鯖江メガネファクトリー

ブロスジャパン

9年前に「本物」にとことんこだわる会社が設立された−「BROS JAPAN」。そこでは流行のデザインを追わず、歴史と伝統のある「本物」思想のものづくりによる「作品」が生み出されていた。今回は、メガネの定番を追求するブロスジャパンの魅力とともに、オリジナルブランド「BJ Classic Collection」のブランド構築のバックグラウンドにある、代表取締役 浜田謙さんの「生き方」そのものに迫ります。

  ブロスジャパン

 

商品ではなく、生み出す人の「生き方」をのせた作品をつくりたい。

ブロスジャパン社オリジナルブランド浜田 謙氏

-- 浜田さんは出身が京都ということをお聞きしたのですが、この鯖江の地でメガネ会社を設立するに至ったきっかけは何だったのですか?

もともと、ある食品メーカーの開発のセクションでブランドマネージャーをしていて、400億円を売り上げる商品を開発していました。一日何十万個と売れる商品を作っていたものの、何か物足りなさを感じていました。やはり大量につくるものづくりというものには限界があるんだなと。本当にいいものというのは、数が作れないんですよね。あるとき、こだわったものづくりというものをしたいと思うようになったんですね。

-- なぜそこで、メガネを選ばれたのですか?

実は・・・何でもよかったのかもしれません。一番のきっかけになったのは義理の父がメガネ会社をやっているということでしょうか。はじめはハンバーグ店をしたいな・・・と思っていましたから(笑)。食品メーカー時代にハンバーグ開発に携わっていて、その時に感じたのが、「自分が開発しているこのハンバーグは死ぬほどうまいか」ということだったんです。このハンバーグを食べて「過去最高にうまい!」と言ってもらえるかどうかかどうか、なんですよね。「この品質でこの価格はすごいね!」とは言ってもらえたかもしれないけれども、もっと究極があるのではないかと思うようになったんです。

-- 質を極めていきたいということでしょか?

そうですね。質というよりか、もう自分の「生き方」までになっていくんですよね。

-- 「生き方」ですか?

たとえばここにメガネがあります。これはただのメガネなんだけれども、僕の中では背景にすごく思い入れがあるわけです。100年の歴史のある産地で一つ一つ手づくりで職人が作っているんですよ。だからただの「商品」ではなく、僕の中では「作品」なんです。作品というのは一つ一つ手づくりで作られているもので、そんなに数を沢山作れないんですよね。一方で、大量生産にして、安く提供すればビジネスとしても儲けることができるんだと思いますが、そっちではない生き方をしたいということなんです。

 

-- そういった意味では「メガネ」は本物を極めることに適していたということなのでしょうか?

いや、それをするには「メガネ」でも「食品」でもその他の事でも一緒ではないでしょうか。僕は前の会社でブランディングを、すなわち「モノ」をどうブランド化してアピールしていくのかノウハウを学びました。各業界の用語や手法は、誰でも勉強すれば分かりますからあんまり関係ありません。それ以前の問題としてどのように商品を生み出して、どう世の中に広めるのか、どんな生き方でこの会社をやっていくのかっていうところの問題を重要視しているんです。

 

ブロスジャパン

-- ということは、ブランディングというのは、どの分野でも共通したものなのでしょうか?

大きなとらえ方としては、一緒だと思います。実は僕はもう一つ会社を友達と立ち上げたんです。「KEEP BEGIN」という農家を支援する会社です。(http://www.keepbegin.com)僕がすることは、ちゃんと良いものを見極めて仕入れ、その良さをちゃんとお客様に伝え、それに見合った価格で買ってもらうということです。例えば今、タマネギを扱っていますが、きちんとしたノウハウに基づき、いいものをどう広めていくかというブランディングをすると、きちんとした結果がでる。僕達が売っているのは世界一美味しい「タマネギ」ですから、普通の何倍もの値段にも関わらず、一流のレストランは買ってくれるようになりました。

-- ブランディングのノウハウがすごく気になります!

