鯖江メガネファクトリー

オナガメガネ

福井市に本社を構える株式会社オナガメガネは、自社ブランドを中心に国内外の多くの小売店でメガネを販売しています。オナガメガネのメガネには、「100%MADE IN JAPAN」への強い思いが込められています。近頃取材をしていてよく耳にする「国内産」のキャッチフレーズ。そもそも、なぜ国内産にこだわるのか、国内産だと何が違うのか、株式会社オナガメガネ代表取締役・小永純一氏にお話を伺った。

  オナガメガネ

 

MADE IN JAPANを曲げない。

小永 純一社長


-- 御社は、自社ブランドを中心に手掛けていらっしゃると伺いました。

そうですね。自社ブランドを中心に全国800店舗の小売店で販売しています。

-- 御社のホームページに、「日本製」というメッセージが大きく書かれていたのですが、そこにこだわりがおありなのでしょうか?

はい。うちは小さなネジの一つから全て日本製にこだわっています。信頼のある工場と協力して、確認を取りながら作っています。

-- なぜそんなにも日本製にこだわっていらっしゃるのでしょうか?

市場に売られている「日本製」のメガネの一部は、部品を中国で作って組み立てだけを日本でしているものもあります。これではほとんど中国産のようですが、ロー付け・組み立ての最終工程が日本であれば「MADE in JAPAN」の刻印を押すことが出来てしまうんです。

-- それはショックですね。

お客様や取引先の小売店の方から「MADE in JAPANって本当?」と訊ねられ、私も初めてそのようなルールがあることを知ったときは、愕然としました。このままでは、お客さまに嘘をついていることになる。メガネを作る部品の全てが日本製でこそ「MADE in JAPAN」と言えるのではないか、これが私たちが日本製にこだわる理由です。

-- 御社のメガネには、「JPNOO」という独自のマークが付けられていますね。これが100%日本製の証なんですね。


そうです。このマークはうちの会社が商標登録をしたオリジナルマークです。世間には「MADE in JAPAN」と書かれた眼鏡はたくさんあります。でもそれは、ネジ1本に至るまで日本製であるものもあるし、組み立てだけを日本で行ったものもある。お客様が安心して日本製のメガネを選べるためこのマークを作りました。

-- お話を伺っていると、日本製への強い思いが伝わってきますね。日本製のメガネとそうでない眼鏡にはどういう違いがあるのでしょうか?

日本のメガネ産業、そしてそれを支える鯖江の技術は、世界的にもナンバーワンです。日本製のメガネは、光沢、材料の質、色の豊富さ、シルエットなど細かいところですがとても質が高いです。私たちもただ「日本製が良い」と叫んでいるだけではいけないので、違いが分かるようにメガネつくりをしています。例えば、はがれにくいメッキを使かったり、ゆるみにくい特殊なネジを使ったりと付加価値の高いもの、他には真似できない高い技術を工場の方にお願いしています。

-- メガネは長年使っていくものですから、そういう細やかな技術が使いやすさに繋がっているんですね。

私自身、日本産にこだわるまでは、鯖江にこんなに高い技術があることを実感していませんでした。この素晴らしい技術をどんどん宣伝していかなくてはと思っています。日本の、鯖江にしかできないものを作っていかなくては…

オナガメガネのもう一つの魅力「すぐにカタチにする」。

 

-- その他に御社で、「ここは負けない!」というポイントがあれば教えてください。


うちは3Dのソフトでメガネをデザインしていますが、これは他の会社では少ないと思います。というか、メガネをデザインするための3Dソフトと言うのは販売していないのです。

-- ということは、御社で使っている3Dソフトは…?

うちで作りました。プログラムは私の弟が担当しています。雑誌やうちのホームページに載せているメガネは、写真じゃなくてこのソフトで描いた3D画像なんです。うちのメガネを生で見たことがない人にとっては、写真よりもこの方が細部や色が伝わりやすいんじゃないかと思って。

-- すごくリアルですね!写真かと思いました!他のメガネ会社もこんなソフトがあったら…って思っているんじゃないでしょうか?

3Dで描かれたメガネ

そうですね。でも売りませんよ(笑)。

-- 企業秘密というわけですね。やはり3Dでのデザインは二次元とは違いますか?

