東京は北青山、外苑西通りを行くと、全体を錆で覆われたような建物が見えてきます。そこはMASUNAGA1905。福井県に眼鏡産業を根付かせた増永眼鏡（株）の直営店です。増永眼鏡は、創業１００年を超える老舗眼鏡フレームメーカー。今年、アメリカ共和党副大統領候補、またアラスカ州知事であるペイリン氏が掛けているメガネが話題になりましたが、何を隠そう、そのメガネは増永ブランド！そんなお話にも触れながら、MASUNAGA1905のアドバイザー、増永宗大郎さんへのインタビューをお届けします。
増永宗大郎氏--このお店をオープンされたのは…？
2002年の10月です。
--会社として、東京にお店を出そうと思われたきっかけは？
まず、一般の方は福井がメガネ産地ということは社会の教科書等で結構ご存じなんですが、どういうメーカーがあるのかはあまり知られていないんです。
--やっぱりそうなんでしょうか？
今までは福井の産地は、アピールが足りなかったですね。もっと積極的にマーケットへのアプローチをしていくため、世界的に情報が集まるこの東京に、アンテナショップを構えたんです。
-- ここには増永眼鏡の全てのメガネが？
ほぼ全ラインナップが揃っています。ここは雑誌の取材等メディアへの情報発信の基地と、実際に店舗としてお客様の生の声をお聞きし、次の製品開発につなげていく情報キャッチの場所という2つの役割を担っています
-- お店にくるお客さんはどのような方が多いんでしょう？
男性が多めです。特にこの「KazuoKawasaki」は、機能性や機構が特長ということもあり、男性の方に興味を持たれます。年代は30代からご高齢の方まで幅広いです。
-- ペイリンさんが掛けてらっしゃるのも、もともと男性用なんですか？
年齢・性別問わずお使いいただけます。今回ペイリンさんの話題が出てからは、女性のお問い合わせが増えました。メガネにあまり興味がない方にも関心を持っていただけたのを実感しています。「私はメガネ似合わないのよ」と思われている女性が「ちょっと掛けて見ようかしら」って。
…あ、いらっしゃいませー。（お客さんがいらっしゃいました）ちょっとすみません…。
しばし、お待ちします。
-- 雑誌などで特集されてらっしゃるのをよく拝見してます。やっぱりこういった雑誌に特集された後などには、お客さんは多くなるんですか？
これまでも多少ありましたが、今回のペイリンさんについては、ケタが違いました（笑）。
-- どういった経緯でペイリンさんは、買われたんでしょう？
我々もアメリカの報道で知ってる限りなんですけど、ペイリンさんの地元のお店が、ご自宅に300本くらいお持ちになったそうです。そこからご本人がまず５つに絞りこまれて、さらに家族会議でこの1本を選ばれたということです（笑）。
-- 300本のうちの1本…すごい…！
--では、会社の歴史を教えていただけますか？
当時のメガネも展示されている私の曽祖父の初代の増永五左エ門が、明治38年に創業しました。雪国、福井の人々が冬に家でも出来る仕事を探していまして、大阪に出ていた弟から、当時ヨーロッパから技術が伝えられてきたメガネの製造を提案されたんです。五左エ門は、これから皆が書物や新聞を読む時代になり、メガネが必要になると確信し、始めたんです。
--100年続いた理由ってなんでしょう？
そうですね、一つは五左エ門にこの福井の地に産業を根付かせたいという思いが強くあったためだと思います。それは、夜間学校も開いていたことや、自分のもとで育った職人を独立させていったことにも現われています。今考えても、驚くような先を見据えた広い視野を持っていたと思います。
--良いお話を聞きました…！
--作る側ではなく売る側として、今後へと考えていることはありますか？
そうですね、両方を経験してみて、メーカー・小売店・ユーザーのそれぞれが良いと思うものが、微妙に違いがあることに気づきました。それをきちんと捉えて、さらに次の改善、製品開発に活かしていけるようにしたいです。
--メーカー・小売店・消費者と三者の違いがあるんですね。
そうなんです。分かってるつもりで分かってないところを、繋いでいこうと思います。
--では最後に、あなたにとってメガネとは？
「自分自身がメガネに育ててもらってきて、恩返しをしていくもの」と思っています。私にとって、それは自然なことですね。
増永宗大郎氏のおすすめメガネは