美しい細いラインが描く独特の形をしたこのメガネには、温かみがありながらもスタイリッシュな印象を感じる。これは、オプティック・マスナガが手がける眼鏡ブランド「FLEA」の眼鏡。鯖江市に本社を構えるオプティック・マスナガは、独自の作り方、売り方で根強いファンを獲得している。今回はデザインから営業まで行う、増永氏に、その販売方法や「FLEA」へのこだわりついて伺った。
見た目は不思議、掛けると納得。
(上)「FLEA」テンプルのラインが蚤のピョンピョン跳ねる軌道に似ていることから。
(下)特殊な部品「一ケ智」。一ケ智を使うことで、長年使ってもこのフィット感は変わらない。
-- 今日はよろしくお願いします。御社では、メガネのデザインをされているんですか?
そうですね。自社ブランドの企画、デザイン、販売をしています。でもそれだけじゃなくて、営業、電話番まで全てしていますよ(笑)。製造はメーカーの方に委託しています。
-- お父様と奥様との3人で運営されているんですね。
そうですね。もともとは父が創業した会社で、25年目になります。15年前に会社名を「オプティックマスナガ」に改定しました。その頃に立ち上げたオリジナルブランドが、この「FLEA」というメガネです。
-- 「FLEA」?どういう意味なんでしょうか??
これは、「フリー」と読むのですけど、日本語で「蚤(のみ)」という意味なんです。フリーマーケットのことを「蚤の市」って言いますよね。その「フリー」です。
-- どうして「蚤」なんですか?
蚤ってジャンプ力が凄いんですよね。私もテレビでそのピョンピョン跳ねる様子を見て驚きました。それがきっかけで、蚤が跳ねているようなラインを、メガネのテンプルデザインに活かせないかな?と思ったんです。
-- なるほど。斬新な発想ですね!このメガネのデザインもなかなか斬新です。掛けてみても良いですか?
どうぞ!
-- すごい!これ、掛け心地が良いですね!軽いし、このフィット感は意外ですね。
そうでしょう。お客様も、このテンプルの形を見て最初は驚かれるのですが、掛けてみると顔にフィットして気に入ってくださいます。包み込まれている感じがするとよく言われます。圧迫感もなくズレにくい点が特徴ですね。
昨年立ち上げた新ブランド「SUSTAIN」。前々から作って欲しかったセルメーカーさんにお願いしたそう。日本人の鼻の形状に合わせた、鼻当て部分がポイント。
こちらは、セル板からフレームを切り出す際に出た端材を利用したキーホルダー。「SUSTAIN」を購入した方にお揃いのキーホルダーをプレゼントしている。
-- 確かに、このフィット感を体感してしまうと、普通のメガネには戻れなくなりそうです。
ありがとうございます。お客様もリピーターの方が多くいらっしゃって、うちのメガネを10本近く買ってくださる方もいらっしゃるんですよ。見た目は不思議、でも掛けると納得、というのがリピートしていただける理由なのかも知れませんね。
-- いつも掛けるものだから、掛け心地ってやっぱり大切ですよね。カラーバリエーションも豊富で、デザインも華奢でかわいらしいですよね。
カラーバリエーションもうちのこだわりのひとつです。色は全て、日本人の肌の色に合いやすい色をメーカーさんと話し合って決めています。フレームがとても細いメガネなので、それだけに色の影響が大きく出るので気をつけています。
-- なるほど。これだけ細いと壊れそうですが?
そんなことないですよ。細いからこそ、壊れにくい作りを追求しています。実はこのメガネフレームのテンプルは職人さんの手曲げで作られているんです。一本一本手作業で作って、同じ形にしていく方法です。また、女性向けのメガネには珍しい「一ケ智」という部品をテンプルとフレームのつなぎ目に使用しています。「一ケ智」を使用することで、テンプルの開きを抑えメガネがずれるのを防ぐことが出来るんですよ。
-- 手作業でテンプルを全て同じ形に曲げられるなんて、職人魂を感じますね。
そうですね。見ていると気の遠くなるような作業で、手伝いたくなるのですが、私には無理でした(笑)。

ベースを崩さずFLEAらしさの追求。〜限られた中で新しいものを〜。
増永 幸祥氏
-- 新作の発表は毎年されるんですか?
そうですね。年に6型の新作を作っています。
-- 6型!デザインの段階で行き詰まることはないですか?
ありますね〜。「FLEA」らしさというベースは崩さずに新しいことをすると言うのは難しく、プレッシャーを感じます。そういう時は体を動かして気分転換をしますね。冬はスノースクートをしにスキー場に出掛けたり、これからの季節は自転車でサイクリングをしてリセットします。営業帰りの車中で次のデザインを考えることも多いです。絶えず頭のどこかで考えていると、イメージが突然湧いてきます。
-- デザインは増永さんが一貫してされるんですか?
そうですね。でも、メーカーさんや小売店さんにもアドバイスやお話を伺いながら、イメージを膨らませています。私は、デザインの勉強を専門的にしたわけではないので、初めは図面もまともに描けず、その時もメーカーさんにご指摘をされながら、何とか描けるようになりました。
-- お話を伺っていると、メーカーさんや小売店さんと、とても密接なご関係を築いているのだなぁと感じます。
ブランドを立ち上げてからずっと同じメーカーさんにお世話になっています。だから、こちらのコンセプトも理解してくださっていて、企画の段階から相談も親身に受けてくださいますね。新作をお願いする時に「FLEAらしいね。」って言ってもらえるのがすごく嬉しいですね。
-- 小売店さんにもアドバイスやお客様の声を伺っているんですよね。メガネ会社と小売店さんが近い関係なのは珍しいんじゃないですか?
そうですね。通常はメーカーから問屋さんを介して、小売店さんに売り込む形が主流なのですが、うちは数年前から直接小売店さんに売り込むスタイルに変えました。だから、こんなに近い関係を築けているのだと思いますよ。
-- なるほど。どうしてそのようなスタイルに変えたのですか?
お客様には勿論ですけど、小売店さんにも安心して売っていただけるようなメガネを目指したい、と言う思いから現在の販売スタイルになりました。直接お会いして、ブランドコンセプトを理解していただける方に売っていただきたいのです。初めはほとんど飛び込みで営業していましたね。
営業を始めてから、スーツケースにもこだわりを持ちはじめたという増永さん。商品のイメージを壊さないように気をつけているそう。
--飛び込みだと、断られることもあったんじゃないですか?
断られることは日常茶飯事で、9割のお店には断れていましたね。(笑)。それでも気に入ってくださる小売店さんもいて、今でもずっとうちのメガネを取り扱っていただいています。
--それはきっと、小売店さん側も安心して販売ができるからでしょうね。最後になりましたが、これからの意気込みをお願いします。
一時的な有名や流行は求めたくないですね。変わったものはいくらでも作れると思うのですが、私はこれからも半歩飛び出ているような、ベーシックと斬新の中間を追求していきたいですね。
--本日はお忙しい中、ありがとうございました!
