鯖江メガネファクトリー

BACKSTAGE 金子眼鏡

国道8号線沿いに突如出現した「BACKSTAGE」。一体この建物が何なのか気になっている人も多いのでは!?実はこの建物お店ではなく、「メガネの工場」なのです!これから鯖江メガネ業界に新しい風が吹きそうな予感がします。BACKSTAGE誕生について、金子眼鏡(株)生産管理部 部長 市川純一郎氏(以下:市)にお話を伺いました。

 

BACKSTAGE

 

自分たちでつくろう。

市川純一郎 氏

本当に綺麗な建物です。おしゃれですね!どんな新しいお店ができるのか?!と思いきや工場だったんですね!

市)ありがとうございます。建設中には地元情報誌さんが「広告を出してください」ってこられるぐらい、みなさん「なんのお店だろう?」って、思われてましたね。めがねの工場って聞いてがっかりしていたみたいですけど。(笑)

--では、工場をつくることになった経緯を教えてください。

市)私の仕事はもともと営業でしたが、その傍ら生産管理もおこなっていました。メガネのほとんどの工場は「分業」体制で行われています。プラ枠のフロントの部分だけを作るとか、耳に掛ける部分だけを作るとかですね。大量生産には分業制は効率がいいのです。しかし、とにかく早く商品が欲しいときには、この分業であるがために自分の欲しい商品ができるのに時間がかかることもあります。 また3年くらい前から自分たちが発注した商品が納期通りにあがってこない状況がでてきました。メガネ業界全体の後継者不足や、この不景気ということもあって、メーカーさんが閉業するところも出てきて、発注をした取引き先の仕事が他社と重なった場合、自分の注文品が後回しになることもありました。 じゃあ、商品があがってこないといって、メーカーさんだけのせいにしていていいの?出来上がってこないのであれば自分たちで作るしかない!ということで、ついには工場をつくることになりました。

--未経験者が工場を一からつくるということですよね?

市)そうですね。初めは全くわかりませんでした。機械の扱い方というか、一つひとつの部分が何をするのかも分かっていませんでしたからね(笑)。機械が使えるようになり、一通りの工程ができるようになるまでは必死でした。

--他の工場とBACKSTAGEの違いは「一貫生産」ということですか?

市)そうですね。ここでは外注に頼らず企画からデザイン、試作部門を持ちプラスチックフレームのすべての工程を一貫して生産しています。

--一貫生産のメリットは?

市)デザインと作り手が一緒にいることで、双方の意思疎通ができますね。また、委託生産では品質やディテールなど妥協せざるをえない事も多かったですが、自分たちが作ることによって妥協を許さない納得したものづくりが可能となりました。

--ほとんどの工場が分業をしている中で、一貫性の工場をつくることに不安はなかったのですか?

市)職人さんからいろいろ教わり、構想を練りました。本当にやれるかわからないわけですよね。しかし、私の考えでは、「人がやっていること(メガネ作りを)なんだからできないことはない」って自信がありました。

--「生産部門を作らないか」この指令を社長にされたときどうでしたか?

市)当時はアトリエのような工房を持とうという話で、ここまでに大規模なものになるとは思っていませんでしたが。工場の必要性については、自社の職人技術の継承を守りたいという意識も強くありました。ですから今の若い職人の育成も力を入れていきます。まずはキレイに磨く、丁寧に仕事をすることが基本。ここからそれぞれの職人の技になっていくと考えています。

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伝える努力をしていかなければならない。

--この工場を持って、見えてきたことは?

市)やりがいは非常にありますね。ここでは、「伝統や技術の価値」を伝えていく仕組みがあります。デザイナーが職人に伝える、職人が販売スタッフに、販売スタッフが消費者に伝える、消費者の意見がまたデザイナーにフィードバックされてくる。その流れがあるのは、一からすべて一貫して生産するBACKSTAGEだからこそです。「本物、本質」を伝えていかなければならないです。デザイナーから販売まで流通形態も一気通貫し、すべてが金子眼鏡の社員ですから、きちんと 消費者に「ものづくりの本当の価値」を伝えることができるということです。

--BACKSTAGEにいる社員さんは鯖江出身の方ばかりですか?

市)私以外はすべて県外出身者です。何人か鯖江の人が入りましたが、辞めてしまいました。県外から来る人は鯖江に来てまでメガネの仕事をしたいという心意気がありますから、仕事に対する覚悟が違うようです。私自身非常に厳しく指導していますが、やはりただ厳しいだけではなく、メリハリが大事だと思っています。せっかく仕事をいているのだから、ただのロボットでは楽しくないですよね。給料をもらって終わりでは寂しい。一生懸命学ぶと同時に仕事の面白さを伝えて行くようにしています。

--この工場は今後、鯖江のランドマーク的な存在になりそうですね?

市)場所は目指すところに近かったですね。名前はBACKSTAGE(裏舞台)ですが、思いっきり表にでてきていますからね(笑)。奇抜な外観でしょ?工場っぽくしたくなかったんです。

--ここまでかっこよくした理由は?

市)やっぱり今、市場には安いメガネが出ているんですね。消費者も別に中国産であろうが、日本産であろうがどこでもよくて、安いから選ぶという基準が植え付けられてしまった。そういった状況の中で、やはりメガネ業界が、産地製品の良さ、価値基準をお客様に伝えきれていないのではないかと感じています。鯖江のメガネづくりの良さを伝えたい、商品の向こう側にあるストーリーを直営店や作っている現場を通して伝えていきたいという思いがBACKSTAGEという形になったわけです。

--では最後に今後はどういった目標がありますか?

市)このBACKSTAGEにおいては、「世界一のメガネを作ること」です。何が世界一かというのはそれぞれの価値観に基づきます。買われた人が商品を手に取ったときに「世界一」と満足していただけるメガネをつくり続けたいです。

--ありがとうございました。では工場見学に参りましょう!

ICHIKAWA
  • 市川純一郎 Junicirou Ichikawa 
  • 金子眼鏡株式会社
  • 福井県鯖江市吉江町712−2
  • TEL 0778-51-2673
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