本当に良いものをどう伝えるのか、ということだけだと思います。伝え方の問題で、背景にあるストーリーが大事だと思います。

-- そうですね。 やっぱり商品だけではなく、その商品を生み出す人の存在はとても大きいと思います。メガネという作品の裏にある作り手の想いであったり、生き方であったりすることが重要なのかなと。特に浜田社長のブログからは、それがすごく伝わってきて、この人が作るものが欲しい!と思うほどです。

ただこの商品がすごいでしょ?ということだけではなく、人がこのメガネに何を求めているかということ、このメガネのバックに一体何があるのか、どんなストーリーがあるのかということなんです。メガネの100年という歴史がある鯖江に僕が住んでいることも、そしてそこにブロスジャパンがあって、大量生産できない、昔からあるセルロイド素材で作っていることも一つのストーリーですよね。このメガネ一つを作るのに、開発者が一体どれだけのことを考えているのか、生き方まで見せていくということが大事なことなのかなと思います。そこまで行くと、ミュージシャンや、アーティストに近いんじゃないかと思います。だから先ほど言ったように、僕のつくった商品は単に「モノ」ではなく「作品」と呼びたいんです。

 

ブロスジャパン

 

原点を追求したものづくり。

-- ご自分の会社を立ち上げるきっかけとなったのが、アメリカンオプティカルだったとか?

そうですね。もともと僕は、古いメガネが好きだったんですよ。そして世界で一番古いメガネメーカーが1833年に創立されたアメリカンオプティカル(以下A.O.)なんです。A.O.のメガネを取り扱いたいと思い、日本における代理店になり、その後、企画・開発にも携わりました。

--今でもA.O.の商品も作っておられる?

いえいえ、今でも代理店として販売はしていますが、作ってはいません。やっぱり、日本人と西洋人では顔の骨格が違いますから。僕が作ったメガネは、日本人には合っても、凹凸がはっきりしている西洋人にはしっくりこない。結局A.O.本社との意見の相違もあり、作ることはやめました。それなら自分でブランドを作って自分の商品を売ろうということになったわけです。これが、当社のオリジナルブランド『BJ クラシック コレクション』の始まりです。
これまでやってきた実績と、A.O.のメガネの原点を追求するというところでやっていこうと考えました。社名のBROS JAPANは、A.O.の日本における兄弟(BROTHER)という意味です。

--メガネの原点ですか。

今は、メガネが大量生産により、安く手に入る時代ですよね。つまり、作業の効率化とか生産性を如何にあげるのかということで、工業生産としては進化したのです。しかし、僕は、ものづくりとしては退化だと思っています。うちのBJクラシックコレクションではそう意味での進化はないんです。手間がかかるために失われてしまった技術を、職人たちが掘り起こし、本当のものづくりの原点に戻ろうという思想を込めています。


--なるほどー!大量消費のこの時代にあえて逆行しているというとなんですね。

それこそ大手では、できない手法だと思います。

--今後のBJクラシックコレクションにかける想いや展望はありますか?

ファッションとしてはあまり認識していなくて、はやりすたりのない、定番のもの、不変なものを作っていきたいなと思います。

--では最後に浜田社長自身の原点となる生き方とはなんですか?

生きていることを実感できることをしていきたい。今は生きていることがなかなか実感できない世の中です。例えば、食べ物にしても、すぐに買えてしまうし、なんでも便利に手に入ってしまう時代ですよね。コンビニでおにぎりを買ってもそれがものすごく旨いかというと、そうでもない。空腹を満たすことはできるけど・・・。そこには極上のものを苦労して手に入れるというプロセスがありません。そのプロセスこそが生きているリアリティを感じる部分なのかなと思います。僕は昔から、音楽でもアートでもそれの元になった原点はなんだろうと、ルーツを探らないと気がすまないんです。元を辿って辿って行き着いた先の本物を見たいんです。常に本物を追及するというのが僕の原点。そしてその本物を手にする過程に生きていることを実感します。それが時代と逆行していようと、僕はこれからもずっとそういう生き方をしていきたいです。

 

 

--今日は、お忙しい中ありがとうございました!

 

 

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  • 浜田 謙 Ken Hamada
  • ブロスジャパン株式会社代表取締役
  • 浜田社長のブログ:http://ameblo.jp/bros-japan/
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