鯖江市に本社を構えるカメマンネン株式会社は、自社の名前であるブランド「カメマンネン」を企画・販売している会社です。クラシカルで上品な雰囲気のメガネと「カメマンネン」という謎のネーミング。今回のメガネザンマイは、そんな「カメマンネン」を手がける代表取締役の若林茂氏(以下:社)と専務取締役の木村英三郎氏(以下:木)に迫ります。
見た目はクラシカル、技術は最新。
-- 御社ではメガネのデザインを手がけていらっしゃるんですか?
社)「カメマンネン」というメガネブランドの企画と販売を行っています。少人数でやっている会社なので、デザインは他社のデザイナーに委託しています。
-- 創業はいつになるんでしょうか?
社)カメマンネン株式会社は2年前に出来たばかりの会社です。ちょっと複雑なんですが、「カメマンネン」というブランド自体は私が生まれる前からあるブランドなんです。もともと「カメマンネン」はあるメーカーが企画していたブランドだったんですが、訳あって継続が難しくなってしまいました。私もそのメーカーに勤めていて「カメマンネン」の貿易を担当していたので、このまま「カメマンネン」がなくなってしまうのは勿体ない!ということで独立して今に至ります。
-- なるほど!ということは、「カメマンネン」というユニークなブランド名は社長がネーミングされたわけではないんですね。
社)そうですね。「カメマンネン」の生みの親である木村菊次郎の、末長く愛用できる質の良いメガネを作りたいという想いが込められています。「鶴は千年、亀は万年」って言うでしょ。
-- 末長く愛用できるためのこだわりはどういうところにあるんでしょうか?
ネジは一度プラス(+)ネジで完成されたメガネをわざわざマイナス(−)ネジに付け替えるというこだわり様!
木)掛け心地と丈夫さですね。素材はチタンやゴムメタルを使用して軽く、柔らかいフレームになっていて、樹脂アレルギーの方にも安心して掛けて頂けるように、トウモロコシから作られた樹脂を鼻パッドに使用しています。あとは、従来のプラス(+)ネジではなくマイナス(−)のネジを使うことでネジが緩みにくくなっています。見た目はクラシカルですが、素材や技術は新しい物を取り入れていますよ。
-- 「カメマンネン」は一貫してクラシカルなデザインが特徴的ですが、何か意識はされているんですか?
木)クラシカルを意識しているのと同時に、デザインに流行や奇抜さを取り入れないようにしています。これは、国内だけでなく世界中で掛けてもらえるようなグローバルスタンダードなデザインを目指しているからというのもあるし、末長く飽きずに愛用できるためのこだわりの一つでもあります。一度作った型は10年間は使い続けられるように、長いスパンでデザインをしています。
社)今後は「カメマンネン」の品質はそのままに、よりカジュアルなメガネも視野に入れて考えています。
-- デザインはデザイナーの方に委託をされているそうですが、決まった方がいらっしゃるんですか?
お二人が最後に検品をして、密封→お洒落な検査カードを添えて出荷。小ロットだから出来る丁寧&粋な心遣いですね。
社)いえ、毎回違う方にお願いしたりさまざまです。
-- それはおもしろいですね!でも、どの型もデザインというか、雰囲気が統一されている感じがします。
社)こちらがデザイナーの方に「カメマンネン」の想いを伝えてお願いしているからだと思いますね。デザインが固まるまで何度もやりとりをして、どの商品にもきちんとカメマンネンの哲学が継承されるように気を配っています。
-- デザインをお願いするときはある程度頭の中に具体的なイメージがあるんですか?
社)いや、無いですね(笑)。デザインは木村と立ち話をしているうちに思い付くことが多いです。「そういえばこういうデザインうちに無いね。」みたいな感じで。
カメの如く、ゆっくり。
-- 社長がメガネ業界に入られたきっかけは?
社)結婚を機に転職をしたのがきっかけです。英語が出来たので貿易関係で探していたところ、たまたまメガネのメーカーで仕事が見つかりました。
-- なるほど。では、メガネ業界は始めてだったんですね。
社)まったく初めてで、当時の上司にはトンチンカンな質問をたくさんしていたと思います。そんな右も左も分からないときに、その上司に「海外の展示会に行ってこい!」と言われて、そこでいろんなことを学びました。メガネのことだけでなく、「カメマンネン」がどんな人に売れるのか、他社はどんなメガネを売り出しているのか、お客様はどう思っているのかなどですね。今思えば、上司も思い切ったことをしたと思いますけど、それがきっかけで「カメマンネン」が好きになりました。
-- 素晴らしい上司の方に巡り会えたんですね。
社)今、隣に居るんですけどね(笑)。
-- えー!木村さんがその元上司なんですか!?カメマンネンを愛する社長と専務が独立して一緒に会社を作られたのですね。
木)そうですね。独立したいと聞いた時に「そんなに言うなら…」と仕方なく(笑)ついてきました。
-- なんだか不思議な関係ですね。
社)昔は上司だったけど今は逆転していますからね。
木)「カメマンネン」がこれからも長く続いていくためには若い世代がトップに立たなくてはいけないんです。だから、社長の今後の課題はさらに次の世代を育てることなんです。
-- なるほど。ズバリ次世代に求めることは?
社)メガネを知らないことです!私も全く知らないまま「カメマンネン」を担当しました。知らないから大胆になれることってたくさんあって、今思えばそれが功を奏していたこともあったなと思って。業界の常識を知らないということは、自分で限界を設定しないで動けますからね。メガネに関してまっさらな人を募集しています。それで、いつか今度は私が「海外の展示会行ってこい!」って言いたいですね。
-- お仕事をしていて対立することはありますか?
鯖江の地場産業である漆の技術を取り入れた木のメガネ。「メガネ以外の業界とも繋がっていきたい」と語る社長。
木)言い争いはしょっちゅうです。性格的に私たちは真逆なので。
社)私は割と行け行け!って感じの性格で、木村は慎重派なんです。でもそのバランスがいいのかなとも思いますね。
-- 今後の展望をお願いします!
木)日本だけでなく世界でのシェアをもっと獲得していきたいと思います。ものづくりにおいては、「守るところは守る、変えるところは変える。」をモットーにベーシックだけど新しい物を作っていきたいです。
社)これからもカメのようにゆっくりではありますが、楽しく販売が出来て、鯖江がもっと活気づいて、「カメマンネン」でみんなが幸せになれたらそれが一番だと思います。ついでに会社が維持できていけば…って思います。経営者としてはいい考え方なのかどうか分からないんですけど(笑)。
-- 本当にそれが一番だと思います。
社)私自身が、ずっと「カメマンネン」と一緒に仕事をしてきて、「カメマンネン」を通して学んだ事や出会った人はたくさんあります。私が一番「カメマンネン」に救われている人間の一人だと思うので、今度は私が「カメマンネン」で誰かを幸せにしたいと思います。
-- 本日はお忙しい中ありがとうございました!