今やメガネはプラ枠、メタル枠だけではありません!有限会社鯖江工芸では、竹製・木製のメガネの製造を行っています。天然素材ならではの魅力や難しさ、天然素材にこだわる理由とは?デザインから製造まで全てを行うメガネ職人・笠島 豊氏にお話を伺いました。
トラックいっぱいの失敗
-- こちらでは竹のメガネを作られているそうですね。
笠島 豊氏
竹のメガネを作り始めて13年目になるかな。竹のメガネを作れるのはうちだけ!
-- 竹メガネとの出会いのきっかけは?
昔の家って、天井や床に竹が使われていたんやね。うちの実家も昔は竹が使われていて、建て替えるときに大黒柱と竹は捨てずに取っておいた。時代を経て綺麗な飴色になっていく竹を何かに活かせないかっていうのはずっと考えてたね。
当時はメガネ業界の情勢も変化がある時で、大手メーカーが海外に進出していくにつれて、分業でメガネ作りを支えてきた私たちは仕事が不足していた。そこでその飴色になった竹をメガネに応用してみようと思いついたのがきっかけです。
-- これまでのプラ枠メタル枠のメガネと、竹のメガネとでは作り方は違うんでしょうか?
素材が違うから、作り方は根本的に違うね。
-- どういうところが違いますか?
まずカットの仕方やね。プラやメタルと違って、竹は割れやすいし、竹によっても割れやすさの具合もバラバラ。これをいつもどおりのメガネの機械でカットしたらすぐに割れちゃうから、刃物を使わないレーザーカットを使います。竹の中に樹脂を染み込ませれば固くなるけど、出来るだけ人工のものは使いたくないんだよね。
鼻パッドの部分にも竹が使われています。
-- なるほど。他には、普段のメガネ作りとは違うところはありますか?
竹は天然素材だから、プラやメタルのように溶かして接着(ロー付け)が出来ない。だから蝶番を付けるにしても、竹を削ったり穴を開けて、接着剤で取り付けるんやね。その接着剤には、七宝を使っています。実は竹メガネを作り始める前までは、メガネの七宝を専門にやっていたんだよ。その技術が今のメガネ作りにも活かされています。
-- 竹メガネ特有の難しさはどういうところにありますか?
今言った割れやすいっていうのもそうだけど、もう一つ虫が付きやすいっていうのも普通のメガネにはない難点やね。竹は切った後乾燥させてから使い始めるんだけど、その時にカミキリムシが栄養のある竹にだけ付いて、竹の中身を食べてしまうんやね。これは表面にはあまり出なくて、加工の段階で初めて「虫に食われている!」って気がつくからその時はショックやね。
竹やぶから切り出した状態だと割れやすい竹ですが、メガネほどの小ささになると割れは解消されるそうです。
-- 普段私たちが知っている竹は丸い筒状ですが、メガネの材料に使っている竹は、こんな四角い竹なんですね!
そう。「角竹」って言って元々は床の間なんかの建造物に使うために作られた竹なんやね。これは、筍の段階で四角く育つように矯正しているんだよ。この「角竹」は、板状の面が広く取れるからメガネ作りにも最適。でも、近頃はこの「角竹」の需要が低くなってきていて、材料が手に入りにくいっていうのも竹メガネ作りの難しさやね。
-- 天然素材ならではの難しさがたくさんあるんですね。そこまでして竹を使う良さはどういうところにありますか?
竹は表面が硬く、内側が柔らかい構造をしています。これがメガネにはピッタリ。メガネの表面は硬く傷が付きにくい、内側は柔らかいから肌に当たる部分は優しい。それに、竹はバネ性もあってそれがメガネのテンプルにもぴったりなんだよ。
--この13年間で、ひとつのメガネにするまでに失敗も数多くあったんでしょうか。

竹メガネなんて、前例がないものだったから自分で失敗する以外学べないからね。ダンプカーで何杯か捨てるくらいの失敗はしてきたよ。
-- それだけの失敗の経験されて、挫折はしなかったんですか?
根性だね。「いつかこういうメガネが求められる時代が来る!」って信じて、周りが景気がよくて忙しかった時代に、コツコツやってきたおかげで今の竹メガネがあるね。

歳を重ねていくメガネ
めずらしい種類の竹や木をたくさん見せて頂きました。
-- 最近では竹だけでなく、木でメガネを作っているそうですね。
6〜7年前から木のメガネを作ってます。屋久杉、タモ、ケヤキ、黒檀など30種類ほどの木を使います。木は切り方によって柄(木目)の出方が違うから奥が深いよ。1万本に1本しか出ない良い柄っていうのもあるからね。
-- 確かにいろんな柄がありますね。木じゃないみたいです!
実は竹にも6000種類くらいあるんだよ。しかもその半分が日本にあるから、まだまだ未知の世界だね。
-- デザインも笠島社長がなさっているということですが。
そう。木や竹の柄からインスピレーションを受けてデザインを考えています。
磨きも手作業で行うという繊細な素材です。
-- お仕事をしている中で一番気を使うところは?
木取りって言って、柄のどの部分をメガネに使うかを決める時が一番気を張るね。
-- では最後に笠島社長が、天然素材にこだわるその魅力とはなんでしょうか?
木のメガネは、毎回毎回柄の出方が違って楽しいことかな。新しい木を手に入れるとどんなメガネを作ろうかワクワクするね。竹のメガネは、使う人の汗や油で色味がどんどん変わってくるんだけど、それも天然素材の魅力だね。
こんなモノも作れます!これぞ職人技。カマキリの細かい部分まで竹で忠実に再現。大きさは10p程度。
--本日はありがとうございました!
竹メガネ職人