全く違いますね。3Dでデザインをすると、掛けたときのイメージがとてもしやすいです。もちろん試作も作りますが、ある程度3Dでデザインしておくことで、その段階でお客様とデザインや色の確認ができますので、試作の作り直しがかなり減りますね。試作にかかるコストや時間がとても減ります。通常メガネ作りはデザインから完成まで半年くらいかかってしまうものですが、うちは最短4ヶ月で作ります。

-- それは早い!

流行はどんどん変わっていってしまうので、「これが流行る!」と思ったらすぐに作ってすぐに売らないとチャンスを逃してしまいますからね。

-- 流行や、新作のメガネのデザインはどこから情報を仕入れているんでしょうか?

うちは展示会に出さない代わりに、全国の小売店に直接営業に行って販売しているので、そこでお客様の生の声を小売店さんから伺っています。流行の情報やお客様のご要望が営業マンに直に伝わるので、それをすぐに形にできるのはうちの強みの一つですね。

 パット印刷により繊細かつ立体的な模様が鮮やかに浮かび上がったテンプル

 

-- 御社は、創業当時から自社ブランドが中心だったのですか?

いえ、初めは有名ブランドとライセンス契約をして販売していました。中国に支店を置くようになってから「脱ブランド」という体制に方向転換したんです。理由は、当時ライセンス料が高額になってきたことや、ブランドによっては中国で販売することをNGにしているところがあったので、仕事がしづらくなったというのが大きな要因です。また中国でのブランド熱もいずれ収まるだろうということで、自社ブランドの必要性を感じました。今でも弊社の核になっている「フロントーサ」はその時に立ち上げたものです。

-- なるほど。その自社ブランドも今では日本製へこだわったモノづくりへとだんだん進化しているわけですね。

そうですね。自社ブランドのメガネを作るという立場になって改めて「地場産業っていいものだな。」とつくづく感じました。これをなくしてはいけないと切実に思いますね。その意味でもMADE in JAPANにこだわりたいですね。最近は小ロットで生産するメガネが多いですが、うちは低コストで作れるデザインのメガネを大量生産することを目指しています。そうすれば産地の部品メーカーの儲けにつながるし、たくさん作ると単価も抑えられます。中国産の安いメガネとの価格競争で競っていくためには、手頃な価格ながら産地の技術をいかした質の高いものをいかにつくるかが大切です。

熱帯魚が大好きな小永社長。今では趣味が高じて熱帯魚のペットショップも手掛けている。なんと北陸最大規模です!

-- ところで、御社の創業は社長のお父様ですか?

そうですね、昭和27年創業です。小さい頃から父親が工場で作ってる姿を見て育ったので、昔はメガネがあまり好きではなかったんですけど(笑)。

-- そうなんですか?

もともとは生き物に興味があって、大学では生物関係を学んでいました。その中でも特に熱帯魚が好きで、実はうちのメガネのブランド名も熱帯魚の名前を引用しているものがたくさんあるんですよ。「フロントーサ」や「レガ二」や「ラスティ」。響きがいいでしょ?名前を考えるときはいつも熱帯魚の図鑑を見ながらです。社員は「また熱帯魚ですかー?」て言いますけどね(笑)

ブランド名にもなった『フロントーサ』

-- それは知りませんでした!確かにきれいな響きですね。最後に社長の今後の展望をお聞かせください。

この先10年が勝負だと思っています。中国などの海外にもどんどん進出していきたいですね。でも無理をしてはいけないとも思います。価格競争にしてもそうだけど、無理しないで自分のペースに合ったことをしていかないと数年後には何も残らないなんてことになる。無理をしないで、でもその中で「MADE in JAPAN」を諦めない、という立ち位置はこれからも崩しません。

--今日は有り難うございました。

 

prf
  • 小永 純一 Junichi ONAGA
  • 株式会社オナガメガネ代表取締役
  • 福井市出身
  • 株式会社オナガメガネ
  • 福井県福井市木田町2212−2
  • TEL. 0776-34-1230 FAX. 0776-34-7301
  • http://www.onaga.co.jp/
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