鯖江メガネファクトリー

田中眼鏡
メガネザンマイ#10

創業から約23年。元々は眼鏡卸商だった父の後を継ぎ、二代目として「田中眼鏡」を営んでいる田中幹也 氏。プラスチック生地のサンプルを用いたオーダーメード眼鏡の受注や手作り眼鏡教室など、鯖江の小売店ならではの取り組みをされています。今回のメガネザンマイでは眼鏡に対する想いについて語って頂きました。

手作り眼鏡教室と端材からオーダーメード

店の前にて

-- 先代であるお父様の後を継ごうと思われたきっかけを教えてください。

 実は、初めは、眼鏡には興味なかったんですよ。子どもの頃は、プロ野球選手を目指していたくらいの野球少年でしたねぇ。元々は大阪で、眼鏡とは畑違いの調理師をしていたんですが、色々ありまして(笑)。そこで、実家の家業の面白さを知り、大阪の眼鏡店で勉強し始めた時に父が病気と分かり(現在は元気です)、鯖江に帰って来たというわけです。


カウンターにて

このカウンターを通して、お客さんとの対話を重視した接客を行っている。

-- 大きなカウンターが中央にあったりと、他の小売店とは違うスタイルが特徴的ですね。

 これは創業当時からの独特のものですね。父の意見もありましたが、店は全部、自分でデザインしました。今は、お客さんからの要望もあって商品の陳列棚もありますが、棚が無く、眼鏡が中にしまってある、外に見せない売り方という創業当時からのやり方は面白いと思いますね。
 でも、眼鏡は実際に見たり、掛けたりしないと分からないものでもあるんですよ。洋服などと違っていくつも試着しやすい分、汚れたり壊れたりする事もありますので、本当なら出しておきたくなかったりもするんですが(冗談ですよ)、今のようなこのスタイルで良かったかな、と思ったりもしています。


カラフルな端材

オーダーメード

鯖江市内のプロト職人が一本ずつ、手作業で作り上げていく。

-- お店としてのこだわりや、実際にどんなことを行っているかを教えてください。

 このカウンターを通しての接客ですね。また、安売りでモノ(眼鏡)としての価値が下がってきている中で、安かろう良かろうではなく、その中での方向性や価値観を打ち出していこうと思いました。
 そこで、オーダーメードを始めたのですが、他と同じようなことをしても仕方ない、と。サンプル生地や生地の端材を使うことによって、お金をかけないオーダーメードをしたところ、お客さんに好評でした。
 それと、手作り眼鏡教室ですね。県外ではよくやっているんですが、これを鯖江にいてやらないのはお恥ずかしいかなと(笑)。あと、うちは眼鏡の仕上げは、鯖江市内のプロト職人(試作枠職人)にお願いしています。モノ(眼鏡)の価値っていうのは鯖江の職人が、一本ずつ作るということにあると思っているので。


-- 端材からオーダーメードを作るという取り組みには、どのような想いがあったのですか?

 端材といっても元は一枚の板です。たまたま捨てられそうになったものや会社に眠っているもので、そのサンプル生地を使って作っています。賛否両論ありましたが、モノ(眼鏡)として、素材としての問題は全くないので。(細心の注意をしています)
 逆に、サンプルとして残っているものには商品化されていないものが多く、派手な色だったり、眼鏡にするにはちょっと、というようなものも実際にあるので、唯一世界で一本だけのものが出来上がります。また、既に廃盤になって、もうなくなっている生地、作られていない生地などという付加価値もあると思いますね。お金ではなく、価値を大事にしたいな、と。


-- 売る側からみた鯖江の魅力、眼鏡の魅力とは何ですか?

鯖江の小売店として

 お客さんがどう実感されているかは分からないんですが、鯖江は魚の街でもあるんですよ。日本海も近くて。つまり、眼鏡に関しても「取れたてで新鮮、一番近い場所で、一番活きのいいものが入ってくる」、そのメリットを活かしていきたいですね。
 実際に製造している方と話す事も多いので、そういう話をお客さんに伝えることが出来るのもいいかなと。多い人だと月1回の頻度で来られたりもしますねぇ。父の代からの繋がりもあったりで、県外からのお客さんも多いです。

 うちは一つの窓口として、鯖江という知名度アップと鯖江に足を運んでもらえるきっかけになればと思ってやっていけたら、と。手作り眼鏡教室も年に数回程ですが、それがきっかけとなり、お客さんとのコミュニケーションが出来たらと考えています。
 「聖地」と呼ばれるこの場所で、「鯖江に来て、鯖江で作ったんだ」っていう、それが魅力であり価値であり、大事なものなんじゃないかなと思いますね。


-- これは負けない!っていうものはありますか?

 自分が作った眼鏡は忘れません。うちはレンズの加工一つでも、それぞれに癖があったりするので、同じブランドのものでも自分が手がけたものは分かる自信がありますね。それと、フィッティングとしての技術職でしょうか。


-- お客さんに対して、売る側として心がけていることを教えてください。

 その人それぞれのカルテを重視しますね。度数なども含め、どういう経歴で眼鏡を掛けてこられたのかなど、お客さんとの会話の中から薦める眼鏡を決めたりします。また、お店に入って来た人の掛けている眼鏡をパッと見て、どういう眼鏡を薦めるかを決めたりもします。こういう時には、こっちの力量が試されますね。

あなたにとってメガネとは
 お客さんが欲しいと思っているもの、ニーズに対応したものをいかに薦められるかどうか。だからこそ、作っている側の方の話も色々聞きに行ったりして、それぞれの眼鏡やブランドのコンセプト等も把握した上で、お薦めしていきたいと思っています。

-- あなたにとって、メガネとは?

大切な宝物。

prf
  • 田中幹也
  • 田中眼鏡 店長
  • 鯖江市出身
  • map
  • 田中眼鏡
  • 福井県鯖江市神明町1-2-8
  • TEL. 0778-51-4742
  • OPEN. 平日/9:00-19:00 土日祝/9:00-18:00
  • CLOSE. 水曜日 第3・5日曜日
  • http://tanakagannkyou.com
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