鯖江メガネファクトリー

ゲンバシュギ

 
 

「磨きの職人さんがいなくなってしまったら、鯖江は眼鏡産地じゃなくなってしまう。」以前取材先でこのような言葉を伺ったことがあります。技術力が必要とされ、眼鏡作りになくてはならない「磨き」の工程。株式会社コマツオプティカルの増永金治郎氏(以下:増)は、プラスチックフレーム製造業界トップクラスの磨きの職人さんです。その職人技とは?増永さんと、社長の佐々木一整氏(以下:社)にお話を伺いました。

磨き職人の技、「増永金治郎」ブランド。


増永金治郎氏

--増永さんはメガネ職人歴は何年くらいになりますか?

増)もう55年くらいになるね。

--55年ですか!増永さんが職人になられたきっかけは?

増)中学校を卒業後に眼鏡会社に勤めて、定年後に今の会社に入りました。
社)定年を迎えるのを待っていました。ヘッドハンティングですね。

--すごいですね。定年後も増永さんの技術が求められているということですね。

増)ありがたいことですね。

--増永さんは手作業でメガネを磨いて仕上げる職人さんだとお聞きしましたが?

社)増永さんには、磨きの工程の中でも一番初めの段階を担当してもらっています。この初めの磨きが綺麗に出来ているかどうかでその後の仕上がりが全く違ってくるんですよ。縁の下の力持ちです。

--1本を磨くのにどれくらいの時間がかかりますか?


「増永金次郎」ブランドは、昨年のIOFTでも大変な好感触だったそう。シンプルな黒のフレームですが、カット面のエッジがポイントになっています。

増)普通の磨きだと30秒くらい、難しい磨きだと2〜3分かけているかな。

--どういうものが「難しい磨き」なんでしょうか?

増)ただ綺麗に丸く均(なら)す磨きなら簡単なんだけどね、カット面の磨きと言って、エッジを利かせた形のメガネを磨くのが難しいんだよ。磨きすぎると、せっかくエッジを利かせてカットした面が無くなってしまうし、下手をすると、エッジのラインがベコベコに歪んでしまうからね。

--御社では、増永金治郎ブランドの眼鏡も作られていますが、誕生秘話はあるんですか?

社)プラスチックフレームには、セルロイドとアセテートという2つの素材があるんですが、最近ではセルロイドのフレームが希少になっているんです。増永さんもいらっしゃるし、セルロイドのメガネを復活させたいということで一昨年ブランドを立ち上げました。ブランド名をどうしようかということで、「金さんの名前でいいか。」と半ば雰囲気で名付けましたね(笑)。

--セルはどうして希少なんですか?

社)昔はセルロイドが主流でしたが、扱いが難しいので技術のある職人さんでないと作ることができないのと、燃えやすい素材で作業が危険なので、どの会社もアセテートに素材を変更していったんです。今、セルフレームブームの波に乗って、いろいろな会社がセルロイドを復活させようとしていますが、なかなか難しいようですね。出来ない部分の仕上げを増永さんがお願いされることも少なくありません。

--さすがですね。増永さんにとってセル枠の魅力ってなんでしょうか?

増)昔から慣れ親しんだ素材だから、私は扱いやすいね。磨きやすいし、ツヤがとても綺麗。やっぱり仕上がりが違うね。

--ここだけは負けない!というこだわりはありますか?

増)やっぱりカット面の磨きは負けないと思うよ。
社)カット面の磨き自体、そもそもできる職人さんは少ないと思います。

--手作業でメガネを仕上げるということですが、心掛けておられるところは?

「ヤマ」の磨きは特に気を使って磨くね。ヤマは、眼鏡のレンズとレンズの間のブリッジのことなんだけど、この部分も難しいんだよ。ここが綺麗だと、眼鏡全体が綺麗に見えるから重要な部分。「眼鏡の顔」だね。


「セル」は生もの。


仕事は椅子に座るより、昔ながらのあぐらをかいての作業がやりやすい!と語る増永氏。ベテランならではのコツですね!

--55年の大ベテラン職人さんの増永さんですが、その間ずっと磨き一筋でやってこられたんですか?

増)そうやね。昔は磨きの職人さんもたくさんいて、大勢が並んで仕事をしていたんだよ

--今後は技の継承が大切だと思いますが、後継者の育成はされているんですか?

増)たまに、「教わりたい」って子は来るよ。若い子に磨きの練習をさせるときは、まず眼鏡の形にカットされていない板状のセル生地を磨かせるんだよ。
社)磨きの工程はすごく集中しないとできない仕事だと思います。私も磨きを手伝うことがあるんですが、ずっと座っている仕事で神経も使うのですごく大変ですね。なかなか表に出る仕事ではないので、職人になりたいって言う若い方って少ないんです。産地全体の課題ですね。

--確かに大変なお仕事だと思います。一人前になるにはどのくらいかかりますか?

増)普通の磨きだったら1年ちょっと、複雑な磨きをできるようになるには7〜8年かな。

--8年ですか…!そう簡単には次の職人さんというわけにはいかないんですね。

社)方法だけなら独学でも習得できると思うんですが、コツというのはベテランの職人さんについて仕事を盗まないと覚えられませんからね。今の職人さんたちが現役の間に若い方に技術を覚えていってほしいですね。
増)セルフレーム製造は、型に合わせるだけじゃなくて、板の状態を削ってゼロから形を作っていく「生もの」の眼鏡だから、難しいけどやりがいもあると思うよ。

--本日はありがとうございました!

 

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  • 増永 金治郎 Kinjiro MASUNAGA
  • 業   種:株式会社コマツオプティカル
           セルフレーム磨き職人
  • 生 年 月 日:1940年3月24日
  • 社   名:株式会社コマツオプティカル
  • 従業員数7人
  • 福井県福井市上江尻町7-3

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