鯖江メガネファクトリー

オプトデュオ

これまでメガネに携わる様々な会社を取材してきたが、まだ未知の世界があった。それは、メガネをつくる上で必需品である道具・資材の取扱店。「晃梅さんがなくなったら鯖江でメガネが作れない。」とまで言われている、鯖江のメガネ業界を支える(株)晃梅の代表取締役社長 梅村俊二氏にお話を伺った。

 

koubai

 

メガネ専用の道具、資材によってメガネが生まれる。

梅村俊二 氏 カッター 
カッターの在庫

--メガネ作りには欠かせない道具、資材についてはあまり知識がないのですが、主にどういったものがあるのですか?

大きい機械から、小さな部品まで取り揃えています。主力商品は、ドリル、カッター(市販のカッターではなく円状のもの)、タップ(穴の内側にねじを刻むために用いられる工具)、エンドミル(切削加工に用いる工具)、チップ、布バフ、油などです。

--このカッター(写真真ん中)は、メガネのどの部分を切断するのに使うのですか?

あらゆる部分に使いますよ。とにかく削る、切る部分です。この素材は超硬合金という材質でかなり重量があります。これが一番多く在庫があり、どんな機械にも対応できるように、サイズがコンマ単位で揃っています。一枚3000円から10000円くらいの値がします。在庫をたくさん抱えるのは、場所をとり大変ですが、お客様はすぐに欲しいわけですから、いついらっしゃっても対応できるようにしています。

--どのくらいのサイクルで買い替えが必要ですか?

一概には言えませんね。メガネフレームの材質にもよりますし、使用頻度によっても変わってきます。メガネの材質はチタンなどの開発により、より硬くなっているので、それを削る刃(カッター、エンドミル)はどんどん進化しています。

--創業は?

昭和34年ですから、今年で50年になります。父が始めた会社ですが、元々父は刃物卸業でした。そんな父のところにメガネを削る道具の注文が入るようになり、いつしかメガネの資材屋として商いをするようになりました。私たちの仕事はメーカーさんに機械、道具を納める仕事ですから、業界の景気動向に影響を受けます。ですから私の商売の大原則は「なるべく安く買っていただき、メーカーさんのお役に立てるような商売」です。

--鯖江市以外にもお取引き先はありますか?

日本のメガネの製造シェアは95%以上が福井なので、取引きもほとんどが鯖江、福井ですが、名古屋、大阪、東京の会社とも若干の取引はあります。たとえばメガネのテンプルなどに刻印するときに使う機械は、鉛筆やグリーティングカードの名入れでも使います。ですから東急ハンズなど文具を扱うお店に卸していますよ。昨今は中国製品に押され、鯖江でのメガネの生産量が激減していますので、取引きにもかなり影響しています。

--世界の眼鏡3大生産地である鯖江ですが、厳しい現実のようですね。

かつて鯖江のメガネは世界シェアが30%ありましたが、今ではかなり落ち込んでいます。以前アメリカでもメガネをつくっていた時代がありましたが、その当時労働賃金が安かった日本での生産が伸び、結局アメリカはメガネの生産から撤退しました。今の中国が日本にしていることと同じことが日米間でもあったわけです。現在中国は安い労働力を武器に大規模工場で大量生産を行っていますから、価格では中国にかないません。しかし、鯖江ではアメリカのように完全撤退はありえません。鯖江には世界が認める技術力がありますから。会社個々が単体で動くよりも、技術を結集させたブランドイメージを作って、販路を開拓すれば、世界の富裕層などをターゲットにできるのではと思っています。そうゆう意味では、産地が取組む「THE291」はとてもいい連携だと思います。 

※THE291・・・「THE291」は、メーカーのオリジナル、ハウスブランドの集合体で、優れた品質であると認められた製品だけが産地統一ブランド「THE291」を名乗れます。

 

koubai

 

資材の分だけ手間ひまかかる。

--道具は、昔と比べて随分変わりましたか?

極端なことを言うと、メガネは、ヤスリ一本あれば手作りできました。しかし大量生産をするようになり、道具も一新しましたね。メガネは工程がたくさんあるので、各工程で機械も様々です。400トンを超す大型プレス機が必要な工程もあるわけです。最近では機械もコンピューター制御でどんどん高度化してきています。

--本当に大きな機械がありますよね。メガネをつくるのにあんなに大きな機械が必要なのですか。

小さな機械さえあればできると思われがちなメガネなので、メガネ工場見学に来られてびっくりされる方も多いみたいですね。使い勝手がよく、長持ちするよいメガネはやはり機械の精密さも必要です。このようにメガネは工程が多く、使う機械も大小さまざま。デザインも流行により変わるので、同じ物をたくさんは作らない、小ロットです。だから自動化できないのです!

社長設計の電動ドライバー

--機械の開発も社長が行っているのですか?

そうですね、お客様の声を聞いて、開発するもの、使い勝手が良いように改良するものもあります。これは電動ドライバーといって、空気でネジを吸い付けて、ねじ込むときの機械(写真右)です。これは基本設計が開発当時のまま今でも使っていただいています。私が開発した物の中でも大変よく売れた逸品です。

--もともと機械に関する勉強などされていたのですか?

いえいえ。私はもともと名古屋でピアノを売っていましたが、父の会社を継ぐことを決めて鯖江に戻ってきました。全然機械の知識はなかったですよ。すべて試行錯誤の連続です。でもモノづくりが元々好きだったので、苦に感じたことはありません。

--ところでここで取り扱っている商品はどれくらいあるのですか?

種類としては、2千種類位ですが、点数でいうと約3万点です。それぞれの商品にサイズが幅広くありますから数が増えます。工程の多いメガネ製造は他の業界と違って、道具、資材の種類もかなりの数が必要となります。

--では最後に今後の目標や展望を教えていただきたいです。

だいそれた目標はありません。冒頭にも申し上げたように、メーカーさんのお役に立てる商売を続けていくことが大事だと思っています。望みは世界の産地鯖江としての名前がなくならないよう、若い人たちに頑張ってもらいたいです。

--ありがとうございました!!それでは、道具資材のベスト3位のご紹介コーナーへいってみましょう!!

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  • 梅村俊二 Shunji Umemura 
  • 株式会社晃梅
  • 「晃梅」の名は、梅が日に光り輝くようにとのことで名づけられたそうです。
  • 福井県鯖江市丸山町1丁目1番21
  • TEL 0778-52-6338/ FAX 0778-52-4891
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