネをメインに扱っています。

-- 薮内さんはやはり小さいころからメガネ屋さんになるのが夢だったのですか?

いえ、本当はプロダクトデザインを学びたくて、実は両親に内緒でイギリスに留学したこともあるんです。デザインで有名な現地の大学で学びたかったのですが、いろいろあって結局家業を継ぐことを決意しました。メガネ業界に入ったらやりたいことが出来なくなると思って、昔は店を継ぐのが嫌だったんですが、今はこの業界でやりたいことをしよう!という気持ちに変わりましたね。お店も自分の理想に近づくため、2階部分を改装して、メガネと雑貨を一緒に置いたりしています。

-- ズバリ薮内さんがやりたいこととは?

img05
OPTICAL YABUUCHIオリジナルブランド「COYA」全て木製・ハンドメイドです。

メガネのデザインをしてオリジナルブランドを作ることですね。自分でデザインをして作って販売もしたくて、数年前から動き出しています。早くお店も復旧して、再開したいですね。せっかく福井に来ているので、メガネ作りの現場も可能な限り見学して、糧にしたいと思っています。

-- 福島には眼鏡メーカーの会社や職人さんはいらっしゃらないんですか?

小売店はたくさんありますが、眼鏡会社はほとんどありませんね。鯖江は本当にメガネの聖地だと思います!憧れますね。このメガネ会館にも鯖江産の眼鏡がたくさん販売されていて、面白いメガネを日々発見しています。雑誌で見たことのある眼鏡もたくさんあるのですが、実際に手に取って見るとまた全然違って魅力的ですね。

-- お店では鯖江産の眼鏡も置かれているんですか?

img05福井の眼鏡も取り扱われています!青山眼鏡株式会社「Factory900」

はい。鯖江産のメガネもいくつか販売しています。他には海外から買い付けた眼鏡もあります。福島の眼鏡小売店も郊外店の波に押されていますが、少々値が張っても良いものを販売しようと頑張っている面白いお店もたくさんありますよ。

-- 鯖江の眼鏡は薮内さんから見ていかがですか?

やはり品質の良さは断トツだと思います。磨きの丁寧さ、カッティングの複雑さなど、どこをとってもクオリティーが高いですね。特に男性のお客様に人気があって、完璧に磨かれた鯖江のメガネに感動していらっしゃる姿を見るとこっちも嬉しくなりますね。

-- 鯖江の眼鏡も安い中国製の眼鏡に押されているのですが、鯖江の品質の良さを上手くPR出来ればいいですよね。

小売店さんの中でもメガネについてすごく勉強されている方もいるので、中国製との差別化は十分にできると思います。すごいなと思うのは、メガネ雑誌に掲載されている日本製眼鏡のほとんどが鯖江のものなんですよね。それだけで、日本の眼鏡のファッションスタイルを引っ張っているのは鯖江というのが良くわかります。今は苦しいかもしれないけど、だからといって値段だけにこだわった安いものを作ったところで売れるかどうかは別だと思います。鯖江にはこれからも技術の安売りをせずに、いいものだけを作ってほしいですね。

--本日はありがとうございました!これから大変かと思いますが、頑張ってください。

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  • 薮内 義久 Yoshihisa YABUUCHI
  • OPTICAL YABUUCHI 店長
  • OPTICAL YABUUCHI
  • 福島県福島市大町9-21
  • TEL.024-522-2659
  • http://www.eye-y.com
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